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NHKスペシャル 調査報告 プルトニウム大国日本 第2回 核燃料サイクルの夢と現実 書き起こし (1993/5/23放送)
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科学技術庁石田寛人原子力局長 「なぜプルトニウムを分離するかと。それは使うためにプルトニウムを分離するわけですね。したがって、当然使うあてがないものについては余剰に持っている必要がないわけです。」 #SnapCrab http://t.co/Y1d76qwA3t
2013-04-05 09:36:12![](https://pbs.twimg.com/media/BHDEkQECMAIO1-j.png:medium)
【番組の概要】
NHKクロニクル
http://nhk.jp/chronicle/?B10001200999305230130075
NHKスペシャル
調査報告 プルトニウム大国 日本第2回 核燃料サイクルの**夢と現実**
放送日:1993年5月23日 チャンネル:総合
主な出演者:梅村伊津郎 石川信 荒井弘志
番組内容紹介:
第2回目は、核燃料サイクルの夢と現実。資源小国・日本は「使用済み燃料」のプルトニウムにエネルギー自立の夢を賭けてきた。
しかし、先進国の中には「核燃料サイクル」の早期完成を断念し、別の路線を選択する国も出始めた。「核燃料サイクル」を回す鍵を握るプルトニウム利用技術の課題を、イギリス・フランス・ドイツからの報告をまじえて、多角的にあきらかにする。
ナレーション 末田正雄
動画 1993.05.23放送 NHKスペシャル
調査報告 プルトニウム大国日本 第2回 核燃料サイクルの夢と現実
〔使用済み核燃料〕
http://twitpic.com/cgrlmq
ナレーション:
「原子力発電所で使い終わった核燃料が水を青白く光らせている。この使用済みの核燃料の中にはウランが燃えてできたプルトニウムが含まれている。」
〔長崎原爆〕
http://twitpic.com/cgrqav
「昭和20年8月9日、長崎に投下された原子爆弾にはプルトニウムが使われた。」
「わずか6kgのプルトニウムが15万人の死傷者を出し、長崎の町を破壊した。」
〔プルトニウム〕
http://twitpic.com/cgrqvj
「資源小国日本はこのプルトニウムにエネルギー自立の夢をかけてきた。現在日本で運転中の原子力発電所は43基。」
「毎年700トンを超える大量の使用済み核燃料が出てくる。」
「日本はこの使い終わった燃料の中からプルトニウムを取り出し、繰り返し利用する巨大技術の完成を目指している。」
〔あかつき丸〕
http://twitpic.com/cgrrcc
「今年1月、あかつき丸はフランスからおよそ1トンのプルトニウムを運んだ。日本は2010年までに85トンに上る大量のプルトニウムを利用しようとしている。」
「日本はプルトニウム大国への道を歩み始めた。」
http://twitpic.com/cfs99r
〔タイトル 調査報告プルトニウム大国日本〕
ナレーション:
「1956年(昭和31年)国の原子力政策を決める原子力委員会が発足した。日本の原子力平和利用が幕を開いた。
この年日本で初めての原子力長期基本計画が作られた。
そこには早くもプルトニウムを何度も繰り返して使う核燃料サイクルという巨大技術の開発が打ち出されていた。
そして発電しながら新たなプルトニウムを生み出す夢の原子炉の構想がうたわれた。」
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原子力委員会大山彰委員長代理:
「とくにエネルギー資源を日本が持っていないとみんな意識していましたから、これは科学技術、知恵でもって開発できるエネルギーとして、日本にとって贈り物だなと。昔のアイザワヒロミ先生の言葉を引用すれば「天恵のエネルギー」だと
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「高速増殖炉『常陽』の建設」
構想から14年たった1970年(昭和45年)、日本で初めて初めての高速増殖炉「常陽」の建設が始まった。
日本は夢の原子炉・高速増殖炉の開発に国を挙げて取り組んだ。
1977年常陽は完成した。日本で初めて高速増殖炉に原子の火がともった。「常陽の臨界を確認いたしました」
1993年、今年、日本の核燃料サイクルは新たな段階に入った。
福井県に建設された日本で2番目の高速増殖炉「もんじゅ」が運転を開始する。出力28万kW。 日本で初めてプルトニウムによる運転が始まる。
もんじゅ http://twitpic.com/cfsxjq
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「六ヶ所再処理工場着工」
青森県六ケ所村ではプルトニウムを取り出す工場の建設が始まった。世界が次々と核燃料サイクルから撤退する動きの中で日本はその夢を追い求めている。
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〔タイトル 第2回 核燃料サイクルの夢と現実〕 http://twitpic.com/cfsxfa
キャスター梅村伊津郎:
http://twitpic.com/cgrtdz
「日本はプルトニウムを準国産エネルギーと位置付けて核燃料サイクルの実現を目指しています。
国がこれまでにつぎ込んだ予算は3兆円を超えます。
今後、西暦2000年までだけを見ましても、さらに2兆円から3兆円の資金が必要だといわれています。
プルトニウム大国2回目の今日は、この核燃料サイクルにスポットを当てます。まず核燃料サイクルの仕組みを示した図をご覧ください。
