西村京太郎氏の1978~83年/巨匠の知られざる転換期 by 小林史佳氏
-
ashibetaku
- 10620
- 3
- 2
- 3

読了本。西村京太郎『寝台特急殺人事件』。これはもう素晴らしいとしか言えない。何が素晴らしいかというと、小説の後半、サスペンスを一気に増幅させるプロットの捻り。謎-解決が二段構えになっていて、最初の謎が解けると、さらに大きな謎が現れて、そこで興奮度MAXになるように設計されてるの。
2013-05-02 15:58:41
冒頭の、「はやぶさ」に乗っていた男が眠りから覚めると後続の(しかし、ダイアグラム上、絶対に乗り換え不可能な)「富士」に移動させられていたって謎自体とても魅力的なのに、それが解かれると、より大きな謎が現れて、それと同時に小説自体がまったく新しいステージに突入するってのが凄かった。
2013-05-02 16:04:13
小説全体を貫くプロットを大きくツイストさせるって、70年代の海洋ミステリ、あるいは『天使の傷痕』や『D機関情報』以来の西村の得意技だと思うんだけど、『寝台特急殺人事件』はほぼ完璧な作例じゃないかと思った。ここに至って完成、みたいな。
2013-05-02 16:12:46
実は『寝台特急殺人事件』は中学生の頃、一度読んでいて、だから再読なんだけど、当時よりもずっと面白く読めたな。当時はさほど印象に残らず、内容もほぼすべて忘れていた。だから、再読だけど初読のように楽しめた。
2013-05-02 16:15:21
西村京太郎は中学生の頃に80~90冊くらい読んだんだけど、その中で印象に残ったものを5冊挙げるとすると『殺しの双曲線』『幻奇島』『消えたタンカー』『寝台特急「北斗星」殺人事件』『十津川警部の決断』です。次点で『札幌着23時25分』、かな。
2013-05-02 16:25:45
列車爆破サスペンス『寝台特急「北斗星」殺人事件』とか、無差別殺人テロの『十津川警部の決断』とか、当時は夢中になって読んだなあ。西村の70年代の作品には今再評価されてるものもあるんだけど、80年代のトラベルミステリーもやはり面白かったのではと思って、最近いくつか再読してるのでした。
2013-05-02 16:39:04
西村京太郎『夜間飛行殺人事件』を読んでるんだけど、冒頭の、十津川夫妻を乗せたエアバス機が夜の飛行場を離陸するシーンが素晴らしくって、大いに感動してしまった。西村の文章は、プロットの構成に寄与しないディティールをひたすら削ぎ落としたタイトなもので、読点が多い独特の文章もその過程で
2013-05-06 22:08:33
意識的に選ばれた文体だと、私は思うんだけど、そうした文章、というより、選別された情報の流れが、心地よいリズムを生み出して、そこに、なんとも言えない情緒を立ち上げることに成功している。
2013-05-06 22:10:13
『夜間飛行殺人事件』はベストセラーになった『寝台特急殺人事件』に続くトラベルミステリー路線の第二弾の作品で、新しく獲得した読者を逃さないという、作家の本気を感じさせる導入部だと思ったよ。
2013-05-06 22:11:35
推理小説を読みたいって思っても、学校の図書館に置いてあった少年探偵団とかには、まったく興味を覚えなかったんだよね。あの、おどろおどろしい挿絵を見て引いてしまった。推理小説って、もっとモダンでハイカラなものなんじゃないかって思い込みがあった。怪人だの怪盗だのって違うだろという感じ。
2013-05-10 21:29:24
西村京太郎『ミステリー列車が消えた』読み終えた。これは英訳もされてて、代表作のひとつと見なされることもある作品なんだけど、全作中の突出した一作というわけでは、正直、ないと思う。これ、読みながら思ったのは、『消えた巨人軍』のリベンジ作なんだろうなということ。
2013-05-10 21:37:45
