第四十九話:よーい、どん。 第五十話:話半分 第五十一話:吸血鬼
- C_N_nyanko
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今までにも結構美人を見てきたけど、彼女は格が違う。 さっきそんな女性とすれ違ったんだ。 何やらワケありな雰囲気でね。で、よくよく見たら影がない。 「あの」 悪いものじゃないと思ったから、声をかけてみた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:17:34「あなたは何ですか?」 女はにこりと微笑んだ。 「いろいろな名で呼ばれています。だけれど、一番わかりやすい呼び方は、ヴァンパイアでしょうね」 へぇ、と思ったね。 真昼間から出歩けるなんて初耳だ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:17:52「少しお話しませんか。話しかけられたのなんて初めてで」 彼女は丁寧な物腰で僕を誘った。 「いいですよ。喫茶店なんてどうです」 知らない場所で二人きりになるのは少しマズイと思ったんだ。彼女はすんなり同意したよ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:19:25それで、気に入りのココアを頼んで彼女に向き直った。 彼女は言った。 「私は、命の残滓をいただいて生きているんです。その人のこれまでの記憶、最後の記憶、その全てを血肉として生きてきました」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:21:36「最初から、そうだったんですか?」 彼女は首を振る。 「いいえ、昔は不可視のものに仕えていました。巫女のようなものだと思ってくださって構いません。ソレを身に降ろして宣託を行うのが私の勤めでした」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:21:46だけどある日、と、彼女は言った。 「食べてしまったんです、身に降りてきたソレを」 彼女はふぅと息をこぼした。 「以来、こうなってしまったんです。食べずにはいられない、そうしないと身が持たない」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:21:55不思議でしょう、と彼女は微笑んだ。 「血を啜ったこともあります。不思議なことですが、血にはアレにひどく良く似ていました。そうやって生きています」 「なるほど」 僕が思っていたヴァンパイアとは、少し違うようだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:23:04「色々わかりました。夜に徘徊するのは、アレが昼間より見えやすいから。十字架を恐るのは、体内のアレが昇天してしまうから」 特に役には立ちませんけれど、と、彼女は苦笑する。 「ありがとうございました、もう結構です」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:23:54僕は礼を言って席を立った。 「もう行かれるんですか」 「忙しいんです」 「残念ですね」 彼女は僕の首筋にキスをした。そして、ぽかんとなった僕に、お元気で、と囁いた。 彼女のルージュからは、血の香りがした。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:24:38それで、どうにも今日はぼーっとしているんだ。 だから、今日は少しのミスぐらい、大目に見てもらえるとありがたいな。 もしかしたら少し、貧血気味なのかもしれないしね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-06-04 15:25:21