http://twitpic.com/cftjbv
原子力発電所ではウランを燃料として燃やします。この時ウランの一部がプルトニウムに変わります。
このプルトニウムを使用済み燃料の中から取り出す工程が「再処理」です。青森県六ケ所村で建設が始まった工場はこの再処理施設です。
こうして取り出されたプルトニウムは、高速増殖炉の燃料として使われます。この高速増殖炉というのは発電をしながら使ったプルトニウム以上のプルトニウムを産み出す新しいタイプの原子炉で現在開発中です。
日本ではこの10月に試験段階の増殖炉もんじゅが運転を始める予定です。
高速増殖炉で作られたプルトニウムは再処理をされまして再び高速増殖炉の燃料として使われます。
計算上はおよそ60回繰り返して使うことができるということです。
国は将来的には現在の普通の原子力発電所からこの増殖炉に置き換えていく計画です。」
梅村伊津郎:
「今日は資源小国日本が目指した夢と現実を石川記者、荒井記者と共に見ていきたいと思います。まず核燃料サイクルのかなめとなります、高速増殖炉なんですが、当初は世界各国が夢の原子炉として開発にしのぎを削りました。しかしその後開発を中止したり、断念する国が相次いでいます。石川さん、現在の高速増殖炉の開発状況なんですがまとめてください。」
石川信記者:
「高速増殖炉の開発ではふつう3つの段階を踏むといわれているんです。ちょっとこの表をご覧ください。
http://twitpic.com/cftjnb
実用化まで3つの段階があります。
1つ目はあくまで実験の段階です。
2つ目からは発電も行えるようになります。ただし規模は小さいんです。
で、3つ目、こちらでは規模が大きくなります。
そして最終的にこれはできると確認したうえで実用化すると。こういう風な手順を踏むんです。
そして日本なんですけども間もなく第2段階のもんじゅを動かそうとしています。
世界の他の国なんですけど、まずアメリカです。
アメリカは実験炉を作ったところで開発から撤退しています。
それからイギリスとドイツですが、第2段階の炉まで作りましたがその後の計画を中止しています。
そしてフランス。ここはもう一歩進んでいます。そしておおきなスーパーフェニックスという炉まで作ったんですけども
、この炉が現在トラブル続きで現在運転を中止しています。
こうして見てきますと、高速増殖炉の開発に今積極的に取り組んでいるのは世界の中で日本だけど言ってもいい状態なんです。」
梅村:
「なるほど。それでは各国はなぜ増殖炉の開発から撤退したのでしょうか?これに対して日本はなぜ開発を推し進めようとしているんでしょうか?
ちょうど、もんじゅと同じ開発段階にある高速増殖炉を来年で閉鎖して開発から完全に撤退しようとしている国イギリスと日本を比較しながら見ていこうと思います。まずイギリスから榎原記者の報告です。」
イギリス
ナレーション:
「イギリスでは核燃料サイクルの要となる高速増殖炉にトラブルが相次いだ。」
〔ナトリウム〕
「高速増殖炉で使われるナトリウムは水と激しく反応する。ここに宿命ともいえる技術的難しさがある。」
1 http://twitpic.com/cftqzv
2 http://twitpic.com/cftr5j
3 http://twitpic.com/cftrax
イギリスの高速増殖炉
http://twitpic.com/cfupb9
報告・榎原美樹(ヨーロッパ総局):
「イギリス本島の最北端ドーンレイに日本のもんじゅと同じ開発段階の高速増殖炉があります。しかしこの増殖炉は来年の3月に廃止されることが決まっています。なぜ実用化に行き着く前に廃止されることになったのか、その理由を探りました。」
〔第1号実験炉の建設(1955年)〕
http://twitpic.com/cfupmx
http://twitpic.com/cfur3y
「イギリスの高速増殖炉開発はいまからおよそ40年前、国家プロジェクトとしてスタートしました。当時イギリスでも発電しながらプルトニウムを産み出す夢の原子炉と考えられていました。 http://twitpic.com/cfurqr
しかし開発はすぐに壁にぶつかりました。それはナトリウムを使いこなす難しさでした。」
図 高速増殖炉のしくみ
http://twitpic.com/cfutix
http://twitpic.com/cfutpx
ナレーション:
「構想増殖炉では原子炉の熱でまずナトリウムを熱する。普通の原子炉のように水を使うとプルトニウムが増殖しないからである。
高温のナトリウムの中にパイプで水を通し蒸気を発生させて発電機を動かす。水とナトリウム、これがわずか2mmの厚さのパイプの内と外を流れている。もしパイプに漏れが起きると、水とナトリウムが反応しトラブルを引き起こす。」
〔ドーンレイ高速増殖炉〕
http://twitpic.com/cfuumy
ナレーション:
「ドーンレイの高速増殖炉では運転開始直後から蒸気がナトリウムの中に漏れる事故が繰り返し起きた。蒸気発生器の破損が起こるたびに増殖炉を止めなければならなかった。」
〔ドーンレイ高速増殖炉所長 エドムンド・アダム〕
高速増殖炉所長「3台の蒸気発生器のそれぞれに500本のパイプがある。補修が必要なところは合計3000か所もあった。1984年に対策を終えるまで10年間トラブルが続いた。」
ナレーション:
「計画は大幅に遅れた。そして高速増殖炉のコストを押し上げていったのである。」
〔サッチャー首相〕
http://twitpic.com/cfui4m
ナレーション:
「合理化と民営化を掲げて登場したサッチャー政権は足踏みを続ける高速増殖炉計画の見直しに手を付けた。
高速増殖炉の予算はうなぎのぼりに増え続けた。
80年代には1億ポンドとエネルギー研究開発予算全体の3分の1を占めるまでに膨れ上がった。」
