「ハイ、どうされましたか」「タイヘン・シツレイな事をお訊きします。お許し下さい。その左腕と、お顔の傷はどうなされたのでしょう。お痛みはしないのでしょうか」「これは…私の未熟がゆえです。身の程をわきまえず、あるニン…悪鬼に」「悪鬼!コワイ!」「ボンズスゴイ!」「アリガタイ!」 47
2013-08-08 22:18:39「アリガタヤ!」「アリガタヤ!」「アーリガータヤ!」大合唱!ナムサン、アコライトの狼狽は最高潮である!人々の中からずんぐりとしたボンズが立ち上がった!「ナマステー、アコライト=サン。私はリトリビューションといいます。それほどの深手を負う調伏…さぞや激しい物だったのでしょう」 48
2013-08-08 22:28:15激しい?違う、これはただ慢心が…胸に生じた反論はアリガタヤ・アトモスフィアにかき消される。「いかがでしょうか、どうかこのガンダーラに留まり…そのバトルボンズのワザマエで、我々をお守りいただけないでしょうか。お願い申し上げます」「オネガイシマス」「オネガイ!」「アリガタヤ!」 49
2013-08-08 22:33:13村人が、ボンズが、ドゲザめいてひれ伏す。アコライトのボンズ頭に脂汗が滲み垂れる。賢明なる読者諸氏は既にお察しの事だろう、これは罠である。ここで首を縦に振れば彼はガンダーラの…それを支配するヨーガ同好会の手先に成り下がる。そして何度でも同じ手口でいいように使われてしまうのだ! 50
2013-08-08 22:39:13「ウ…ア…」「オネガイシマス!」「オネガイシマス!」「ウ…」ニードルカーペット!もし悪鬼が…あの邪悪ニンジャがこの光景を見たならばどのような言葉を浴びせるだろうか、嘲笑か、あるいは侮蔑か?アコライトは悪意を人の形にしたような顔面を思い浮かべた。その瞬間!「…ボンジャン!」 51
2013-08-08 22:48:33アコライトがアグラ姿勢から跳ねる!「イヤーッ!」「何ーッ!?」ボンジャン空中回転カカト落としが狙うは…リトリビューション!?狂ったかアコライト!?さにあらず!見よ!リトリビューションはその四肢を体内に収納、置物ダルマめいて転がりこれを回避した!「何を!アコライト=サン!」52
2013-08-08 22:54:22「残念ですが」アコライトが揺らめくように立ち上がる。「あなたはウソをついている。私の説法は下手だったでしょう。ナメられても仕方が無い。ですが…」その右腕がヘビめいて素早くうねり、彼にしか成し得ぬカラテ姿勢で固まった!「あなたはウソをついている。あやつと同じ顔をしている!」 53
2013-08-08 22:59:59「もっとも、あの悪鬼に比べれば随分と小物めいてはいますが。いや、比べるのもシツレイか」先程までのヘドモド説法とは打って変わった滑らかな罵倒、それに一番驚いているのはアコライト自身である、まさかこの様な嘲りの言葉が自分の口からまろび出ようとは、これほどまでに心が高揚しようとは!54
2013-08-08 23:08:02「「「「アイエエエエエエ!?」」」」非ヨーギ達は口々に悲鳴を上げながらモスクの出口へと殺到!「コイツ!」「ドケ!」「コノヤロ!イヤーッ!」「グワーッ」モッシュピットめいた混沌に殴り合いの火が灯る!理想郷に住まう敬虔なる民がこのような狼藉を働く筈は無い!全員がグルだったのだ! 55
2013-08-08 23:14:37「ウヌゥーッ…!ガネーシャ=サン!カルラ=サン!」「「オウ!」」更に立ち上がる二人のボンズ…いや、ヨーギ!ガンダーラがその本性をあらわにする!「いいでしょう、まとめて…」「オット!」BLAM!銃声!?「グワーッ!?」カルラと呼ばれたヨーギの脳天に穴が空く!爆発四散! 56
2013-08-08 23:21:20「ボンズが独り占めってのはいただけねえな!それじゃあれだ、イッキュー・ボンズ・カートゥーンに出てくるオショーだな!」タカギ・ガンドー、ディテクティヴ!村人に紛れ込んでいたのだ!「俺もだ!」その影から顔を出すのはのはエーリアス!「嫌われたと思ったかい?そんなワケねえさ!」57
