高橋源一郎さんの語る「ポール・オースターの偶然」

アメリカ・ペンクラブのイベントでポール・オースターと対談した高橋源一郎さんの語る「ポール・オースターの偶然」。オースターは「偶然」をテーマにたくさんの著書があります。 この話、ヴェンダースの方のインタビューなんかにあったような記憶があります。
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高橋源一郎 @takagengen

アメリカPENクラブのイベントに出てました。昨日は、ポール・オースターさんと公開対談でした。目の前に、福岡伸一さんが座っていてびっくり。1年間、ニューヨークにいらっしゃるそうです。朗読もしました。ぼくは、「さよならクリストファー・ロビン」、オースターさんは書き始めたばかりの新作。

2013-05-05 21:11:01
高橋源一郎 @takagengen

オースターの新作冒頭部分、5頁しかないけど読ませてもらいました。すごくよかった。傑作の予感。「これを読んだのは、ぼく、妻、そして君で3人目だよ」だそうです。タイトルは「ファーガソン」、タイトルの中に仕掛けがあるのだけれどそれは内緒。もしかしたら、あの部分、なくなるかもしれないし。

2013-05-05 21:16:55
高橋源一郎 @takagengen

ポール・オースターは、よく「誰かのことを考えると、その直後に、偶然その人物に会うんだ。そういうことがしょっちゅうある」と書いている。金曜に会ったとき、「あれ、ほんとう?」と訊ねたら「ほんとうだよ」といった。オースターの小説の重要なテーマの一つが「偶然」なのはそのせいだ。

2013-05-09 04:23:46
高橋源一郎 @takagengen

「鍵のかかった部屋」を書いていた頃、ラストシーンは、友人の家で、彼も何度か泊まったことのある、ボストンのコロンブス・スクエア9番地の家になることが決まっていた。一度、確かめにボストンに行き、タクシーの運転手にその番地を告げたら、彼はこういった。「そこ、私も住んでました」。等々。

2013-05-09 04:27:59
高橋源一郎 @takagengen

そういうのって、気のせいじゃないのかなと思った(彼と話をする前日)。その日はスケジュールが空いていたので、チャイナタウンの馬券売り場に出かけた。でも見つからない(実は、二年前に閉鎖されていた)。仕方なく、ホテルに戻ろうとすると、リトルイタリーの四つ角で知った顔が話をしている。

2013-05-09 04:30:34
高橋源一郎 @takagengen

なんと、知人の編集者Kくん夫婦。ぼくを初めてニューヨークに連れていってくれた編集者なのだ。声をかけると、ふたりは幽霊を見たみたいに叫んだ。「なんで、高橋さんがいるんですか! ぼくたち、いままさに高橋の話をしてたんですよ!」。翌日、この話をしたら、オースターは「だからいっただろ」。

2013-05-09 04:33:10
高橋源一郎 @takagengen

オースターはヴィム・ベンダースと仕事をしている。それは、ある時、ヴェンダースからファンレターが来たからだった。ヴェンダースがそれを書いたちょうどその頃、雑誌「エル」から「誰か、フランス人女優で会いたい人はいますか?」と訊かれたオースターはなんとなく「ジャンヌ・モロー」と答えた。

2013-05-09 04:47:41
高橋源一郎 @takagengen

2週間後、ヴェンダースに会ったオースターが「ジャンヌ・モローに会うことになった」と話すと、ヴェンダースは面白がった。ヴェンダースがオースターにファンレターを送ったまさにその頃、ヴェンダースジャンヌ・モローと仕事をしていたのだ。ところが、この「偶然」の話は、まだ終わらない。

2013-05-09 04:50:14
高橋源一郎 @takagengen

ジャンヌ・モローと会ったオースターはヴェンダースの話もした。ヴェンダースとよく仕事をしているペーター・ハントケの話も。実はオースターはある人から「こんなに影響を受けたのはペーター・ハントケ以来です」といわれた数時間後、通りで偶然ハントケを見かけたのだ。ドイツ人なのになぜかパリで。

2013-05-09 04:53:51
高橋源一郎 @takagengen

「あら」とジャンヌ・モローはいった。「ハントケはフランスに引っ越しきたのよ。というか、その時、わたしのアパルトマンに泊まってたの」。偶然の世界一周。だから、オースターは時々、「周りにいるのは、みんなぼくが創造した人物じゃないだろうか」と思うそうです。

2013-05-09 04:56:24