第一回大罪大戦失陣営【交流フェーズ03】並べ替え
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sinlite_ohari
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真っ暗闇の虚空が、深く澄んだ蒼色に染まる。果てなく高く、果てなく遠くまで、真っ青な空が広がる。 じわりと広がった白いシミは、雲になった。それはどんどん膨れて、分厚く重なった灰色の陰で空を覆い隠した。 ぽつり、ぽつり、雨が降り始める。凍てつくような冷たさはなく、まるで――
2013-07-11 04:36:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
――泣けなくなった誰かの代わりに、涙を落とすように。 雨はやがて滝と見まごうばかりにまで強まり、それからまるで飽きたかのように、突然に止んだ。 雲が晴れる。切れ間から太陽が覗き、あたりを照らす。濡れて水滴をつけた草花に覆われた、そこは小高い丘の上だった。
2013-07-11 04:36:36![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そより、吹いた風が頬にかかる髪を揺らした。ほんのりと甘い香り。とりどりの花が虫達を誘っている。 耳に届くのは、草木の葉が擦れあう音と、小川を流れる水のせせらぎ、睦み合う小鳥のさえずり。 何者にも脅かされない、静かで平和な世界。そのはじまりのかたちは、これでいい。
2013-07-11 04:36:49![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
私はイラの身体を強く抱いて、目を閉じた。何が起きても、何を忘れても、あなたの『世界』はあなたの眠りを守ろう。そう誓って。 こわれた私の身体から、緑の芽が吹く。人であるという記憶を失った私が、形を変えて。それはイラを抱き込んだまま、見る間に空まで伸びて、枝を広げ――
2013-07-11 04:37:00![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
——『揺籃』。ただそう、感じた。 暖かい。人の腕に抱かれるのは何時以来だろうか。 恵むものが降り注ぐ。親しんだものの擦れ合いさざめく音がする。目を瞑ったまま、声を漏らした。ああ、なんだ—— ——白い長衣に黒い髪、澄んだ蒼い瞳をした少女が同じ色の空を見上げて、そして破顔した。
2013-07-11 05:00:19![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
見る間に伸びる枝に根に身を預ける。包み込まれるそれに抵抗などせずに、眼を閉じた。 ——あたたかい。 ——ただずっと、あたたかい。 視界が閉じていく。閉じられ綴じられ鎖されていく。それでもただ尚、静かで、包まれていて。ただ笑んで、意識を手放した。 ——ああ、『せかい』だ。
2013-07-11 05:00:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@Fiteenl_sin @HeNotShe_sin @klown_sin 『強欲』は、視線を伏せた。その表情は、正面に対峙した男にすら見えない。ただ、口元は、笑っていたような気がする。 「――イラ!」 男は『罪科(なまえ)』を呼んだ。 「……お前もだ。其処で、『待っていろ』」
2013-07-11 12:39:49![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
また、ひとつ。 記憶が霧散していく。 それは、在るべき場所へ還っただけか。 あるいは。 「私は識っているぞ、この感覚を」 掌を、蒼き空へ。 手を、伸ばす。 「『あの日から』、まだ、終わってはいない。私は、諦めてはいないぞ」 「もう、何もかも、取り零しはしない」
2013-07-11 13:04:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
蒼穹を眼下に仰ぎ、表皮が裂ける肉体に流れる血潮が日輪に輝く。 「 」 何かが自分を締めつける。 「 」 まだだ。 「 ――だ」
2013-07-11 22:05:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
それは、口にしてはならない。「男が、口にしてはならない言葉だ」解っている。だが―― 「ルクスーリアァァーーッ 勝てッ! ワイが挑み敗けた貴様が勝ち獲れ!!」 それを願うだけの血は流した。 「ルクスーリア、ファンシー、殿、そして虚の猛者よ」
2013-07-11 22:05:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「もうすぐ拓かれるぞ 『狭間』が その狭間でワイの心火を共にした者共が殺し合う。よろしい、ならば『きんにく』だ た た か え」 ――陣太鼓はお前じゃねえ!
2013-07-11 22:05:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「にゃぁーーーーーおおう!」 猫はきんにくに呼応するかのように、一際大きい鳴き声をあげた。 だがしかし、きんにくはあやふやにしてしまおう。 きんにくはただきんにくなのだ。きんにくんときんにくはちがうのだ。 じっくりときんにくのもじをながめるがよい。 それがゲシュタルト崩壊だ。
2013-07-11 22:14:28![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……離れたのは、ただの結果さ」 男は、片腕に戻った自分の指先に、視線を落とす。 大粒の、黒色の宝石。その中に、小さな背中があった。 「……際限なんか無い。俺にはそれしかない。……お前は、そう言うと、また『唯一じゃない』からって、拗ねるか?」 その、背中が、振り返る。その、顔と→
2013-07-12 01:07:16![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
→ 目が合った気がした。 「……ああ、行って来い」 男は、小さく笑っていた。 「帰ってきたら、『真名(なまえ)』で呼んでやる。接吻(くちづけ)を呉れてやる」 自分の顔を、掌に宛てる。それはまるで、目を覆うような仕草だった。 「だから、こっちに来なくていい。其処で、待っていろ」
2013-07-12 01:13:05![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
――扉が開き、『狭間』が開く。 それでも記憶は『続い』ていく。 再び対岸に渡ることの叶わぬであろう、忘却の満ちた暗き煉獄。 そこで出会った、失われし大罪は―― 。
2013-07-12 01:14:30![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……いってらっしゃい、差し伸べる王、ウーヌス」 「ルクスーリア、そして……アドウェナ」 「いつまでも、ここから、見守っていますわ」 世界の最果て。一人、少女は微笑んだ。
2013-07-12 01:16:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
名を呼ばれて、青年は目を覚ました。 軽く伸びをして、大きくなっている事に気がつく。 それから。 「行ってらっしゃい」 「帰ってきたら、『みんな』でりんごだからな」 ゆらりと揺れるのは、微笑みに似た柔らかい空気。
2013-07-12 01:19:30![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@nobara_sin @whycame_sin @temari_sin 声が、聞こえたから。少しだけ、意識を持ち上げて、宝石を抱きかかえた。 ぼんやりとした記憶の中で、鍵をかけたその中で、それでも三つ、見える。 「——いってらっしゃい」 きっと、また、『みんな』で。
2013-07-12 01:39:37