2013-08-08 23:28:04「改めまして。ドーモ、アコライトです」「ディテクティヴです」「エーリアス・ディクタスです」場を仕切り直すかのようなアイサツにヨーギ達も応えざるを得ない。たとえアンブッシュで仲間が殺されていようともだ!「リトリビューションです」「ガネーシャです…イヤーッ!」58
2013-08-08 23:30:18モスクのタマネギ天井が突如破砕!ガレキ破片と共に急速落下してきた何者かにアーキテクトが踏み潰される!人体構造の限界に挑戦するようなサイバーヨーガのアサナは自らに関節技をかけるも同然!過負荷に耐え切れるはずもなく首・肩・腰・股関節がリズミカルに音を立て粉砕!「アバーッ!?」62
2013-08-08 23:38:25ホネ無し軟体動物めいてひしゃげたアーキテクトの上に立つのは…「はじめましてナマステ…ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤー・インディア!天井穴より差す月光がスポットライトめいてその姿を照らす!手土産めいて両手にぶら下げるターバン生首!今宵限りはガンダーラの死神である!63
2013-08-08 23:45:02「フリクション…バプテスマ…?」アプリシアが呟いたのは生首の持ち主であったヨーギたちの名である。猛火アグニ・カトン・ジツを操るフリクション、聖牛にヘンゲしあらゆるインド人からの攻撃を防ぐバプテスマはそれぞれバラモン階級、同好会の切り札とも言える戦力だ。64
2013-08-08 23:51:22「こやつらはそのような名だったのか。初耳だ。アンブッシュで殺したゆえ」ニンジャスレイヤーは二つの生首を無造作に放り投げ、合掌しオジギした。怠惰を決め込んでいたアプリシアもここでやっと自ら起き上がり、侍従らを下がらせるや合掌オジギを返す。「ナマステー、アプリシアです」65
2013-08-08 23:56:32「早すぎるにも限度があろうに。何を生き急ぐか」「日本人はセッカチなのだ。私は特に気が短い」ニンジャスレイヤーの言葉は真実である。インドニンジャ装束は既にところどころがボロ布めいてほつれている。タイムリミットは近い…ナラクの残滓は程なくして燃え尽きる。カレーとて万能ではない。 66
2013-08-09 00:03:09「相手をする方の身にもなれ。このような面倒は何年ぶりかも分からぬ。カラテも好かぬ。疲れるからな。テンジクが欲しいのか?少し待て。我らがダイブツ様が悟った後、いくらでも貸してくれよう」「ダメだ。私は急いでいる。ダイブツか悟りか知らぬが、パーピヤースはまだのさばっている」 67
2013-08-09 00:09:50「たかだか千年か二千年の話よ。悟りは必ず成る。待てぬか?その程度が?」「それは私が日本人でなくとも待てぬだろうな」「私はニンジャではないし、そちは日本人に見えぬぞ」「そのヘリクツがインド哲学だなどと申すまいな。安心せよ、灰は間違いなく残らずガンジス川に流してくれる」 68
2013-08-09 00:15:25アプリシアは深く溜め息を吐いた。諦めたのである。「よかろ。話すよりは…」細身のその肉体がシルエットを変じ、岩でも詰めたかのように荒々しく太く節くれ立ってゆく。「殴り殺したほうがまだ早かろ。面倒には違いないが」なで肩が盛り上がり、背丈が伸び、眠たげな顔はそのままのアンバランス!69
2013-08-09 00:21:15これはジツか、カラテか!?そのどちらでもない、ヨーガである!自らの肉体と精神を馬を御するかのごとく自在に操る技術!それを極めたならばパンプアップは変身とも呼ぶべき領域へと突入する!スモトリと見紛わんばかりの筋肉の塊と化したアプリシアはニンジャスレイヤーに突進!「イヤーッ!」70
2013-08-09 00:26:45打ち下ろされた拳はニンジャスレイヤーの頭部とほぼ同サイズ!「イヤーッ!」即座に鋭いサイドステップで回避しつつ腕の外側に回る!勢い良く伸びきったヒジは軽く打つだけで容易に破損する、無慈悲なる死神の狙いはそれである!だがアプリシアは尋常のヨーギではない!「舐めたか、日本人」71
2013-08-09 00:30:13