初心者向け「四式中戦車『チト』」のお話
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次に装甲についてです。四式中戦車の装甲は最大75mmの表面硬化装甲板と防弾鋳造装甲に守られています。鋳造で成形した箇所以外の装甲は溶接にて接合されており、端部への強度を増しています。
2013-06-20 00:09:18しかし、砲塔の鋳造成形についてはその大きさにより一体で行うことが出来ず、実際には三分割されて形成された鋳造砲塔を溶接にて接合しました。しかし、鋳造成形した鋼板の歪みが激しく、また防弾鋼板の特性上硬くて成形しずらかったので、砲塔の設計は非常に苦労したようです。
2013-06-20 00:12:08その為、計画では鋳造砲塔を取りやめて溶接にて形成された砲塔を使用し、車体の設計も変更し生産性を高めた四式中戦車の改良案があったとされ (続き
2013-06-20 00:16:44(続く 実際に三菱重工業から見つかった「チト車説明図」ではそれと思わしき図面が発見され、三菱重厚東京機器製作所では量産型1号車が未完のまま保管されていたとも言われています。 http://t.co/FDtcFGHH9f
2013-06-20 00:17:47四式中戦車のエンジンは三菱車内名称「AL」と呼ばれる四式中戦車の為に新規に製造した空冷ディーゼルエンジンをを搭載しており、その最大出力は412hp/1800rpmと非常に強力なものでした。
2013-06-20 00:23:43九七式中戦車のエンジンとして使用していたSA12200VDがV12で排気量21.72Lに対し、ALが同じV12でも37.656Lまで増加している点から考えても、以前の戦車よりもかなりの第出力を出せていた点が最大速度45km/hという速度を出せた理由なのでしょう。
2013-06-20 00:27:01そしてそれを支えるのは長い期間をかけて新しく開発した油圧操向装置であり、これのサポートによってかなりの速度を出しながらも走行試験にて「油圧操向装置の機能良好にして操向極めて容易なり。長時間の連続運行を行うも疲労することなし」と絶賛されるほどの性能を誇る事となります。
2013-06-20 00:30:30そんな訳で、四式中戦車は旧来の堅実な技術を取り入れつつも新しい技術によって更なる飛躍を遂げ、それでいて全重量30tという軽さに抑えた、まさに旧陸軍の戦車開発の集大成を集めた「決戦兵器」の一つとなったわけです。
2013-06-20 00:34:37昭和19年末に制作された「昭和二十年度各造兵廠作業計画」によると、チト車は三菱重工に於いて20年8月から納入を開始し、最大月産数30輌、20年度中に170輌が計画されており、また神戸製鋼でも月産5輌、年度内30輌を生産する予定で、年度内に200輌の生産を行うと予定していました。
2013-06-20 00:39:01しかし、戦車砲を担当する大阪陸軍造兵廠ではわずかに月産2門しか製造できず、20年3月の時点で年度内では11輌分の生産しか出来ないことが判明し、この計画は水泡と帰すこととなったわけです。
2013-06-20 00:41:21とは言えど、昭和二十年度戦車生産計画ではチト車が最優先で量産される予定であり、問題の戦車砲の生産も300門まで増産する計画がありました。
2013-06-20 00:42:27以上の検証から、もし戦争が長引いていた場合、総力を上げて生産された四式中戦車が九州、或いは東京の戦車連隊に数十輌とまとまった数が配備され、本土決戦にて火を吹いていた可能性はあったかもしれません。
2013-06-20 00:47:35しかして、私はこの2輌しか生まれなかったチト車の砲が猛火を振るうことをなく、猪鼻湖にて密やかに沈められたことこそが、この戦車にとって一番の幸せを感じた瞬間だったのだろうと思いたることで今回の小話を締めくくりたいと思います。
2013-06-20 00:48:50以下、質問コーナーでの回答一覧
最後はいつものごとくの質問コーナーです。何か疑問に思ったことがあればお気軽に私に質問してください。
2013-06-20 00:49:55「チト車で米軍主力戦車ののM4シャーマン中戦車と対抗できるか」ですか。まあ皆一回は疑問に思う素朴な質問ですが、チト車側の資料が如何せん少ないのが難しい点ですね。とりあえず、貫徹力を要求目標目安の1000m/75mm貫徹と考えて計算してみましょうか。
2013-06-20 00:59:15本土決戦となった場合、恐らく主力はM4A3だと思うのでM4A3の前面最大総高厚を見てみると、63mmの45度傾斜、まあ大体傾斜含めて100mm前後ですか。四式中戦車は傾斜角はわかりませんが、そう高いわけではないので、傾斜含めて95mmぐらいとしましょう。
2013-06-20 01:07:03米軍の76.2mm対戦車砲のAP貫徹力が1000mで85mmぐらいだったと思うので、とりあえずM4の76mm砲版の威力もそれで考えましょう。こう考えると、76.2mm砲のM4A3と四式中戦車の戦力比はほぼ同等程度と考えていいと思います。
2013-06-20 01:12:00こうなると、恐らくは「先手必勝」に近い形になると思われます。1000mだとお互いに正面装甲を抜けるかわかりませんが、おそらく7~800mぐらいならお互いの装甲が抜けるのではないでしょうか。
2013-06-20 01:14:28あとは日米の戦車運用が鍵になってくると思います。日本は車両が少ない分、主に待ちぶせを狙い、米軍戦車に損耗が出た後に追撃をかける戦術をとると予想出来るので、恐らく先に撃ちやすい状況下が多いとは思います。
2013-06-20 01:18:07しかし、米軍は敵戦車が潜伏している場所を入念に探して砲爆撃を仕掛けてから戦車を前に出してくると思うので、日本は砲兵の破砕射撃等の支援の少なさという前提条件として苦しい点があると思います。
2013-06-20 01:19:39ここまで考慮した上で、改めてM4は四式中戦車で対抗可能かと言われると「スペック的には十分に対抗が可能」と判断出来ますが、実際は日米の戦車運用の卓越さが勝負を分けるのでは、と感じますね。
2013-06-20 01:21:11