重信康さんによる『TRPGのデータ作成における“落とし込み”と“取捨選択”』

重信康さんがされていた、TRPGのシステムを作成する上での演出のデータへの“落とし込み”と“取捨選択”の話をまとめました。 5/19 タイトルを修正しました。小太刀右京さんによる補足を追加しました。
20
小太刀右京/Ukyou Kodachi @u_kodachi

@k_shigenobu 子供の頃読んだこち亀で(60~80巻あたり)、逃げる犯人を両さんが追う、犯人車に乗り込む、そこでエンジンキーをボルボ西郷が狙撃犯人車から飛び出すとそこに両さんが、というシークエンスがあって、いたく感動したものです

2013-05-18 23:49:44
重信康(公開用) @k_shigenobu

@u_kodachi 狙撃キャラの見せ場が「状況や戦場そのもののコントロールと多様な手練手管による直接的・間接的な妨害/支援」であることは少なくないですね。よって非常に表現幅が広いです。

2013-05-18 23:52:56
k @k8972

@k_shigenobu マクロスFなんかだと、高速移動しつつ狙撃ポイント探したりいろいろやってたりしましたねー。……巨大ロボものなので、DARとかのロボものじゃない限りはそのまま落とし込めないかもですが。

2013-05-18 23:50:05
重信康(公開用) @k_shigenobu

@k8972 「狙撃ポイントに陣取る特技」みたいなものを用意しているゲームも色々ありますね。ゴルゴといい「狙撃のために入念な準備をしている」こと自体がスナイパーのかっこよさ、というイメージはあると思います。

2013-05-18 23:54:58
重信康(公開用) @k_shigenobu

「できること/メリット」ではなく「できないこと/デメリット」からの視点も重要です。長射程射撃武器限定、移動した直後には狙撃不可、狙いに時間がかかり前後に隙が生じる、超接近距離からに対しては使えない、極度の集中を要しコストが大きい等々。それこそが“らしさ”であることは多々あります。

2013-05-18 23:51:29
重信康(公開用) @k_shigenobu

また「相手を催眠にかける」という能力なり魔法ならどうか? 何らかの状態異常を与えるのか、一定範囲の命令を実行させるのか(その範囲は彼我のレベルや達成値に左右されるのか、無制限なのか、GM判断なのか)、達成値操作か、敵集団の完全無力化か、自傷させてダメージを与える攻撃なのか。

2013-05-18 23:55:27
重信康(公開用) @k_shigenobu

それとも瞬間催眠で攻撃を止めさせる防御手段? 意識に空白を作りだしその隙に割り込み行動? 催眠支配した人々を盾にしHPを増やす? これらのどれか、あるいは複合効果、はたまた使用時にひとつを選ぶ(または成長で選択肢が増える)のか。表現方法=“落とし込み方”は無数にあるのです。

2013-05-18 23:57:08
重信康(公開用) @k_shigenobu

そして、こうした「自分の中にあるイメージ」をPCを通して表現したがるのがプレイヤーのサガです。「このゲーム、●●みたいなことはできないの?」と聞かれたことのあるGMは少なくないと思います。何をどれだけ、どのような表現で用意するのか? その“取捨選択”こそがデータ製作の肝です。

2013-05-18 23:59:44
重信康(公開用) @k_shigenobu

もちろん、思いついた要素の何もかもを網羅し投入することは事実上不可能です。商業作品なら紙面の制約があり、仮にそれを度外視できたとしても、過剰なデータは逆に個々の差別化やバランス取りを困難にするでしょうし、読み手が把握できる情報量にも限界があります。ゆえに取捨選択は必定です。

2013-05-19 00:01:57
重信康(公開用) @k_shigenobu

では何を基準に選定すればいいのか? ここで重要になってくるのがゲーム全体のコンセプトです。対象とするユーザー層、そのゲームにおける一般的なセッションの構造、想定プレイ時間、どんな立場のPCでどんなシナリオを遊んでもらうつもりなのか、何を表現したい・させたいゲームなのかetc。

2013-05-19 00:03:37
94式北海黒竜王V、@自分が狂人だと認識しているタイプの狂人 @DoomDrakeV

@k_shigenobu マギウス蓬莱の“人は撃てないが小さい物は撃てる”とか警官再現・殺人禁止だと思えば?

