- ThisAscencion
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イギリスの映画雑誌EMPIREの7月号(前号、ウルヴァリンの表紙)にギレルモ・デル・トロが特別に寄稿した"Beauty of the Beast"と題された文章、マジで素晴らしいのでどこか全文翻訳して掲載してくれないか。
2013-07-06 21:28:27①ギレルモ「1960~70年代、メキシコに日本のポップカルチャーが一気に入ってきたんだ。僕らの娯楽の5~6割は日本発のものだったと思うよ。なぜかは分からないが、たぶん映画やTVの権利料が安かったんじゃないかな。理由はさておき、(続く)」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-06 21:40:53②ギレルモ「こうして僕らはウルトラマンやウルトラセブン、ウルトラQなどの円谷英二の特撮TVシリーズ、コメットさんやマグマ大使、キャプテンウルトラなどの実写ファンタジー、そして鉄人28号、藤子不二雄のパーマン、狼少年ケン、スカイヤーズ5、そして黄金バットといったアニメを見れたんだ」
2013-07-06 21:42:10③ギレルモ「手塚治虫のアニメには大いに影響を受けた。ジャングル大帝のキンバ、レオ、鉄腕アトム、リボンの騎士などにね。映画館でも、新藤兼人監督の『鬼婆』や『藪の中の黒猫』、そして多くの東宝アニメ映画(このときから本能的に高畑勲と宮崎駿のスタイルを学びとり始めた)と怪獣映画を観たよ」
2013-07-06 21:43:02④ギレルモ「最初に観たのは本多猪四郎監督の『ゴジラ』だ。僕はすっかり惚れ込んだけど、一方で心を揺さぶられた。ダークでもの悲しい作品なんだ。その後の続編ではゴジラはだんだんと優しい怪獣になってしまったが、その頃には僕はすでにメキシコで封切られた怪獣映画を沢山観ていた」
2013-07-06 21:52:39⑤ギレルモ「たとえば本多監督の『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』だ。あの作品が公開されたとき、僕はバスで45分かけて映画館に行ってね。それがとても恐ろしい場所で、誰かがイタズラで階上から僕に小便をひっかけたんだ(続く)」
2013-07-06 22:06:59⑥ギレルモ「でも(『サンダ対ガイラ』を)どうしても最後まで観たかったから、僕はそこを出なかった。上映後、僕はニコニコしながら映画館を出たよ。髪は小便でパンク風に固まってたんだが」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-06 22:07:41⑦ギレルモ「僕の怪獣映画愛はメキシコ式レスリングへの愛情とも通じている。子供の頃、レスリング観戦はデル・トロ家おなじみのイベントだった。メキシカンレスラーを主役にした映画もよく観たよ。(中略)僕の中で、怪獣映画はレスリングの試合のように記憶されているんだ(続く)」
2013-07-06 22:25:47⑧ギレルモ「多くの怪獣映画の題名は『○○対××』という形で、ヒーロー役怪獣と悪役怪獣が、近代都市のど真ん中や開けた大地でぶつかり合うんだ。観客もたまには悪役を応援したりしてね!」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-06 22:26:57⑨ギレルモ「『パシフィック・リム』を作るにあたり、僕は子供のころに観戦したレスリングの試合のように、数々の対決シーンに系統立てた流れを持たせたかった。それぞれの対決シーンは違った美学とダイナミズムを持っている」
2013-07-06 22:54:20⑩ギレルモ「最初の戦いはオペラ的で、ワーグナーの劇のようだ。氷山散らばる海で、嵐で波が荒れ狂う中、イェーガーと怪獣がぶつかり合う。水をキャラクターの一員として引き立てるのには苦労したよ。北斎の富嶽三十六景の波を参考に、ドラマを盛り上げたんだ。ゴヤの絵画「巨人」も参考にしたね」
2013-07-06 22:56:47⑪ギレルモ「第2の戦いは回想シーンでとても感動的だ。破壊された東京の中心で窮地に陥った少女マコが、イェーガーに命を救ってもらう。ここは僕が『パシフィック・リム』で一番気に入っている場面かもしれない。SFアクションでありながら、おとぎ話のようでもあるからね」(EMPIRE誌より)