http://twitpic.com/cfv1zl
〔会計検査院〕
榎原:高速増殖炉計画の見直しの口火を切ったのは会計検査院でした。当時開発の進め方を徹底的に検査した報告書が残っていました。報告書では高速増殖炉計画が膨大な予算を使いながら、いつになったら使い物になるのか全くわからないと厳しく批判していました。
http://twitpic.com/cfuq3i
これを受けて政府の内部でも一気に見直しが進みました。
〔エネルギー省次官(当時)アイボリー・マンレー〕
http://twitpic.com/cfuy8o
エネルギー省次官:
「サッチャー政権の緊縮政策で政府事業の見直しを行った。高速増殖炉の経済性を厳密に検討した結果、商業的に成り立つのか疑問が生じたため政府資金をさらに使うことは正しくないと結論した。」
榎原:
「電力事業の民営化に踏み切ったサッチャー政権は、高速増殖炉開発の費用も電力業界に負担させようとしました。しかし、この政府の提案に対して電力側の反応は冷たいものでした。」
〔スコットランド原子力発電会社社長 ロビン・ジェフリーズ〕 http://twitpic.com/cfv0sh
「他の燃料を使う電力会社と我々は競争しているので増殖炉の巨額な開発費用を負担する考えはなかった。」
榎原美樹:
「こうして政府にも電力業界にも見放されたドーンレイの高**速増殖炉は1988年、開発計画の中止が決まったのです。」
〔廃止を決定した元エネルギー相 セシル・パーキンソン〕
http://twitpic.com/cfvu5t
「ドーンレイは金ばかりかかるやっかいものだった。もう何の必要もなかった。地元の雇用対策のために運転を続けていただけだ。」
榎原美樹:
「技術的な難しさから膨らんでいった開発費。イギリス**は経済的に割が合わないという現実の問題に直面して夢の原子炉高速増殖炉の廃止を選択したのです。」
ナレーション:
「イギリスで高速増殖炉の見直しが進められていたのとちょうど同じころ、日本はもんじゅの建設を始めた。
http://twitpic.com/cfvwl6
日本は技術的な難しさと開発費の高さいう課題にどのように取り組もうとしているのだろうか?複雑に入り組んだナトリウムの配管。 http://twitpic.com/cg3qe0
もんじゅもイギリスと同じ技術的課題にぶつかっていた。ナトリウムを安全に管理するため二重三重の対策が取られている。
こうした安全対策が建設費を急激に押し上げていった。
もんじゅの建設費は当初、350億円と見積もられていた。
http://twitpic.com/cg3x3z
「しかし、建設費は膨らみ続け、結局着工時点の1985年には普通の原発の6倍に上る6000億円にも達した。」
http://twitpic.com/cg3x8i
電力会社の間に危機感が広がった。普通の原発を将来高速増殖炉に置き換えていくという規定の方針に初めて影が差した。
〔東京電力 池亀亮副社長〕
http://twitpic.com/cg4ihf
「我々としちゃぁ 実用化するにはかなりのコストダウンを必要だと。そういう意味で見ますと、もんじゅの型は非常に配管が長くて複雑になっていますので、これを、このままスケールアップ(大型化)したんじゃとても商業炉はできない。」
http://twitpic.com/cg4lrv
ナレーション:
「国の総合エネルギー調査会が増殖炉実用化の条件を示した報告書。はたして普通の原発と経済的に太刀打ちできるのか?建設費と燃料コストの両面から試算している。報告書はまず、建設費を普通の原発の1.1倍以下に抑えることを条件としている。
http://twitpic.com/cg4qx4
これはもんじゅの次の高速増殖炉の模型である。
http://twitpic.com/cg4o6f
電力会社は建設費を引き下げるために自ら設計に乗り出した。複雑に入り組んでいた配管を短く単純にする方法を開発した。」
http://twitpic.com/cg4odj
--
〔日本原子力発電 板倉哲郎常務〕
「まず第一段階として1.5ぐくらいを目標にしてこの設計をできないかと。そういうことを研究いたしまして、結果といたしますと目標として掲げましたものは技術的に分析しまして、1.5倍は達成できるんだという見通しを我々は得たわけです。」
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ナレーション:
「電力会社は2030年ごろには実用化にこぎつけたいとしている。しかしその条件である1.1倍にするにはより大きな増殖炉をあと2基以上作り、技術開発を進めなければならない。」
報告・石川信:
「建設費を抑えるほかにもう一つ実用化の条件があります。それはウランの価格です。ウランを燃やす原発の燃料コストが大幅に上がらなければ増殖炉のメリットはないというのです。報告書はウラン価格が450グラム当たり100ドルと現在の10倍以上に値上がりすることを条件としています。」
「高速増殖炉実用化の目標とされている2030年までの世界のウランの需給はどうなっているのか。OECDがまとめたデータです。50ドルつまり実用化の条件である100ドルの半分の費用で掘ることができるウランは推定埋蔵量も含めて500万トンです。」
http://twitpic.com/cg5ic4
「これに対して2030年までに必要とされるウランは黄色の線、多くても300万トン程度と見込まれています。」
http://twitpic.com/cg5ikw
「つまり2030年までに必要なウランは50ドル以下で手に入り、100ドル以上に値上がりすることは考えられません。**しかし国は5年ごとに作る原子力開発利用長期計画で増殖炉実用化の目標を2030年としています。この目標はどのような根拠で決められたのでしょうか?**」
