山主の旅立ち

狸物語。 ストーリー的にはありがちですが、比較的まともな感じにまとまったのではないでしょうか。
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だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【25】「たぬきゅーぅ!」泣いて、鳴いて、啼いた。「…何だそのキモチワルイ鳴き声」茶々を入れる狐達の声を無視して、ただ、狸は声を上げ続けた。

2010-09-13 22:54:28
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【26】「やっぱり、追いかけよう」一頻り鳴いて、そして狸は決意した。「…たぬきゅーぅって何だよアハハ」と笑う狐を軽く蹴飛ばして、「おう、行くのかー?」と豪快に笑う雛に尻尾を振って挨拶して、「…」無言で見送る烏には無言で返して。――狸は駆け出した。

2010-09-13 22:56:49
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【27】山歩きに慣れていない少女の足跡を追うのは容易で、匂いだってハッキリと残っていた。だから、追い掛けるのは簡単だった。――麓の、人間の造った道路までは。

2010-09-13 22:58:20
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【28】すぐに迷子になって、狸は途方に暮れていた。道路沿いに街まで歩いた。とうの昔に少女の匂いは分からなくなっていた。人間の街は様々な匂いと臭いが雑多に混じってしまって、もう訳が分からなかった。勿論、足跡なんて残っている筈もなく。

2010-09-13 23:02:57
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【29】人間の街に辿り着いて、そこで狸は声を上げた。――鳴いて、泣いた、啼いていた。……だから、気付かなかった。誰かが、狸を目指して真っ直ぐに歩いて来ることに。そしてその人影が、狸を抱き上げた。

2010-09-13 23:06:07
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【30】急に抱き上げられて、狸は驚いて顔を上げた。その視線の先には、――。

2010-09-13 23:07:29
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【31】「…たぬきゅーぅ!」狸の嬉しそうな声が響いた。

2010-09-13 23:09:25