山本七平botまとめ/民族を滅ぼすものは「教育」/~自らの思想と相容れない社会に生きる集団はファリサイ化する~

山本七平著『存亡の条件――日本文化の伝統と変容――』/第二章 民族と滅亡/永遠の課題――思想と組織と人/60頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【永遠の課題―― 思想と組織と人】ファリサイ派はこれらと違って、安保を認めないというなら、その認めないということを、何らかの形で、安保体制下の自分の日々の生き方に結びつけなければならない。<『存亡の条件』

2013-03-30 23:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

②極端な場合は、一挙手一投足まで、その「認めない」という言葉で拘束さるべきであった。 ファリサイ派の場合、これは一種、定型化された礼式のようにすらなっていた。 …安保は一つの組織的活動だったわけだが、この点は日本共産党にさらに明確に出ている。

2013-03-30 23:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

③マルクス=レーニン主義を奉ずるというなら、資本主義下の日本での日々の行動を、何らかの形で、その主義に結びつけなければならないのである。

2013-03-31 00:27:50
山本七平bot @yamamoto7hei

④その生き方を、宮本顕治氏の論文から拾えば 「…時代や歴史の制限をとびこえた、またすべてを見通した完全な真理などというのは空論にすぎない。」 (これは、そういう扱い方をすれば形骸化・空論化する、ということにもなるであろう。)

2013-03-31 00:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤そして「人類の科学的達成の集大成であるマルクス・レーニン主義――科学的社会主義を理論的基礎にしつつ、創造的にそれを日本で発展させる努力を続けたからこそ、党は歴史の分岐点にあたっては全体として先見性のある展望に立ちえた。」

2013-03-31 01:27:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥「そしてわれわれは、マルクス=レーニン主義というものを単にマルクスやレーニンの著書の範囲の訓詰学にとどめず、日本社会の実態に即した創造的な科学への探究としてその後も追究を続けている」 ということになる。 この言葉は、そのままファリサイズムの定義になりうる。

2013-03-31 01:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦事実ファリサイは以上のようにした。 そして、こうしなければならなかった。 というのは、彼らも大きな組織をもっていたからである。 一つの思想集団が、その思想集団と相いれない社会に混在しつつ組織化されている場合、それは否応なしにファリサイ化せざるをえない。

2013-03-31 02:27:49
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧これはまた、思想と組織と人の関係を律する、古くて新しい問題でもある―― その組織が共産党であれカトリックであれ。そしてこうやってはじめて人は、その組織を通じて、マルクス主義という名の理念と自己の日常生活を直接に結びつけうる。

2013-03-31 02:57:40
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩そしてそこには常に「…その社会の実態に即して創造的な」″口伝″が必要であった。 ファリサイ派は会堂(シナゴーグ)を抑えており、その意味では、当時のユダヤ人の大部分を組織化していた。 それはまた学校でもあったから、教育も抑えていた。 そして反ローマ、反政府だった。

2013-03-31 03:27:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪いわば当時の日教組である。 その教師は、通常次のような講義をした。 まず、モーセの律法を読む(勿論、現在ならマルクスでも毛語録でも同じである)。 …当時の民衆はヘブライ語を知らない。 そこで、読んだ後ですぐその部分を民衆の使っているアラム語に訳してもう一度語るのである。

2013-03-31 03:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫だがこの訳は、訳とも解説とも敷衍ともいえない一種の注解であった。 …そしてこの訳は、常に、社会の実態に即して、今日に関係ある問題を捉えて、その一句を創造的に発展させる方向―― すなわち、宮本顕治氏の言っている方向――で行われても、モーセ律法の訓詰ではなかった。

2013-03-31 04:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬彼らはその教育を、幼児から受けた。 そして成人しても、安息日にまたその教育を受けた。 この執拗ともいえる生涯教育は、一種の″草の根モーセ主義″といった形になり、これが伝統的な、民衆蜂起の勝利伝説と相まって異状な方向へ、一種、幻想的ともいえる方向へ彼らを導いていった。

2013-03-31 04:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭それは現代の日本の″平和憲法口伝″教育と似た一面がある。 まことに一民族を滅ぼすものがあるとすれば、それは「教育」であって、それ以外にない。

2013-03-31 05:27:50