原子力委員会向坊隆元委員長代理:
http://twitpic.com/cg5ka2
「なぜ2030年になったかという理由はね。別に根拠はないですよ。僕らの方からいえば。電力会社がこういう計画がある、こういう計画があるってなことをいってきているわけでね。今度は国が何をするかといえば、その計画が安全であるかどうかということを判断する義務は国が負っているわけですよ。だけどそれが実現しなくたって、国は責任持たないようになってるわけ。」
- 倍増時間
石川信:
「私たちは取材を進めるうちに、高速増殖炉がその根本にかかわる問題を抱えているという情報を得ました。発電しながら新たなプルトニウムを産み出すはずの夢の原子炉が、**実際はプルトニウムをそれほど増やさない**というのです。」
「これはもんじゅの次の増殖炉を設計している電力会社のメモです。」 http://twitpic.com/cg5sef
「増殖炉の性能を示す倍増時間が計算されています。」
「倍増時間というのは高速増殖炉でプルトニウムが増えて2倍になる時間を言います。」
「2倍になればもう一つ増殖炉が動かせます。このメモでは倍増時間は90年となっています。」
〔倍増時間90年〕 http://twitpic.com/cg5sqv
「高速増殖炉では、燃料のプルトニウムは全部が一度に燃えるわけではありません。プルトニウムは少しずつ燃え、その分量に応じて増えていきます。」
「この増殖炉の場合1年間に増えるプルトニウムの量は黄色の部分。65kgにすぎません。この増殖炉を1基動かすのに必要な燃料は合わせて5.7トンです。1年間に65kgずつ増やしていくともう1基に必要な燃料を確保するのに90年もかかってしまう計算です。」
http://twitpic.com/cg5sy9
〔動燃・大洗工学センター〕
石川信:
「90年もかかる倍増時間を短くすることはできないのでしょうか。国の増殖炉開発の中心となっている、動燃、動力炉・核燃料開発事業団の研究所を訪ねました。ここでは電力会社が開発しているもんじゅの次の増殖炉の研究にも協力しています。
動燃・動力炉開発推進本部 柳沢務副本部長:
「増殖性能を上げようと考えますと、従来の三層(?)と、ウラン、プルトニウムと結合した燃料で若干は性能が向上するということも考えられますが、やはり相当性能を上げようということになると、燃料を変えていくということになると考えます。」
--
〔ペレット〕
http://twitpic.com/cgabbq
石川:
「プルトニウムを焼き固めて作った燃料です。倍増時間を短くするにはこの燃料の作り方自体を変えなければならないというのです。しかしこれには全く新たな研究開発が必要です。つまり今のままではこれ以上倍増時間を短くできないのです。
〔久留米大学〕
ナレーション:
「倍増時間90年。途方もなく長く見えるこの時間をどう考えればいいのでしょうか?久留米大学の鈴木岑二教授は通産省の外郭団体・日本エネルギー経済研究所で原子力発電の経済性を研究してきました。」
〔鈴木岑二教授〕:
「まぁ90年という倍増年数の炉を増殖炉というかどうか、厳密な定義からすると増殖炉なんでしょうけれど、それはシニア(?)問題の解決のための炉という意味合いはほとんどないんじゃないんでしょうかね。それ以下の短い倍増年数の設計が難しいということであれば、それはかなり根本的な見直しを必要とするということになると思います。」
--
ナレーション:
「高速増殖炉もんじゅの寿命は30年。次の増殖炉の寿命も30年から40年といわれている。90年という倍増時間は増殖炉を寿命まで動かし続けても、もう一つの増殖炉の燃料すら作れないことを意味している。」
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〔科学技術庁〕
ナレーション:
「国はエネルギーの自立を目指して高速増殖炉の開発を進めている。この90年という倍増時間をどのように考えているのだろうか。」
〔原子力委員会・大山彰委員長代理〕:
http://twitpic.com/cgagno
「高速炉実用化時代の倍増時間は何年がいいんだろうか、という議論はまだしていません。正直なところ。それはいろんな技術的な工夫はありうると思うんです。今の路線じゃ、倍増時間じゃ長すぎるよということだったら、短くする研究をどんどんやればいいんで。今から倍増時間はこれじゃなきゃいかん、というのは、早すぎるんじゃないか。というのがわたくしの感じですね。」
ナレーション:
「高速増殖炉の開発には莫大な費用が掛かる。イギリスは実用化の前に開発から手を引いた。日本は研究を重ねればやがては実用化できるとしている。しかし高速増殖炉にはあまりにも不確かな前途が横たわっている。」
梅村・石川 http://twitpic.com/cgaj4t
梅村:「石川記者です。今の方式ですと本来増殖炉が持つべきプルトニウムを増やす性能、これが得られないようなんですけれども改善の余地はないんでしょうか?」
石川信記者 http://twitpic.com/cgajhd
「全くないわけではないと思います。同じプルトニウムを使うにしても、燃料の作り方を新しく変えるという方法があります。実際に研究者の間にはこういった新しい研究がすでに始まっているんです。ただ新しい技術というのは初歩の段階から長い時間をかけて研究しなければなりません。
問題なのは本来持つべき増殖性能が得られる見通しがないのに、一度決めた方針のまま税金ですとか、電気料金から多額の資金をつぎ込み続けるというこうした開発のやり方だと思います。」
梅村:「なるほど。このようにプルトニウムを燃料とします高速増殖炉の実用化は国の目標であります2030年よりもさらに先に伸びそうな状況です。そこで新たな問題が生じてきました。もう一度核燃料サイクルの図をご覧ください。