『消えた巨人軍』は、走行中の新幹線の車内から、ジャイアンツの選手監督ら三十数人が忽然と消失するって作品なんだけど、私、これを読んだとき、その消失トリックには本当に感心したの。現実に可能かどうかはともかく、小説として実にスマート。特に新聞広告で○○するって部分にはやられたと思った。
2013-05-10 21:46:39
だけど、『消えた巨人軍』は作品としてはイマイチなんだよね。当時既に十津川警部はレギュラー探偵として活躍してたんだけど、この作で新しい探偵役、左文字進を登場させてる。その左文字がまったく機能してない。それで展開ぐだぐだ、サスペンスがまったく生まれないままに終わってしまってるの。
2013-05-10 21:54:47
巨人軍の選手たちの消失から誘拐事件へと発展して、身代金の要求があったりする展開で、こういう作品なら警察関係者を探偵役に置いた方が無理がないのに、なぜか新キャラの私立探偵を登場させてる。結果、うまくキャラクターが動いてくれない。これは勿体無いと思った。
2013-05-10 21:58:09
『ミステリー列車が消えた』は十津川警部を探偵役に置いて、列車消失から乗客400人の誘拐、身代金の要求と『消えた巨人軍』とほぼ同じ展開で、ラストまでサスペンスを途切れさせることなく描き切ってる。それが良いところ。ただ、トリックは少し大味なんだよね。そっちは『巨人軍』が勝ると思った。
2013-05-10 22:01:55
左文字進シリーズは76~80年に5作の長編が書かれてて、一般に代表作は第二作の『華麗なる誘拐』だとされてるんだけど、私は第三作『ゼロ計画を阻止せよ』が最高作だと思う。荒唐無稽ながらも、尻すぼみさせることなく、最後まで事件のスケールをインフレーションさせていったのが見事だと思った。
2013-05-10 22:06:22
後半のどんでん返しが、探偵の推論によって導かれるってのも素晴らしいところ>『ゼロ計画を阻止せよ』。第四作のディストピア小説『盗まれた都市』は『ゼロ計画』の姉妹編として読まれるべきだね。
2013-05-10 22:09:46
左文字シリーズ第五作『黄金番組殺人事件』は、作中に鶴見線海芝浦駅が出てきたのと、実名で和田アキ子と森繁久彌が出てきたのがいちばん印象に残ってる。それが一番ってのもアレだけど・・・。森繁は「屋根の上のヴァイオリン弾き」終演後に楽屋に直撃。和田アキ子は、確か焼肉をおごってくれてた。
2013-05-10 22:52:38
そういえば、『黄金番組殺人事件』には、鎌倉の報国寺も出てくるんだよね。竹の寺で有名なところ。竹林の中から死体が出てくる。ここは二回行った。『黄金番組』、意外とトラベルな味わいのある作品でもあった。
2013-05-11 01:20:12
森村誠一って、若い頃よりも最近の方がイケメンに磨きがかかってるというのがすごいよね。80歳を越えて、あのルックスだもん。見習うべきところは多々あるはず。
2013-05-22 13:13:54
森村誠一もそうだけど、笹沢左保とか、流行作家としても成功して多作をものにした戦後のミステリー作家の作品を読破したいって思うことがあるんだよね。今は松本清張を少しずつと、西村京太郎を読み返してるんだけど、彼らの作品を埋れた本格の傑作を探すって姿勢「ではない」形で読み漁りたいんだよ。
2013-05-22 13:21:16
そうじゃないと、彼らの作家として魅力の核のようなものはわからないと思う。作家の個性、作家が属した時代そのものに、足を一歩踏み入れないと。本格ミステリのマニアって立ち位置からの読書では、わからないものがたくさんあるはずなんだ。
2013-05-22 13:27:38
それにしたって作品が多すぎるからなあ。今の小説家で、いくら人気があったとしても、流行作家として全盛期の頃の松本清張くらいに量産する人っていないでしょう。今、それくらい書いてるは、赤川次郎、西村京太郎、森村誠一といった人たちで、いずれもあの時代からの生き残りの作家たちだもんね。
2013-05-22 13:36:51