2013-07-06 23:03:44⑫ギレルモ「第3の戦いは“香港防衛戦”と名付けた巨大で長いバトルシーンだ。戦いは海から始まり、貨物ドックへと場所を移してレスリングかボクシングのような戦闘になる。(中略)そして対決は香港の大通りに移るんだが、ここは色彩に溢れた都会の中で展開する最高にクレイジーなバトルになるよ」
2013-07-06 23:33:55⑬【『パシフィック・リム』後半のプロットにやや触れてます注意】ギレルモ「そして香港で始まった戦いは、空飛ぶ怪獣の登場とともに宇宙空間へと持ち越される。そしてクライマックスでは、戦闘は海底の奥深く、怪獣たちがやってくる異次元の裂け目にまで及ぶんだ!」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-06 23:37:14⑭ギレルモ「怪獣はしばしば自然界の生物に似た姿をしている。爬虫類や昆虫、甲殻類や、イカ・タコ系、植物のようなのもいる。でも僕が好きなのは、ウルトラセブンやウルトラマンなどに出てくる、シュールで美しく、そしてカラフルな“円谷怪獣”なんだ(続く)」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-07 22:53:26⑮ギレルモ「僕のお気に入りの(円谷怪獣の)一つは、魅力的なほどにおかしくて哀しいキャラクター、ピグモンだ。宇宙から来た巨大なバッタのような怪獣、バルタン星人も大好きだよ。他にも感傷を誘うお気に入りのキャラは、ベムラー、アントラー、ゲスラ、ラゴン…これ以外の怪獣もみんな大好きだ」
2013-07-07 22:53:57⑯ギレルモ「円谷怪獣の多くは突飛なデザインで、色は派手に明るく、異様な形状をしているから、生物学的には全く理解しがたい。でも、そうした怪獣たちを観て育った子供の心には、それはもう素晴らしいものだったんだよ」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-07 22:54:35⑰ギレルモ「『パシフィック・リム』のKAIJUデザインは、円谷怪獣よりは保守的だ。僕らはKAIJUを現実の動物をベースにしてデザインしたが、生体発光する縞模様のようなクレイジーな要素を加えている。でも最後に登場する“カテゴリー5”のKAIJUは、もう少しクレイジーなものになるよ」
2013-07-07 23:02:45⑱ギレルモ「メキシコでの少年時代、僕は英国発の娯楽にも親しんだ。G・アンダーソンのスペース1999、サンダーバード、謎の円盤UFOのような番組にね。「スペース1999」の一話「宇宙墓場の怪獣現わる!」は僕にとっての金字塔で、学校の教科書に繰り返しあの怪獣を描いたものだよ(続く)」
2013-07-07 23:16:20⑲ギレルモ「でも(アンダーソンの番組で)『パシフィック・リム』に明らかな影響を与えているのは「サンダーバード」だ。イェーガーの発進シーンは非常にジェリー・アンダーソン的だ。複雑で込み入ってるんだけど、観ていてワクワクする出来になっていればいいと思う」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-07 23:19:20⑳ギレルモ「日本の怪獣映画とアンダーソンのTV番組に共通してるのは、この上なく精緻に造られた模型を使ってることだ。僕はそうした模型を巨大な何かが踏みつぶしてしまうというアイデアが大好きなんだ。そしてそういうスケール感こそ、僕が『パシフィック・リム』に焼き付け、伝えたいものなんだ」
2013-07-07 23:28:18(21)ギレルモ「だからこそ、『パシフィック・リム』のいくつかの場面では、僕らは実際に模型を造って必要な破壊シーンを撮り、それをデジタル技術で補完していくという手法をとっている」(EMPIRE誌寄稿文より)
2013-07-07 23:34:54(22)ギレルモ「メキシコの市場には、玩具を売る小さな屋台が沢山あった。そこでは映画に出てくる怪獣たちの、ケバケバしい色で塗られた安い違法模造品がいっぱい並んでたんだ。いろんな色のゴジラが簡単に手に入ったよ。橙色のほうが緑のより強いとか言って戦わせてたんだ(続く)」
2013-07-07 23:48:05(23)ギレルモ「そういうわけで、僕の頭の中の怪獣映画は本当にカラフルなんだ。だから『パシフィック・リム』には、明るくて色彩にあふれたカラーパレットを持たせたかった。漆黒の深い闇のような画面から、明るく彩色されたコミックやアニメのような光景に一気に転換するようにね」
2013-07-07 23:56:36