「マニュアル」信仰の脱却と「心得」への回帰

マニュアル信仰は東日本大震災で柔軟な対応を難しくし、被害を拡大する要因にもなった。臨機応変の対応を可能にし、しかも現場が加速度的に進化していくには、マニュアル信仰を捨て、「心得」に回帰する必要がある。
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shinshinohara @ShinShinohara

東日本大震災では「災害マニュアルは役に立たなかった」という声が多数聞かれた。マニュアルに縛られて柔軟に対応できず、被害を拡大したケースも多かった。入念に作成されたマニュアルは「書いていないことが起きた場合は責任をとらない」という「免罪符」としての機能しか果たさなかったとも言える。

2013-03-29 23:36:06
shinshinohara @ShinShinohara

災害では予想外のことが起きるということを私たちは学んだ。思いもよらぬことが起きてもなお、柔軟に対応できるようにするにはどうしたらよいか。それには、マニュアル信仰から脱却するとともに、それに代わる方法を提案しなければならない。

2013-03-29 23:36:39
shinshinohara @ShinShinohara

助産師の方が言っていた言葉が印象に残っている。「今の若い助産師の見習いは、マニュアルをよこせと言ったり、マニュアルにないことは知らないって言うんだよ。出産は一人一人状況が違っていて、同じ出産なんてあり得ない。臨機応変に対応しなければならないのに。何がマニュアルだよ」

2013-03-29 23:37:30
shinshinohara @ShinShinohara

これは重要な指摘だ。もし助産師の仕事で、災害マニュアルと同様の柔軟性に欠けた作業をしていたら、母体にも胎児にも危険な事態に陥るケースが増えてしまうだろう。出産には同じケースは一つとしてなく、四角四面にマニュアル通りにすればうまくいくということはありえない。

2013-03-29 23:38:46
shinshinohara @ShinShinohara

だが、ただマニュアルを廃止するだけではダメだ。何の予備知識もなく柔軟に対応しろと言っても無理だからだ。臨機応変が求められる現場では、「心得」が重視される。原理原則を押さえ、あとはその場の状況をよく観察して判断する柔軟な対応を可能にした「心得」は、マニュアルより有効だろう。

2013-03-29 23:41:30
shinshinohara @ShinShinohara

災害マニュアルを抜本的に見直す動きは増えているが、「マニュアル」という言葉に縛られ、マニュアルを分厚くするだけのところもあるようである。もしそんな状況の現場があれば、「マニュアル」ではなく、臨機応変の対応を可能にする「心得」に切り替えるよう、アドバイスしてほしい。

2013-03-29 23:43:41
shinshinohara @ShinShinohara

では、「心得」に臨機応変の柔軟性を持たせるにはどうしたらよいだろうか。ヒントは、臨機応変の対応が必要な介護に見受けられる。介護では「観察」の重要性がくどいほど説かれる。高齢者や障害者の要介護の度合いは人それぞれ、性格・生い立ちも人それぞれで、マニュアル化が不可能なのだ。

2013-03-29 23:45:13
shinshinohara @ShinShinohara

威力を発揮するのが「観察」だ。何が好きでどんなときに怒りやすいのか?子細に観察し、気づいたことを同僚と情報を共有する。推察したことをふまえ、対応を変えてみる。その結果、良い変化が現れたらその観察結果も同僚と情報を共有する。観察を起点として、現場が臨機応変に進化するのである。

2013-03-29 23:47:39
shinshinohara @ShinShinohara

「心得」には、「観察」の重要性をしつこく強調することが必要である。現場をよく観察する。気づいた情報を同僚と共有する。意見交換して仮説を立て、実際に試してみる(検証)。その結果をよく観察し、また同じ作業を繰り返す。こうすることで現場が有機的に加速度的に改善するようになる。

2013-03-29 23:50:14
shinshinohara @ShinShinohara

日本人はいつしか、「マニュアル信仰」が強くなり、マニュアル通りにしか動けない人間が増えた。自分の頭で考えない「指示待ち人間」はマニュアル化の弊害だといえる。企業が生き残るためにも、臨機応変の力は重要だ。そのためには、マニュアル信仰からの脱却が計られる必要がある。

2013-03-29 23:51:33
shinshinohara @ShinShinohara

これだけ日本にマニュアル信仰が強まった背景には、「単純作業の成功」があるだろう。フォードから始まった流れ作業による組み立ての仕事は、マニュアルさえ整備すれば高品質の製品を同じように作れた。戦後の高度経済成長は、このマニュアル化が成功の鍵だった。

2013-03-29 23:52:49
shinshinohara @ShinShinohara

だが、イノベーション(技術革新)がどんどん早まり、マニュアルができあがった頃には別の製品開発に軸足を移さなければならない、そんな時代を迎えるようになった。マニュアルがむしろ、イノベーションの足かせになる状況が生まれている。

2013-03-29 23:53:30
shinshinohara @ShinShinohara

イノベーションを生む企業体質に変えるには、原理原則に絞った心得、「観察」の重要性をしつこく強調した心得を作成すべきだろう。マニュアル信仰から脱却し、シンプルな「心得」に回帰すること。それは、災害に臨機応変に対応できる力を付けるとともに、日本を再生させることにもつながるだろう。

2013-03-29 23:55:50