稲川淳二のつぶやき怪談　2013年5月28日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（ハァハァ・・・・ハァハー・・・・ハァハー・・・・・ハァハァ・・・・）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

静まり返った中で、息遣いだけが聞えている・・・・。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

胸が圧迫されて、思うように呼吸が出来ない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

仰向けに寝ている身体の上に、ずっしりと、重いものが乗っているようで酷く苦しい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（・・・何だろう？）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのままの恰好で、視線だけを下に向けると、蒲団の上に両手が乗っていた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（何だぁ・・・・そうだったのか）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ちょうど胸の上に、手を置いた状態で寝ていたんで、それで息苦しかったんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

昔から、胸の上に手を乗せたまま寝ると、怖い夢をみるといいますからね・・・。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、手をおろそうとすると、（あれ？）身動き出来ない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

体をよじって、向きを変えようとするんですが、ピクリともしない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（いけない金縛りだ！）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ハァ・・・・ハー・・・・ハァハー・・・・ハーハー・・・・

稲川淳二 @Junji_Inagawa

苦しい息遣いをしながら、夢中で両手両足に力を入れて、蒲団を蹴飛ばそうとしても、全身が固まったように硬直していて、どうにもならない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

酸欠からか、ジットリと汗ばんでいる。と、その時、はっと気付いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

何と自分の両手は蒲団の中にある。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（という事は、蒲団の上に乗っている手は誰の手？）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と思った途端、眠気が吹っ飛んだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

小さな明かりが、ひとつついただけの薄暗い闇の中、蒲団の上で、白く細い指がピクッと動いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（ううっ！・・・・ネイルアートしてる・・・女だ・・）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

仰向けに寝ている、自分の上に、女が乗ってる・・・。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

悲鳴を上げて、今にも逃げ出したいんですが、声も出ないし、体も動かない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、・・・・ズッ・・・・ズ、ズ・・・・・ズズ・・・・・

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、掛蒲団が動いて、重さが少しずつ、少しずつ、上へ上へと移動してゆく。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

やがて、赤い縮れ毛の頭が、蒲団のふちからヌーッと這い上がってきた。