http://twitpic.com/cgakeb
再処理工場は高速増殖炉で使うプルトニウムの生産工場という役割を果たしています。増殖炉が実用化されないのに再処理を続けますと、このプルトニウムの行き場がなくなってしまいます。」
http://twitpic.com/cgal03
梅村:「プルトニウムは核兵器の材料にもなる物質ですから、あらぬ疑惑を招かないためにも、ため込むことはできません。そこで普通の原子力発電所で使うことが計画されています。」
http://twitpic.com/cgalr4
梅村:「ここでは本来ウラン燃料がいるんですけれども、このウラン燃料にプルトニウムを混ぜて、燃やしてしまおうという計画です。しかしそこにも新たな問題があります。日本の計画と、その日本の一歩先をゆくフランスの現状を見て見たいと思います。」
ナレーション:
「今年1月、あかつき丸はフランスで再処理された1トンのプルトニウムを積んで帰ってきた。」
「これがあかつき丸が運んできたプルトニウムの輸送容器である。プルトニウムはこの133本の鋼鉄の容器に厳重に封入されて海を渡ってきた。今後海外の再処理で取り出されるプルトニウムの量は合わせて30トン。次々と日本に帰ってくる。日本はこの大量のプルトニウムをどう使おうとしているのだろうか。
おととしの8月、国の原子力委員会は、西暦2010年までのプルトニウムの需要と供給を試算した報告書をまとめた。これによると2010年までに生産されるプルトニウムの量は東海再処理工場から5トン、海外から30トン、六ケ所村の再処理工場から50トンの、合わせて85トンとなっている。
これに対して、高速増殖炉などで使われるのは、まだ計画段階にあるのを合わせても30トンから40トンに過ぎない。核兵器の材料にもなるプルトニウムを余分に持つことはできない。残りの50トンは軽水炉と呼ばれる普通の原発で燃やす計画になっている。
http://twitpic.com/cgb837
〔科学技術庁・石田寛人原子力局長〕:
http://twitpic.com/cgb88g
「なぜプルトニウムを分離するかと。それは使うためにプルトニウムを分離するわけですね。したがって、当然使うあてがないものについては余剰に持っている必要がないわけです。そういうところから全体の原子力計画を作っておるということであろうと思うわけです。」
フランス
--
ナレーション:
「国は西暦2000年ごろには12の原発でプルトニウムを燃やす計画である。大量のプルトニウムを普通の原発で使うにはどのような課題があるのだろうか。」
「世界最大の再処理能力を持つフランス。フランスでは再処理で取り出したプルトニウムの使い道が問題となっている。」
〔高速増殖炉スーパー・フェニックス〕
「世界で最も実用化に近いと言われた高速増殖炉スーパー・フェニックス。6年前にナトリウム漏れを起こし、その後もトラブルが続いたため現在は運転が止まっている。この増殖炉がフル稼働したのは7年間でわずか6か月に過ぎない。」
〔ラアーグ再処理工場〕
「一方、フランス西部の岬に広がる工場群。これがフランス核燃料公社のラアーグ再処理工場である。高速増殖炉の実用化が遅れる中で大量のプルトニウムを産み出し続けている。再処理工場では使用済み燃料からプルトニウムが取り出されている。
〔プルトニウムの精製〕
「フランスではこれまでに50トン近いプルトニウムが分離されたと推定されている。プルトニウムは少量ずつ専用の容器に詰めて保管される。しかし、いったん取り出したプルトニウムは長期間貯蔵することはできない。」
〔プルトニウムの貯蔵〕
そこでフランス電力庁は、プルトニウムをウラン燃料に混ぜて普通の原発で使うことを計画した。
ナレーション:
「フランスでは現在54の原発のうち、5つでプルトニウムを燃料として使っている。将来はこれを16に増やす計画である。」
〔プルトニウム混合燃料の製造〕
「ウランに少量のプルトニウムを混ぜた燃料が作られている。
プルトニウムは放射線を出し、発がん性も強いので、作業員を守る特別の工場が必要になった。すべての工程は密閉された箱の中で行われなければならない。今プルトニウムの燃料を作る専門の工場が建設中である。」
〔メロックス燃料工場〕
「完成すればフランスでは最初の大規模な向上になる。しかし完成するのは2年後。それまではプルトニウムの生産量を減らさなければならない。」
〔フランス電力庁燃料部長ジャンクロード・ジロン〕
「去年、電力庁は再処理の量を400トンから300トンに減らした。プルトニウムを燃料に加工する見通しが立たなかったからだ。」
〔フランス電力庁〕
ナレーション:
「さらにもう一つの問題が電力庁で検討されていた。これは電力庁の燃料部門の担当者がプルトニウム燃料の経済性や課題をまとめた報告書である。
これにはプルトニウムを今後10年間、計画通りに使うとウラン燃料を使う場合に比べて23億フラン、およそ500億円高くつくと書かれている。
それでもフランスは原発でプルトニウムを燃やし続けている。OECD経済協力開発機構の試算でもプルトニウム燃料の加工費は、従来のウラン燃料の加工費に比べて3倍から5倍高くつくとされている。」
--
〔国立エネルギー経済政策研究所 ドミニク・フィノン〕
「プルトニウムは危険なので少量ずつ扱う必要がある。放射能から作業員を守るために遠隔操作をしなければならない。プルトニウム燃料がコスト高になるのはそのためである。」
--
ナレーション:
「さらに電力庁の報告書には、**再処理を続けなければならない事情が赤裸々に書かれている。
『再処理が国の方針であり、すでに多額の投資をしてしまった。たとえプルトニウム燃料が割高でも、再処理を続けるほかにない。計画を見直せば世界の原子力界に深刻な影響を与えるだろう。』」
--
〔原子力庁長官 フィリップ・ラヴィロワ〕
