第二十五話:模範解答 第二十六話:探し物 第二十七話:足跡
- C_N_nyanko
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それで、体が自由になった。すんでのところで飛び出しを免れた僕は、へなへなと尻餅をつく。 「にゃあ」 僕の頭の上に、君が頭を乗せた。 「――ありがとう、助かったよ」 僕は腕を伸ばして、君の頭を撫でてやった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 23:12:42夕飯は奮発してあげた。 君は満足げに、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。 探し物をしていたつもりが、探されていたのは僕の方だったのかもしれない。 「賢い子だね、君は」 褒めてやると、君は金の目で笑った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 23:13:41これは僕が子供の頃の話。 学校の裏にちょっとした山があった。その頃陣取りが僕らのブームでね。うまく木に隠れながら、相手の陣を必死に狙ってたんだ。 誰がどこから出るかわからないから、スリル満点でね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:07:27その日もいつもどおり森で遊んでいた。少し雨が降った日だったから、足元は少しぬかるんでいた。 転びたくないね、なんて話しながらグーパーで分かれてゲーム開始さ。 僕はいつもの抜け道を通って、相手の陣に近づいた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:08:39と、その途中で足跡を見つけた。こちらに向かっていたから、敵のものだと思った。捕まえなきゃって、慌ててきた道を引き返したんだ。 それで足跡をずっと追いかけていってね。だけど途中から、向かっている方向がおかしい。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:09:51けどそのとき僕はゲームに夢中で、そんなこと気づきもしなかった。 だって普通、自分たちだけの遊び場に、他人がいるなんて思いもしないだろ? それで、足跡をたどっているうちに皆からはぐれてしまった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:10:26小さいといっても森は森。後で子どもの立ち入りが禁止されるぐらいには深くてね。足跡があるから戻れる、大丈夫だ、と進んでしまったけれど、これはいけない。 僕は引き返そうかどうか迷った。だけど足跡の正体も気になる。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:11:09ええいままよ、って。言い回しは古いけど、とにかく腹を括って足跡をたどった。 そこで日が暮れた。 何にも見えなくなったよ。あたり一面暗闇で。 僕は、ようやくここで、恐怖を覚えた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:11:28やっぱり引き返しておけばよかった。みんな僕を探しているだろうか。一気に不安になった。怖かったよ。情けない話だけど、ひどく泣いてね。 と、奥の茂みから何かがのそりと立ち上がった。僕はびっくりして泣くのをやめた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:12:56「えぇい、うるさいガキだな」 そいつは確かにそう言った。暗くてよく見えないが、随分大きな男らしい。 僕はそいつに襟首を掴まれた。 「ここまで付いて来おって。ガキのくせに生意気だな」 男は少し不機嫌だった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:13:45しかし不思議と、嫌な感じはしない。 なにか言おうと口を開いた次の瞬間、ぐるんと視界が回った。 それで、気がついたら森の外に立っていた。 門限を少し過ぎていた。僕は走って家へ帰った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:14:24あの頃は特に不思議とも何とも思わなかったけれど、思い返せば奇妙な話だろ? あの森は今でもあるよ。 今度供え物でも持って、ずっと言っていなかった礼でも言いに行くつもり。 助けてくれてありがとう、って。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-25 00:15:05