小出先生の京大原子炉は大丈夫なの?
もう少しマニアックな話をすると、核物質が核爆弾の製造や不明の(でも本来とは異なる)目的のために転用されることを適時に探知し、さらにすぐに見つかるという危惧を与えることでこのような転用を抑止することを目的として「探知目標」が設定されています。
2013-05-14 19:51:45具体的には、核物質の「有意量の転用」を、適時に、ある探知確率と誤警報確率をもって探知できるよう考慮して目標を設定します。有意量(SQ:Significant Quantity)とは、関連する転換工程を全て考慮しても、核爆発の可能性を排除し得ない核物質のおおよその量です。
2013-05-14 19:52:24研究炉の多くでは、以前は小さな炉心で臨界を実現するため濃縮度が90%程度の高濃縮ウランを含む燃料体を使用していました。近年は濃縮度20%未満の低濃縮ウラン燃料に置き換えられ、KURでも2010年からは低濃縮ウラン燃料に移行しています。
2013-05-14 19:54:43研究炉は出力が小さいため、高濃縮ウラン燃料を使用する場合でも総在庫量は小さく、一般的に1有意量未満です。さらにスイミング・プール型では査察や測定で炉心を目視することが可能で、こっそりと転用することは困難です。
2013-05-14 19:55:17日本では運転者による転用の可能性は低いでしょうが、第三者による核物質の盗難、強奪は想定されます。研究炉の警備は発電所ほど厳重ではありません。しかし、保障措置のため仮に盗難、強奪に成功しても直ちに発覚し、しかも有意量はもともと存在しません。
2013-05-14 19:55:38以上より、住宅地に隣接した研究炉のリスクが日常に数多く存在するリスクの揺らぎ幅(リスクのバックグランド)に対して特に高いとは考えられません。「日本は安全な国だ」というのと同じ意味において、研究炉は安全だと言っていいと思います。
2013-05-14 19:56:19@f_zebra @buvery 詳しくお教えいただき有難うございました。加圧されていない→爆発しない、飛び散らない。探知目標の設定、使用量が有意量以下→転用阻止、盗難防止。建屋内減圧→拡散防止。のような理解でよいのでしょうか?一番のポイントは、加圧がないことですね。
2013-05-14 21:44:21そうですね。圧力鍋爆弾じゃないけど、スプレー缶程度でも耐圧容器は一つ間違えると結構派手に爆発します。でも雪平鍋と電磁調理器でどんなに頑張っても家を吹き飛ばすのは難しい。@aizujin_k @buvery
2013-05-14 21:52:09@aizujin_k @f_zebra わたしも、大変ためになりました。ありがとうございました。(空気がシンクであることも大事。)
2013-05-14 21:45:14@f_zebra @buvery これですね。atomica「保障措置に用いられる手法の設計」http://t.co/bXjOMUIzVO IAEA関連のニュースでも、この話しは聞いたことが無かったです。あとでよく読んでみます。
2013-05-14 22:05:12@f_zebra かなり安全なものであることは理解できましたが、建屋が外部から大きく破壊され、原子炉も一部は損したような場合に、中性子線などが外部に漏れる心配は無いのでしょうか?@buvery
2013-05-14 21:49:30@aizujin_k リスクはもちろん決してゼロにはなりませんが、中性子線が上空だけでなく周囲に出るには建屋の外壁(遮蔽壁)が炉心の高さまで完全に破壊され、プールの水も全部抜けてかつその状態で臨界していなければならないので相当ハードルは高いと思います。 @buvery
2013-05-14 22:04:29@f_zebra なるほど、あの立地だと、其処までの破壊は911並の大規模テロぐらいでしょうから、国としてテロのリスクを低く維持できるかという別問題になりますね。それに、それほど効果的な目標でもないし。@buvery
2013-05-14 22:11:54補足:リアルで突込みが入ったので、付け加えます。テロ対策は一義的には、当該事業所の責任だそうです。京大炉の場合も、運営組織が、府警と連携をとりつつ具体的対策を講じる責任がある、ということになると思います。
2013-05-15 09:10:02@buvery @f_zebra さんに話を振って頂いたお蔭で、思いも依らぬ勉強になりました。実は、世間の目が厳しい商用炉よりも、研究炉が注目されない分危ういような気がしていたのですが、実態がわかってすっきりしました。思い込みでものを言ってはいけないなあと、改めて思いました。
2013-05-14 22:21:14↓併せて、シマウマ(f_zebra)さんが紹介する『古い原子炉の現状と安全性…フランス・フェッセンハイム原発を例に』 もご覧ください。