第一回大罪大戦《正4の狭間》【戦闘フェーズ01】

紅(ルージュ)は強欲、グリード[ @HeNotShe_sin ] 黒(ノワール)は憤怒、イラ[ @Fiteenl_sin ] 狭間に出で遭い、交叉する。
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紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

扉の向こう、狭間の世界の空は狭い。果てのない空虚な闇の中に、ぽつんと浮かぶ小島のような場所だった。不思議なのは、この小島の上にある空だけは、太陽もないのに青く澄み渡っていることだ。この世界は、空の青色ごと切り取られた、箱庭であるようだ。その狭い空をぐるりと一周して、地に降りる。→

2013-06-12 01:10:29
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

地上には石でできた建造物があった。苔生し木々に蝕まれた、かつての文明の遺跡だ。木の根が割った石畳の隙間からは、草も生えている。悪い足場に慣れていないのか、赤毛の少女は危なっかしい足取りで歩く。「紛い物のかたは、まだいらしていないのかしら。」空からでは、緑の葉が邪魔でわからない。

2013-06-12 01:10:54
LiljaのIra @Fiteenl_sin

「紛い物、とは、褪せた赤には言われたくは無いわね」カン、と石を蹴る音。古びた風景に、落ち窪んだような濃紺の女が一人、杖を地面に立てた音。見やる金目銀目が細められた。「……紅を選んだ筈だけれど、いつから遊戯場になったのかしら、『狭間』は」まるで計算外だと、そう隠しもせずに言い放つ。

2013-06-12 01:18:38
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

音と声に、波打つ髪とドレスの裾を揺らし振り向く。聞こえた言葉の辛辣さは意に介さず、にこりと微笑み。「まあ。いらっしゃったのですね。気づかなくて申し訳ありません。申し上げさせて頂くなら、紅は色褪せてなどいない、真なる罪の色ですわ。」歌うような調子で言う。

2013-06-12 01:26:58
LiljaのIra @Fiteenl_sin

「褪色すらも自覚し得ないのなら、消え行くも道理かしら」かつ、音を立てて踏み出す。距離を詰める、両者共に、手さえ伸ばせば、首に手を掛けるにも容易い位置へと。「貴女、名前は?座も訊きたいわ」先の言葉にはない、純粋な疑問の浮かぶ声音。目線を合わせるかのように、背を屈めた。

2013-06-12 01:33:49
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

ばさり、足ではなく翼を使って後退る。互いの腕を伸ばしただけでは届かぬほどの距離へ。「ごめんなさい、わたくし、臆病ですの。あまり急に寄られると、体が勝手に逃げてしまうのですわ。申し遅れました、わたくしはグリード。黒に堕ちたアヴァリーティア様に代わって、強欲を新たに担うものです。」

2013-06-12 01:44:00
LiljaのIra @Fiteenl_sin

女はその返答に眼を瞬いた。少女とは対象的に警戒の色すらなく、翼を見やる事もなく、考え込む風を見せ。「空座の罪……グリード。確かにアヴァリーティアの古い名ね」反芻する、自身の中にそれを留めるように。転じて再び小さな罪に視線を向けた。「あたしは黒の憤怒、イラ。初めまして、紅の強欲」

2013-06-12 01:52:14
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

「お初にお目にかかります。」礼儀正しくドレスの裾を摘んで頭を下げ、それから悲しげに眉尻を下げた。「惜しまれますわ。わたくしは強欲ですから、やはりあなたも欲しいと思ってしまいますの。ですけれど、わたくしは紅の大罪ですから、あなたを滅ぼさなければいけません。ままならず、惜しまれます」

2013-06-12 02:11:18
LiljaのIra @Fiteenl_sin

「丁寧ね。でも狭量だわ」応える声に侮蔑の意はない。唯の、感想。「あたしが欲しいなら、こっちに来れば……と言いたいけれど。『紅』のと言うからには期待できそうもないわね」くるりと杖を回す。眼鏡の据わりを正して、真正面に『強欲(グリード)』を見据えた。「――滅すとは、無に帰する事」 →

2013-06-12 02:31:16
LiljaのIra @Fiteenl_sin

両腕を差し出す。迎え入れる様に。子を抱擁する、慈母の様に。「欲する者、『導(くれない)』の無くては夜の闇に惑う者、『黒』は貴女を慈しみましょう」笑む、それには慈愛。器だけの、無。「――さぁ、幼い罪。迷う事なき闇の黒を与えましょう。我が座は『憤怒(いかり)』、罪科は『無我』」 →

2013-06-12 02:31:59
LiljaのIra @Fiteenl_sin

そして笑みは獰猛に、歪む。 「左右してご覧、未熟な『強欲(ほしがり)』」

2013-06-12 02:32:17
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

狭量との言葉に「わたくしから奪おうとするものを、どうして許せましょうか」と返し。「わたくしは奪われてはならない、奪わせてはならないのです。同志(ルージュ)を、私(ルージュ)のものを奪おうとする其方様に、負けることがあってはならない。わたくしはわたくしと同志を守ってみせましょう」→

2013-06-12 14:16:43
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

→差し出された両腕はまだ触れない。だからまだ、逃げない。己の未熟は誰より自分が知っている。奪われる恐怖に、誰より怯えているのは自分だ。だからそれを見せてはいけないし、見てもいけない。足が竦んでしまうから。→

