大阪圭吉の既刊作品について

大阪圭吉の研究で知られる探偵小説愛好家・小林文庫オーナーさんによる、大阪圭吉の既刊作品の整理と分析に関するつぶやきをまとめました。
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小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

『大阪圭吉作品集成』の刊行を期に色々言いたいことが有ると以前ツイートしました。そこで、ちょっと大阪圭吉の既刊作品について整理してみます。少し長くなります。

2013-04-28 18:54:08
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

大阪圭吉の探偵小説の代表作は、創元推理文庫『とむらい機関車』『銀座幽霊』に纏められています。ここに収録されている小説は計20作です。これを初出誌と発表年で分類してみましょう。

2013-04-28 18:54:31
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

初出誌で分類すると「新青年」が13作、「ぷろふいる」が4作、その他が3作となります。その他に初出の作品は「人間灯台」(「逓信協会雑誌」昭和11年7月)、「抗鬼」(「改造」昭和12年5月)、「幽霊妻」(「新探偵小説」昭和22年6月)です。

2013-04-28 18:54:51
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

発表年で分類するにあたっては「連続短編」前と後で分けてみます。大阪圭吉は「連続短編」の不評に挫折し「ユーモア探偵小説」に転向、その後の作品には読むべきものは少ない、と言われているからです。連続短編の最終作は「寒の夜晴れ」(「新青年」昭和11年12月)です。

2013-04-28 18:55:14
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

発表年で分類すると、連続短編以前が17作、連続短編後が3作です。連続短編後の作品は「抗鬼」、「大百貨注文主」(「新青年」昭和13年4月)、「幽霊妻」です。「幽霊妻」は執筆時期は不明です。

2013-04-28 18:55:49
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

創元推理文庫収録作以外にアンソロジーに収録された作品には「唄わぬ時計」(「新青年」昭和13年1月)、「三の字旅行会」(「新青年」昭和14年1月)、「空中の散歩者」(「冨士」昭和16年10月)があります。(「空中の散歩者」は『大阪圭吉探偵小説選』にも収録)

2013-04-28 18:56:08
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

分類して見ると、紹介されている大阪圭吉の作品は「新青年」「ぷろふいる」の探偵小説専門誌に発表した作品、連続短編以前の作品に偏っているのが解ります。大阪圭吉が出征したのは昭和18年8月なので、連続短編後の昭和12年から昭和18年にかけて発表した作品は殆ど紹介されていませんでした。

2013-04-28 18:56:29
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

盛林堂ミステリアス文庫『大阪圭吉作品集成』は、紹介されていなかった「新青年・ぷろふいる」以外、「連続短編後」の探偵小説作品を読むことができる上で、大阪圭吉ファンにとってとても意義のある作品集だと思っています。

2013-04-28 19:48:23
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

創元推理文庫後には、論創社より『大阪圭吉探偵小説選』も刊行されました。横川禎介登場の防諜小説を纏めたものですが、いかにも横井司さん編・論創社刊行らしく、ユーモア探偵小説の時期を飛ばし、よりマイナーで探偵小説から離れた作品を纏めたものでした。

2013-04-28 19:48:39
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

「新青年・ぷろふいる」以外、「連続短編後」の作品は探偵小説から離れ、紹介するべきものも少ないのでしょうか?それを読者が判断するには、あまりにも手に入る作品が少なすぎました。幸い空白を埋める『大阪圭吉探偵小説選』も『大阪圭吉作品集成』も、評価は良いように感じられます。

2013-04-28 19:49:01
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

『大阪圭吉作品集成』の刊行を機に、(探偵小説以外も含め)知られていない作品にも面白い作品が有ることを知っていただき、空白の作品がもっと出版されるよう心より願っています。(ご要望があればできる限り協力いたしますよ)

2013-04-28 19:49:34
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

大阪圭吉の戦後既刊作について分析を続けてみます。圭吉の創作は約110作あります。昨日ツイートしたように創元推理文庫収録作が20作、その他のアンソロジー収録が3作です。その後『大阪圭吉探偵小説選』に11作、『大阪圭吉作品集成』に4作収録されましたが、全部で37作に過ぎません。

2013-04-29 20:27:50
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

大阪圭吉の作品は、全体の1/3程度、しかも「新青年・ぷろふいる」の探偵小説専門誌掲載で「連続短編以前」の作品しか読むことができないのです。残った作品が「現在読むに堪えない」「出版に値しない」のなら仕方ありませんが、本当にそうなのでしょうか?

2013-04-29 20:28:27
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

『大阪圭吉探偵小説選』『大阪圭吉作品集成』は、その答えを大阪圭吉ファンの読者に出していただくための第一歩になった筈です。さらに空白の作品が出版されることを願っています。私に企画力があれば良いのですけれどね… (涙)

2013-04-29 20:31:35
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

『大阪圭吉作品集成』の森英俊氏の解説「大阪圭吉の探偵小説の魅力」で、森氏は「水族館異変」について、「注目すべきは、「坑鬼」と同様、《新青年》以外の雑誌に掲載されたこと。連続短編の呪縛から解き放たれ、新たな分野に挑戦しようとする、大阪圭吉の意気ごみが感じられる。」(続く)

2013-04-29 20:55:39
小林文庫オーナー @KOBAYASHI_bunko

と指摘しています。(140字に入れるため一部略しました) これは、大変に示唆に富む指摘です。「新青年・ぷろふいる以外」「連続短編後」にも大阪圭吉は探偵小説に意欲を持っていたし、新たな挑戦をし、傑作を生んでいるのです。この続きはまた後日(笑)

2013-04-29 21:00:57