2013-05-19 00:08:20
重信康(公開用) @k_shigenobu

@DoomDrakeV (おそらく)世界観上のコンセプトや想定するプレイ風景を理由にした仕様の決定でしょうね。

2013-05-19 00:12:21
重信康(公開用) @k_shigenobu

「戦闘がメインのゲームなので、戦闘時に活用できる効果を優先して採択する」「初心者でも取り回しやすいものを目指すため、曖昧・難解な処理は避ける」「ミリタリーテイストを強調したいので、スナイパーが多彩な能力で多方面に活躍できるように狙撃関係の表現を優先的に充実させる」

2013-05-19 00:05:27
重信康(公開用) @k_shigenobu

または「心を持たない機械生命体と戦うゲームなので、催眠能力は最初から用意しない」「いやこのゲームのPCは機械にすら精神操作をかけられる超人なので、それを理解させるためにも必要だ」「精神支配はヒーローの技にあらず、NPC専用のみ」といったレベルでの取捨選択もコンセプトが左右します。

2013-05-19 00:08:00
重信康(公開用) @k_shigenobu

コンセプトと仕様は、ゲームを取り巻く外部の要因に立脚するものもありえます。「Aという既存ゲームのユーザーに興味を持ってもらうことを主眼とした企画なので、Aと似た仕様を意図的に多く入れてエントリーのハードルを下げる」「逆にAとの差別化を狙うのでむしろ共通項は減らす」といったふうに。

2013-05-19 00:10:58
小太刀右京/Ukyou Kodachi @u_kodachi

@k_shigenobu 前者は天下繚乱とアルシャードffの関係ですやね。あれは大ラグナロクが始まったので、「じゃあアインヘリアル的なものを入れよう」で30レベルまでキャップが解放されたりしたんで

2013-05-19 00:13:20
重信康(公開用) @k_shigenobu

@u_kodachi 天下繚乱はまさにそうした前提がありましたもんね。コンセプトがしっかり決まっているのでデータメイカーとしてはやりやすい仕事であったといえます。

2013-05-19 00:14:42
重信康(公開用) @k_shigenobu

こうして多角的に検討した結果、最初に考えていた仕様に立ち戻ったり、一番シンプルでよくある表現に落ち着くことも十分考えられます。ですがそれは、ただなんとなくでそうしたのとは少なからず違った価値を持つはずです。そうした思考と決断の積み重ねこそが全体の完成度を高めていくのですから。

2013-05-19 00:13:51
重信康(公開用) @k_shigenobu

逆に言えば、コンセプトが決まらなければ「ただなんとなくでそうする」しかなく、クオリティの低下を招きます。そしてあなたがもしデータ仕様の決定に迷うようなら、それはあなたの中でそのゲームのコンセプトが明瞭に決められていない(or他スタッフとの間で統一見解がとれていない)のです。

2013-05-19 00:15:54
重信康(公開用) @k_shigenobu

そしてこの「作り手に迷いがあるかどうか」はゲームを遊ぶユーザーにも自然と伝わるものなのです。それが最終的に「このゲーム、●●はないの/できないの?」と言われた時に「ないね……なんでだろう?」となるのか「ないよ、きっとこういう理由でね」となるのかを分けることは十分あり得ます。

2013-05-19 00:18:48
重信康(公開用) @k_shigenobu

「“落とし込み”にも“取捨選択”にも、常に自覚的であれ。一言一句一行たりとも、理由なく惰性で決めることなかれ」 これは自分もデータメイカーとして、ゲームデザイナーとして常に肝に銘じ、自戒し続けいきたい所です。といった感じで、少しでも参考になれば幸いです。長文お目汚し失礼しました。

2013-05-19 00:22:14

重信康(公開用) @k_shigenobu

http://t.co/2cx3zrlTCR おお、高速でまとめていただきました、ありがとうございます。小太刀先生も触れてましたが、こうしてノウハウをTwitterに投下する文章の形にすることは、自分の思考をまとめ整理明文化することでもあり語る側にもメリットが大きいのです。

2013-05-19 00:39:33