『新撰21』読書会(14)「相子智恵+甲斐由起子」

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A enom @A_mayoa

#shinsen21 Twitter読書会『新撰21』第十四回「相子智恵+甲斐由起子」スタートいたします。

2010-09-18 22:00:56
中村 安伸 @yasnakam

魅力に感じるのは、「一滴の我」という題名のもとになった代表句「一滴の我一瀑を落ちにけり」などに見られるような句柄の大きさですね。 #shinsen21

2010-09-18 22:11:58
中村 安伸 @yasnakam

ベースは写生だが、トリビアリズムに陥って句が小さくなることをさまざまな方法で避けてる印象。たとえば「蔦のひげ吸盤あまた家吸ひぬ」は、前半の細かい写生に、「家」を配することで句がちいさくなることを防ぐとともに、対比による諧謔を呼びこんでいる。 #shinsen21

2010-09-18 22:20:47
中村 安伸 @yasnakam

静的なものより、動的なシーンを写生した作品が印象的。たとえば「背泳ぎの一人は曲がり進みをり」「押して抜く浮輪の空気最後は踏み」とか。このあたりは「リアリティよりアクチュアリティ」と仰る、同じ結社の猿丸さんに通じるものかも。 #shinsen21

2010-09-18 22:29:02
関悦史 @Seki_Etsushi

「壁紙の嘘の木目やそぞろ寒」「北斎漫画ぽろぽろ人のこぼるる秋」「太郎冠者寒さを言へり次郎冠者に」「マネキンの手首に切目紫木蓮」など作り物や虚構から手応えのある句を作る辺りが面白い。 #shinsen21

2010-09-18 22:30:50
関悦史 @Seki_Etsushi

シニカルなわけではなくてチープな素材からでも動的にリアリティを引き出すその根底に包容力がある感じ。 #shinsen21

2010-09-18 22:35:09
梅﨑実奈 @umemina

百句通して読み、ものすごい充足感がありました。素材を中心に詠みつつ、そのものが「生きている」し、つくりものでない「いのち」がある。踏み込みの確かさ。 #shinsen21

2010-09-18 22:37:04
中村 安伸 @yasnakam

「壁紙の嘘の木目やそぞろ寒」は「嘘の」という語がすごいと思いました。強い言葉を大胆に使いながらも無理な感じがない。とりあわせた季語の働きもありますが、本人の洞察力が根本にあるのでしょう。 #shinsen21

2010-09-18 22:38:17
関悦史 @Seki_Etsushi

「冬蜂のねぢれば切るる胸と腹」「夏来る牛タンの根に筋走り」「蔦のひげ吸盤あまた家吸ひぬ」「皮手袋たばね売られぬ匂ひけり」等、肉質のものは結構気色悪いところを見ていてそれがどぎついグロテスク趣味にならないのも特色。 #shinsen21

2010-09-18 22:39:28
関悦史 @Seki_Etsushi

これだけ肉厚な作りで「ワシが、ワシが」という演説にならずに済んでいるのは、世界観を提示して押し付けるという要素が希薄なのと、かなり繊細精妙に対象に言葉で迫ろうとしているためか。 #shinsen21

2010-09-18 22:50:16
中村 安伸 @yasnakam

リフレインが多いのも特徴でしょうか。「一滴の我」「太郎冠者」など。たとえば「小楢軽音落葉松無音落葉踏む」は、すごく繊細な感覚ですがリフレインによって大きな句になっている。 #shinsen21

2010-09-18 22:59:26
梅﨑実奈 @umemina

「夏逝くや壜に半透明の影」「にはとりのまぶた下よりとぢて冬」こんなところにも詩は立ち上がるのかー、と思った。細かく詠めばすべて詩になるわけじゃない。でも観察眼と詩がちゃんと出会ってると思う。 #shinsen21

2010-09-18 22:59:47
関悦史 @Seki_Etsushi

「春ショールなり電柱に巻かれしもの」みたいな変なところに変なものという写生は私も時々やるのでうまいこと詠まれてしまったなと。 #shinsen21

2010-09-18 23:00:58
関悦史 @Seki_Etsushi

「一粒の放屁虫照る神樹かな」は「一粒」が視線の凝縮力を生んでいる。 #shinsen21

2010-09-18 23:03:02
関悦史 @Seki_Etsushi

「茫洋とナイターの灯や港まで」は「港まで」。の意外な開け方で視野が動的に広がったことで「茫洋と」の説明・修飾が生きている。 #shinsen21

2010-09-18 23:05:30
関悦史 @Seki_Etsushi

視線が動いて世界を広げるという自体を措辞の確かさで追体験させるような句が多いのかもしれない。 #shinsen21

2010-09-18 23:06:27
関悦史 @Seki_Etsushi

「にはとりのまぶた下よりとぢて冬」も語り手の凝視の中で下から上がってくる目蓋の動きに読者を強力に巻き込み引きずり込む。それがリアリティとなり詩になる。 #shinsen21

2010-09-18 23:08:46
関悦史 @Seki_Etsushi

視線の動きに引きずり込むことで結果的に二物衝撃に近い効果を出しているのではないか。 #shinsen21

2010-09-18 23:09:52
梅﨑実奈 @umemina

「東京といふ語は光る羽蟻の夜」「ビニル傘はがし開くや冬の暮」「冷やかや携帯電話耳照らす」〈現代〉を単純に語彙で示そうとする俳句には警戒心を持つけど、描写の力がそれらを句から浮かせない。 #shinsen21

2010-09-18 23:13:33
中村 安伸 @yasnakam

「遠火事や玻璃にひとすぢ鳥の糞」も似た感じでしょうか。 RT @Seki_Etsushi: 視線の動きに引きずり込むことで結果的に二物衝撃に近い効果を出しているのではないか。 #shinsen21

2010-09-18 23:14:46
関悦史 @Seki_Etsushi

「草笛のぶぶぶと鳴りて破れけり」の陽気なで過剰感のあるナンセンスとか「雛壇の裏骨組のすかすかと」「唐突に接ぎて新館葛の花」の日常にひそむ違和感をあけっぴろげた句も虚無的でなくて温かみがある。 #shinsen21

2010-09-18 23:16:01
関悦史 @Seki_Etsushi

そうですね。視野に割り込んでくる鳥の糞が。 @yasnakam #shinsen21

2010-09-18 23:17:32
中村 安伸 @yasnakam

「ビニル傘」も「携帯電話」も新しい語彙でなく、まったくフラットに使われている感じですね。QT @umemina: 〈現代〉を単純に語彙で示そうとする俳句には警戒心を持つけど、描写の力がそれらを句から浮かせない。 #shinsen21

2010-09-18 23:19:30
関悦史 @Seki_Etsushi

「花火しだれぬ次の花火にまぎれつつ」 は視線とモチーフの動きのしつこさがそのまま諧謔に。花火が変な動物みたい。 #shinsen21

2010-09-18 23:21:26
梅﨑実奈 @umemina

角川俳句賞の選評で「詠み方が1ミリ抜きん出ている」というのがあったけれど、この1ミリは相当な大きさだと思う。「うまさ」って嫌な意味で使われがちだけど、全体を通してここまで維持できるのはなかなかできることじゃないと思う。 #shinsen21

2010-09-18 23:21:53