「プルトニウムは廃棄物ではなく価値あるエネルギー源だ。ためこまず使い道を確保しなければならない。」
--
〔ラアーグ再処理工場〕
ナレーション:
「高速増殖炉が止まったまま再処理を続ければ、行き場のないプルトニウムがたまっていく。フランスは解決のできないジレンマに立たされていた。**」
放射性廃棄物
梅村伊津朗:
「普通の原子力発電所でプルトニウムを利用しますと、新たに燃料の加工施設が必要なうえ、経済的に見ましても割高につくことがわかりました。
さらにもう一つ再処理には問題点があると指摘されています。再処理では膨大な放射能を含んだ使用済み燃料を強い硝酸で溶かしましてプルトニウムを取り出します。
その過程で放射能を帯びた大量の廃棄物が出てきます。この廃棄物をどうするかが問題になっているのです。荒井記者の報告です。」
--
報告 荒井弘志:
「青森県下北半島の六ヶ所村。日本のプルトニウム利用を支える施設が次々と作られています。」
〔核燃料サイクル基地(青森県 六ケ所村)〕
「そして先月から、プルトニウムを生産する世界でも最大級の再処理工場の建設が始まりました。」
「その核燃料基地の一角で、急ピッチで工事が進められている建物があります。」
〔放射性廃棄物貯蔵施設〕
「海外の再処理で生じる放射性廃棄物を保管する施設です。」
「再処理を委託したフランスやイギリスからはプルトニウムだけでなく廃棄物も持ち帰らなければなりません。」
「フランスから返還される廃棄物の第一陣は早ければ再来年の2月にも日本に到着します。」
「再処理工場では、使用済み燃料を細かく切断して、硝酸で溶かします。この廃液は強い放射能を持っています。」
〔高レベル廃棄物のガラス固化〕
荒井:「廃液はガラスで固められステンレス製の容器に入れられます。高レベル廃棄物といわれるものです。高レベル廃棄物は強い放射線と熱を出すため、特別な建物を作って30年から50年もの間、冷やしながら保管しなければなりません。
〔金属の『さや』に密閉された使用済み燃料〕
「再処理をするとこの高レベル廃棄物以外にも、様々な種類の廃棄物が出てきます。燃料を覆っていた金属のさやは強い酸にも溶けず、そのまま廃棄物になります。」
〔容器に入れられた低レベル廃棄物〕
「再処理の中で出てくる様々な廃液は、蒸発させ残った灰を専用の容器に入れます。工場で使われた紙や布、交換された部品なども廃棄物となります。」
荒井:「再処理をするといったいどれくらいの廃棄物が出るのでしょうか?
これは六ヶ所村の再処理工場を運営する日本原燃の資料です。再処理で1年間に生じる廃棄物の量が項目ごとに示されています。」
〔再処理で生じる廃棄物〕
「元の使用済み燃料の体積を1とすると、ガラスで固めた高レベル廃棄物の量は半分以下になります。しかしそれ以外の廃棄物はむしろ体積が増えてしまいます。結局再処理で生じる廃棄物の量は元の使用済み燃料の6倍を超える体積になってしまいます。」
http://twitpic.com/cgclhw
梅村伊津郎:
「荒井記者です。国は放射性廃棄物の適切な管理のためにも、再処理が必要だと説明しているんですが、それにしては随分と廃棄物が出るもんですね。」
荒井弘志記者:
http://twitpic.com/cgcmcd
「そうですね。先月、西シベリアのトムスク7にある軍事用の再処理施設で爆発事故が起きましたが、再処理というのはもともと軍事用、つまり核爆弾に使うプルトニウムを取り出す技術だったんです。
今の再処理はそれを応用して、燃料に使うプルトニウムを取り出すために作られた技術で、廃棄物処理の技術ではないんです。
ここに原子力発電所で使われている燃料棒の模型があります。」
「使用済み燃料の中にある強い放射能は焼き固められたペレットと、金属製のさやで封じ込められています。
アメリカなど再処理をしない国では、この燃料棒のまま処分する方針です。
再処理は放射能を封じ込めてあるこの燃料棒を切り刻んでペレットを薬品で溶かしプルトニウムを取り出すため、その過程で大量の放射性廃棄物が出てしまうんです。」
「この模型でもう一度説明しましょう。使用済み燃料を再処理しますと、いろいろな廃棄物が出ます。もっとも量の多い固体廃棄物、燃料棒のさやなどの金属片、廃液を処理したもの、そして高レベル廃棄物をガラスで固めたもの。体積ではもともとの放射性廃棄物の6倍を超えてしまいます。」
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「これらの廃棄物は工場の中にある貯蔵施設に保管されるんですが、それはあくまでも保管であって、最終的な処分ではないんです。」
梅村:「そうしますとこの大量の放射性廃棄物、国は最終的にはどのようにしようとしてるんでしょうか?」
荒井:「はい。この高レベル廃棄物について、国は地下数百メートルより深いところに埋めて処分するという方針だけは決めています。しかし、具体的にどこへ処分するのかということについてはまだ検討はされていないんです。そしてガラス固化体以外の大量の廃棄物についてはどこへどうやって捨てるのか、まだ何も決まっていません。
国は核燃料サイクルの中で、プルトニウムを取り出す再処理や、プルトニウムを燃やす高速増殖炉の開発には熱心に取り組んできましたが、廃棄物処分の問題は先送りしてきたと言わざるを得ません。
日本は今、大規模な再処理工場を建設し、プルトニウム利用に乗り出そうとしていますが、そこから出る廃棄物をどうするか、大きな課題を抱えています。」
梅村伊津郎:
「プルトニウムを普通の原子力発電で燃やしますと、ウラン燃料に比べて、かなり割高につきます。また再処理しますと使用済み燃料のまま処分するのに比べまして、放射性廃棄物の量が増えてしまうということもわかりました。高速増殖炉の実用化が遠のくなかで、再処理を一体どうすればいいんでしょうか?