2013-06-12 14:17:01
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

→ 「……もっと、もっとくださいまし。」 真っ直ぐに見据えてくる黒の憤怒から、こちらも目は逸らさない。 「イラ様が失われても、わたくしが悔やまぬように。」 絶やさぬ微笑みが、悲しげに陰っていることに、自分では気付いていない。

2013-06-12 14:17:33
LiljaのIra @Fiteenl_sin

女は少女の声を受け止める、応えるように伸ばした指先、その指を飾る金が、とろりと、融けた。岩の地面に垂れ落ちたその表面がさざめく。無数に浮かび上がる、その形は矢にも似て。 「――さ、"殺し合い(たのしみ)"ましょう?」 陰る笑みに嗤いかける。指先、爪が空を切る。金の矢が、殺到する。

2013-06-12 18:00:38
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

飛来する矢の雨から身を守るべく、飛び退って樹木を盾にする。隙間を縫った矢が肌を掠め、衣服を裂く。 痛みを訴える間も惜しみ「『これ』、頂きますわ。」樹皮に突き立った矢を掴んで宣言する。 願うやそれは少女の指に収束した。同時に相手がして見せたように指差し返すも、指輪は応えない。→

2013-06-12 21:39:18
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

→紛いなりに大罪の扱うものか。「道具だけの力ではありませんのね。」 彼我の実力差を思えば、相手の本領も知らぬまま正面から挑むのは無謀。なら――仔兎のように逃げ隠れ、機を伺って虎になるしかない。 衣服を閃かせながら、遺跡の陰から陰へと移ってゆく。「お人形が欲しいわ」と零しながら。

2013-06-12 21:39:29
LiljaのIra @Fiteenl_sin

一つ盗られたか。問題ない、どうせ量産型の一つ。『無我』がある限りいくらでも、武器は手に入る。だが。 「"真"を自称するにはせこせこしてるわね。まだるっこしいった、ら!」 一声、腕を払うと同時に刃の連ねる糸が樹々を薙ぎ払い伐り倒す。最中妙な感触に眉根を寄せて、指輪を足場に変形。 →

2013-06-12 22:33:15
LiljaのIra @Fiteenl_sin

周囲を見渡しながら宙を行き横倒しの幹から見れば文字通りの『紛い物』が上下に両断されていた。ふうんと、呟く。 「人形……似たような事する子は知ってるけど。かくれんぼなら数は数えるべきかしら」 腕を振り抜く。岩同士のぶつかり合う音、石造りの一部が無惨な瓦礫と化し艶やかな断面を晒した。

2013-06-12 22:33:18
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

身を隠せる場所は徐々になくなっていく。それでも少女は逃げ回り、考える。 「鋼の肌が欲しい」と願えば、少女の肌は鈍色に染まる。壁に突いた手のひらが硬質な音をたてた。 「剣より強い爪が欲しい」と願えば、少女の指先から鉤爪が伸びて岩肌を抉った。 「……足りない。」→

2013-06-12 23:21:15
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

→「これではまだ、イラ様には及ばない」 大罪同士の戦いにおいて、非力非才であることが絶対的な不利だとは、既に悟っている。 「イラ様より強くなりたい。せめて……『イラ様と同じ力』が欲しい……!」 岩を裂いて現れた刃を、それに似た何かが阻む。少女の手には、指輪が形を変えた盾があった。

2013-06-12 23:27:08
LiljaのIra @Fiteenl_sin

捉えた――判じた思考が否と叫ぶ。瑞々しい岩の断面、そこに赤が見えない。燃えるような色が見えない。あるのは金、それは。 ああ、吐息を零す。まるで熱に浮かされたように、色に酔う女のように。指先から冷水に曝されるかの如く、ゆっくり、『己』が、遠ざかる。 「グリード」 声は、静かに。 →

2013-06-13 01:12:29
LiljaのIra @Fiteenl_sin

「ねえ、グリード、やはりあなたは強欲なのね」 腕を、横に真っ直ぐに。全ての指輪が姿を取り戻し細い指に巻き付いていく。 「強欲だけれど、無知にすぎる」 一歩、踏み出す。 「『無我(から)』のあたしから」 岩を踏む。氷は、胸元に達する。 「『錘(せかい)』を、奪うなんて」 →

2013-06-13 01:12:32
LiljaのIra @Fiteenl_sin

「――足りない」 それは奇しくも、少女が力を求めた文言と同じ音を持っていた。女の眼に初めて、好奇以外の色が浮かんだ。 焦燥。恐怖。それすら覆い尽くす、『怒り』が。 「――足りない」 足りない。どうしてくれる。購え。お前の力をもって、血をもって、魂をもって購え。お前の命で、 →

2013-06-13 01:12:35
LiljaのIra @Fiteenl_sin

「『無我(わたし)』を、満たせ」 ――融ける、などという生易しいものでは、無かった。 蒸発した金銀が空中に像を結ぶ。刀剣、槍、矛、刃をも備えるありとあらゆるものが浮かんで。 「足掻け、強欲」 腕を掲げる。 「私に怒りを、我が『罪科』を、満たせ、グリード!!」 叫声、刃が、降る。

2013-06-13 01:12:37