ギリシア語で読むギリシア神話 進撃のアテナ アイギス装着
- Hellenike_tan
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中の人がネタに尽きてしまったようで、最後の切り札的なお話を投下することになりました。お題は「アイギスをつけたアテナの出撃」、『イリアス』第5歌からです…
2013-07-03 13:30:18……というような状況でした。
【女神さま】"αὐτὰρ Ἀθηναίη κούρη Διὸς αἰγιόχοιο"733行。「アウタール・アテーナイエー・クーレー・ディオス・アイギオコイオ」と読みます。意味は「他方アイギス持つゼウスの姫神アテーナイエーは」となります。
2013-07-03 13:45:13"Ἀθηναίη"(アテーナイエー)は『イリアス』におけるアテナの呼び方の一つです(もう一つは"Ἀθήνη"(アテーネー))。
"κούρη Διὸς αἰγιόχοιο"(クーレー・ディオス・アイギオコイオ)は"ephithet"と呼ばれる「添え名」です。叙事詩に登場する神々や人々の名前に添えられていた定型句であり、音韻調整に使われていたそうです。
【ドレスを脱ぐ】"πέπλον μὲν κατέχευεν ἑανὸν πατρὸς ἐπ᾽ οὔδει ποικίλον, ὅν ῥ᾽ αὐτὴ ποιήσατο καὶ κάμε χερσίν:"(734~5行)(続きます)
2013-07-03 14:00:19(承前)読み方は「ペプロン・メン・カテケウエン・ヘアノン・パトロス・エプーデイ・ポイキロン、ホン・ラハウテー・ポイエーサト・カイ・カメ・ケルシン」です。"κατέχευεν πατρὸς ἐπ᾽ οὔδει"(父の家の床に投げた)が挟まって少しわかりにくいのですが(続きます)
2013-07-03 14:05:15(承前)そこを除くと基本は"πέπλος"(服)の説明です。意味は「服を父の館の床に投げ捨てた、自らしつらえ手で織った色鮮やかな服を」といった感じになります。
2013-07-03 14:10:17【武装】"ἣ δὲ χιτῶν᾽ ἐνδῦσα Διὸς νεφεληγερέταο τεύχεσιν ἐς πόλεμον θωρήσσετο δακρυόεντα."(736~7行)(続きます)
2013-07-03 14:30:14(承前)読み方は「ヘーン・デ・キトーン・エンデューサ・ディオス・ネペレーゲレタオ・テウケシン・エス・ポレモン・トーレーッセト・ダクリュオエンタ」です。この文は"ἐς"を境に前と後ろに分けられます。前が「キトーンを身につけた」、後ろが「戦いに備えて」です。(続きます)
2013-07-03 14:35:15(承前)全体は「涙ぐましい戦いに備えて、雲を集めるゼウスの使うキトーンを身につけ」といった意味になります。
2013-07-03 14:40:15【そしてアイギス】"ἀμφὶ δ᾽ ἄρ᾽ ὤμοισιν βάλετ᾽ αἰγίδα θυσσανόεσσαν δεινήν, ἣν περὶ μὲν πάντῃ Φόβος ἐστεφάνωται,"(737~8行)(続きます)
2013-07-03 15:00:23(承前)読み方は「アンピ・ダール・オーモイシン・バレト・アイギダ・テュッサノエッサン・デイネーン、ヘーン・ペリ・メン・パンテー・ポボス・エステパノータイ」です。"αἰγίς"は単数属格"αἰγίδος"の第三変化名詞で、単数対格がαἰγίδα"となります。(続きます)
2013-07-03 15:05:14(承前)前半"δεινήν"までが「肩に恐ろしい房のついたアイギスを身につけた」、後半"ἣν"以降は「縁全体にポボス(恐慌)が描かれて」となります。
2013-07-03 15:10:14【飾り】"ἐν δ᾽ Ἔρις, ἐν δ᾽ Ἀλκή, ἐν δὲ κρυόεσσα Ἰωκή,"(740行)。読み方は「エン・デリス・エン・ダルケー・エン・デ・クリュオエッサ・イオーケー」。意味は「上にはエリス(争い)、アルケー(勇武)、身の毛もよだつイオーケー(追撃)が」。
2013-07-03 15:30:20【極めつけ】"ἐν δέ τε Γοργείη κεφαλὴ δεινοῖο πελώρου δεινή τε σμερδνή τε, Διὸς τέρας αἰγιόχοιο."(741~2行)(続きます)
2013-07-03 16:00:22(承前)読み方は「エン・デ・テ・ゴルゲイエー・ケパレー・デイノイオ・ペロールー・デイネー・テ・スメルドネー・テ・ディオス・テラス・アイギオコイオ」。"Γοργείη"は「Γοργών(ゴルゴーン)の」という意味の形容詞です…(続きます)
2013-07-03 16:05:14(承前)"δεινοῖο πελώρου δεινή τε σμερδνή τε"は「恐ろしい」という意味の言葉が次々出てきます。全体は「恐るべき、身の毛もよだつゴルゴーンの首が、アイギス持つゼウスのしるしが」といった意味になります。
2013-07-03 16:10:15全体をまとめたものを長文ツイートサービスを使ってポストしておきました。
『イリアス』第5歌733~741行(アテナのアイギス装着) αὐτὰρ Ἀθηναίη κούρη Διὸς αἰγιόχοιο πέπλον μὲν κατέχευεν ἑανὸν πατρὸς ἐπ᾽ οὔδει (cont) http://t.co/h0ueBkWZxl
2013-07-04 18:13:01総括…というにはほど遠い「感想」で締めくくりました……
【「アイギス」のかたち】"ὤμοισιν"(肩で)着用したとされ、房がついていて、縁と正面に意匠が施されている。人口に膾炙している「盾」というイメージとは若干異なる姿が見えます。「胸当て」説などもあるようですが、「アイギス」は、その語源も含めて未だ謎を残しています…
2013-07-03 16:30:17