日本と同じように核燃料サイクルを目指してきたドイツでは使用済み燃料の再処理が法律で義務付けられています。しかし、状況の変化の中で、この法律の改正も含めまして再処理やプルトニウム利用を今後どうするべきなのか、幅広い議論が繰り広げられています。いまどのように議論が進んでいるのか、ドイツから津野ディレクターの報告です。
ドイツ
ナレーション:
「ドイツでは法律で再処理が義務付けられている。しかし再処理をやめ、使用済み燃料を直接処分する方向へと流れが変わってきた。」
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報告・津野和洋(ドイツ取材班):
「ドイツ西部、カルカーにある高速増殖炉です。」
〔カルカー高速増殖炉の解体〕
「巨大技術の粋を集めた原子炉の炉心が今次々と解体されていきます。この増殖炉はおよそ6000億円の建設費と15年の歳月をかけて作られました。しかし施設は完成したものの、一度も運転されたことはありません。**安全性に疑問があるという理由で州政府の認可が下りず**、最後まで燃料を運び込むことができなかったのです。」
〔反核・反原発デモ〕
「ドイツでは80年代に入って原子力に対する反対運動が強まりました。特にチェルノブイリ原発事故以来、国民のおよそ半分が反対するまでになっています。州の権限が強いドイツでは州政府の意向を無視して原子力施設の建設や運転を行うことはできません。原発のある8つの州のうち、7つまでが脱原発を唱える社会民主党によって抑えられています。」
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「このため電力会社は巨額の投資をした原子力施設をいつ止められてしまうかわからないという不安定な状況に追い込まれているのです。」
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〔電力会社首脳からコール首相への書簡〕
ナレーション:
「去年の末、電力会社の首脳がコール首相に手紙を送った。手紙には脱原発も含めて反対派と話し合うことが提案されていた。電力会社の思惑は、再処理を諦める代わりに原発の運転を確保することにあったといわれている。」
〔使用済み燃料直接処分容器〕
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ナレーション:
「電力会社は使用済み燃料の直接処分の研究にすでに取り組んでいた。貯蔵容器の専門メーカー。直接処分に必要な技術の開発を行っている。使用済み燃料の体積を減らすために、その枠を外し振動をかける。そして容器に入れて放射線を遮る。」
「こうして使用済み燃料を直接処分するための技術開発が続けられている。」
〔アーハウス中間貯蔵施設〕
「しかし直接処分するための場所はまだ決まっていまい。ドイツ西部にあるアーハウス中間貯蔵施設。容器に入れた使用済み燃料を一時貯蔵しておくための施設である。
〔使用済み燃料の「中間貯蔵」容器〕
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「ドイツ原子力法では、再処理することが義務付けられている。しかし電力会社の間では1トン当たり7000万円も高くつく再処理より、直接処分に切り替えたいという意見が強くなってきた。」
〔ドイツ連邦議会〕
こうした変化を受けて連邦政府も法律の改正に乗り出した。1976年の改正以来、17年ぶりの大幅な見直しである。これは原子力法改正案の草案。改正案は原子力行政を担当する環境省を中心に検討が重ねられた。成立すれば使用済み燃料の直接処分が可能となる。
〔原子力法改正準備委員長 ルドルフ・ルーケス〕
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「再処理すれば新しい機械や建物が放射能で汚染される。いずれ汚染を取り除かなければならないことが知れ渡れば、直接処分のほうが優れていると考えられるようになるだろう。」
〔エネルギー問題コンセンサス会議(ボン 3月19日)〕
津野:「3月19日、ボンのホテルにこれまで厳しく対立してきた政府と州、各政党の代表が一堂に会して、将来の原子力政策について合意を探る会議が初めて開かれました。
〔テッパー連邦環境相〕
「たいへん重要な問題だ。党派を超えた合意を期待する。」
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〔ニーダーザクセン州 シュレーダー首相〕
「今日は始まりだ。難しい問題なので時間がかかるだろう。」
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津野和洋:会場には報道陣だけでなく反原発団体の人々も詰めかけ、会議の成り行きを注目しました。
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津野:「会議を主催したのは連邦環境大臣クラウス・テッパー氏。原子力を容認する立場です。
即時脱原発を唱える緑の党の代表
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段階的な脱原発を唱えている社会民主党の代表、
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会議には賛成と反対、様々な意見を持つ政党の代表がそろいました。会議では意見の隔たりは大きかったものの、話し合いは今後も継続されることになりました。
そしてさらに経済界や労働組合や環境保護団体まで加えて幅広い国民の意見を集めることが決まりました。」
〔連邦環境相 クラウス・テッパー〕:
