茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第９２４回「ヒトラーに、ユーモアがあったら」

茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ！　ぷれいりーどっぐくん、おはよう！

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連続ツイート９２４回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、人間の認知プロセスの偉大な神秘について！

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ひゆ（１）脳の回路は、一つの経験で身につけても、使い回しできる。たとえば、ゲームで時間を忘れて熱中することを覚えた子どもは（理論的には）勉強にも時間を忘れて熱中することができる。これは、うちの子どもが勉強しないでゲームばかりしていて困るとこぼすお母さんに気休めでいうのだけど。

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ひゆ（２）おしら様哲学者、時間論が専門の、「でぶ塩」こと塩谷賢（体重０．１２トン）は、大学一年生からの私の親友で、恐ろしく頭のいい男だが、彼はゲームにも熱中してよく昼夜を問わずやっている。やはり、熱中回路は使い回しされているということなのだろう。

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ひゆ（３）ところで、昨今の日本の情勢を見ていると、ぜひ他にも使い回しをしてほしい回路がある。（ここで「回路」というのはもちろん抽象的モデルのレベルで言っているのであって、具体的に脳のここの部位とかいう還元論の話ではない）。それは、ずばり、ユーモア回路である。

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ひゆ（４）ユーモアのセンスを、落語や、漫才、コント、ブリティッシュ・コメディ、風雲たけし城、オレたちひょうきん族、スターリンジョークなどで磨くことは、世を生きる上で不可欠な素養だと思う。このユーモア回路欠乏症の人は、時に極端な言説を吐くに至り、自分だけでなく時代や国も不幸にする。

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ひゆ（５）なぜユーモア回路は大切なのか。まずは自分を客観的に見るメタ認知。自分のだめなところ、つっこみどころを直視でき。不安や恐怖を、笑いという生きるエネルギーに変えられる。これができないと、排外主義者、差別主義者、国家主義者、冷やし中華至上主義になることがある。

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ひゆ（６）ヒトラーに、ユーモアのセンスがあったら。ヒトラーはヒトラーじゃなかったろう。彼の主張は突っ込みどころ満載だ。なんだよ、そのアーリア人至上主義って。なんだよ、そのかっこつけた党集会。ワグナーのかけ方間違っている。そんなユーモア回路なしに暴走し、ナチスはドイツを滅ぼした。

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ひゆ（７）偉大なる川柳川柳師匠（円生師匠のお弟子さんである。破門されたけど）の永遠の名作落語「ガーコン」のくすぐりに、落語家はみんな戦争にやられて、みんな無事で帰ってきた、三平さんも帰ってきた。三平さんまで戦場に行くんだから、負けるはずだ、というのがある。これがユーモア回路。

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ひゆ（８）長谷部恭男さんの名言に、戦争とは憲法と憲法のぶつかり合いであるというのがある。結局、ナチスのようにユーモアのかけらもない憲法と、イギリスのようにユーモアのある憲法（空爆で開いた穴でさえ「いつもよりも開店」と笑った）が闘えば、後者が勝つというだけの話だ。

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ひゆ（９）ゴールデンウィークは、ぜひ、良質の笑いに接するのおすすめ！ 水道橋博士と園子温さんの伝説となるだろうセッション、見に行くで。私がそこそこ活躍してる秘密は、子どもの頃から寄席に通う英才教育の成果さ。ユーモア回路がない人は、成長止まるし時代や国にマジ迷惑かけるよ。

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連続ツイート９２４回「ヒトラーに、ユーモアがあったら」でした。