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「既存の原発を使うことについてはあまり意見の相違はない。廃棄物処理についても速やかに歩み寄ることができるだろう。将来の原発の利用については話し合いを見守りたい。」
津野:「核燃料サイクルの見直しに踏み切ったドイツは新たな道を求めて開かれた議論を始めていました。」
梅村伊津郎
:「資源小国日本がエネルギー自立を果たすためには、核燃料サイクルを実現して、プルトニウムをエネルギー源として使っていく。これが国の描いた夢の計画でした。
しかし高速増殖炉の開発は大きな壁に突き当たっていると言わざるを得ません。
そして実用化が遠のく中で、使用済み燃料の再処理を続ければ、プルトニウムを本来の使い道ではない、普通の原子力発電所で燃やさなければならなくなります。これは経済的に高くつきます。
さらに最終的な処分方法の決まっていない放射性廃棄物の量が増えてしまいます。
これが私たちの取材で分かった核燃料サイクルの現実です。
この核燃料サイクルに多額の資金を投入し続けてきた国はいったい今後、どう対応しようとしているんでしょうか? 科学技術庁の石田原子力局長に聞きました。」
〔科学技術庁 石田寛人原子力局長〕:
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石田寛人原子力局長:
「諸外国の高速増殖炉なり、核燃料サイクルなりの政策につきましては、それぞれのエネルギー事情があるということは認識しなければならないと思います。
我が国はご承知のように、エネルギー資源は非常に乏しいわけでありますので、現在までのところ、原子力あるいは核燃料サイクルをずっとやってまいりました。一歩一歩、技術を蓄積していったということはあるわけであります。
その状況を見ますと、原子力は『現実的な』エネルギー供給源として力になりうる、その力を利用していきうるということかと思っております。
もちろん、これから技術開発の『課題』はいろいろあろうかと思います。
その課題につきましても、研究開発期間は研究開発機関として、あるいは民間企業は民間企業として、それぞれの立場で取り組むということによりまして、原子力を『安定』で『低廉なる』エネルギー供給源として活用していきうるという風に考えているところであります。」
〔科学技術庁〕
ナレーション:「今年は日本の原子力政策の基本を決めてきた原子力長期計画の見直しの時期に当たる。」
〔原子力委員会 長期計画基本分科会〕
「原子力委員会のもとで審議に参加するメンバーは、国の機関や学者、原発のメーカー、電力会社など原子力の関係者がほとんどである。」
「これまで審議はすべて非公開で、その議論の内容が公表されることはなかった。今回の審議では、初めて懇談会が設けられ、一般の有識者から意見を聞く場(?)がようやく作られた。
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〔日本学術会議〕
ナレーション:「日本学術会議の近藤次郎会長がこの懇談会の座長を務めている。
〔日本学術会議 近藤次郎会長〕:
http://twitpic.com/cgle3z
「推進をしている方だけ、あるいは原子力のことがわかっている方だけが集まって、いわゆるムラという風に言う方がいますがね。そういう原子力ムラだけで議論してやろうではないかというのではダメだと。
もう少し、第三者で、はたしてこのような長期計画の線に沿って、進めて行っていいもんだろうか、もっと促進しなければならないだろうか、あるいは、二重三重にこれがうまくいかなくてもこうやるというような方法も考えておく必要がないんだろうか。
つまりエネルギーは原子力だけじゃなくて、いくらでもありうるわけですから。総合的な複線を考える。そして開発していく。
それは必ずしも専門家だけでは、そこまで目が届きかねる場合がありますから。いろんな方々のご意見を総合していく必要があると思いますね。」
梅村伊津郎:
「これはOECE経済協力開発機構が加盟各国のエネルギー開発予算をまとめたものです。 http://twitpic.com/cglhjw
「日本は国のエネルギー開発予算のおよそ80%を原子力関係に使っています。その40%近くが核燃料サイクル関連予算です。
反対に省エネルギーと新エネルギー開発に対しては、OECD諸国がエネルギー予算の19%程度振り向けているのに対して、日本は合わせて4%余りにすぎません。
いつ実用可できるのかわからない、いわば将来展望の不明確な核燃料サイクルに多額の税金をつぎ込み続けているということになるわけです。
http://twitpic.com/cglj3m
「日本は今年、30年以上にわたって追い求めてきました夢、プルトニウム利用に向けて本格的に一歩踏み出しました。
しかし、そこにはこれまでご覧いただきましたように、解決の難しい数多くの課題が残されています。
今、現実を踏まえた政策と、幅広い、情報公開に基づいた議論が求められています。」
http://twitpic.com/cglmsd
http://twitpic.com/cglmxu
http://twitpic.com/cgln46
http://twitpic.com/cglnhf
http://twitpic.com/cglnmg
キャスター:梅村伊津郎
ナレーション:末田正雄
資料提供:
英国AEAテクノロジー
フランス電力庁、フランス核燃料公社、
ベルゴーニュクレール社
カールスルーエ原子力センター
取材:渋谷英至 工藤真理子 早川昇 寺崎浩
撮影:佐藤正明
編集:太田博道 宮島信夫
CG制作:宮坂浩
音響効果:尾上政幸
音声:飯塚精一
技術:太田一俊
構成:清藤寧 津野和洋
制作統括:川良浩和 小野直路
林勝彦