【二次創作な】「ディザイアズ・トゥ・リーチ・ガンダーラ」#4

ニンジャスレイヤー(@njslyr)の二次創作な小説です
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欺瞞動画の会社 @naclaqns

「さよか」アプリシアの反応は至極淡白だった。グネグネと体をよじるアーキテクトを一顧だにせず、インド美女のオイルマッサージに身を任せる。敵はどう足掻いても三人か四人。このワルイ・マハルの全ヨーギを打ち倒し、頭領たるおのれに辿り着く事などできはしないのだ。24

2013-08-05 22:49:38
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時間は無限であり、宇宙も無限であり、従って人生は長い。それがインド人のアドバンテージだ。あの日本人たちがいったいどのくらいの期間このこの地にとどまるかは知らぬが、それは永劫では決してない。焦る必要など全く無い。悠久に流れる時に放り込んでしまえば、何もかもがチリに等しい。25

2013-08-05 22:55:10
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しかし…無策というわけにもゆかぬ。シュードラ位階とは言えあの四人は間違い無くヨーガ同好会の精鋭であり、特にカラテガンジーなどは単純な組み打ちにおいてはクシャトリア級の実力を備えた強者である。それが倒されたとなれば、その上テンジクを狙っているとなれば、これは危険に他ならない。26

2013-08-05 23:00:52
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「アーッボンズ!ボンズが居ますねあいつらマジメそうな若いのが居ますバトルボンズです」「ボンズ。頭目か」「多分そうだと思いますだってボンズは偉いから」合理的に判断すればそうであろう。テンジクはあくまで仏典である。狂信的ボンズが仏典を求め狼藉を働く…有り得ぬ構図ではない… 27

2013-08-05 23:07:12
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…少なくとも、ニンジャを殺すことのみに全存在を懸ける狂人の存在よりは。アプリシアの誤りを責める事はできまい。この場合、事実こそが想像の埒外にあるのだ。歯車はここに狂った。「まずはそのボンズを引き込め。後は雑魚だろう。頃合いを見て片付けよ。委細は任す。私は忙しいからなあ」28

2013-08-05 23:13:35
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アプリシアは深く溜め息を吐いた。彼は怠惰を極めるヨーギである。安楽と無為、そこに己の心身を遊ばせる…それが彼のシュッギョなのだ。働けば働くほど道からは遠ざかる。それゆえ面倒事を持ち込む者に対する不快感は強烈である。「さっさと置い払うなり殺すなり…任せる。煩わしい」29

2013-08-05 23:18:37
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「ジャーイ!」「ヨーガジャーイ!」「ジャーイ!」「…ジャーイ!」闇に数名のヨーギが立ち上がる。いずれ劣らぬ殺気を放ち、彼らはその場から散じた。30

2013-08-05 23:19:26
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2013-08-08 20:32:06
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「ようこそガンダーラ!」「ようこそ!」「光臨ヤッター!」「タックスフリー!」「オイデヤス!」「ワーイ!」ドンチャカドンチャカブーンブーン!村に入ったアコライトを待ち受けていたのは大歓迎であった。村人達の衣服は質素ながら真新しく、驚くべき事に物乞いの類が一人も居ない。 31

2013-08-08 20:32:21
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「よくおいでなさいました、ボンズ様!ヤッター!」ひときわ感極まったようにバンザイを繰り返すのは村長だろうか。色濃く日に焼けた老人だが、肉付きはよく腰もほとんど曲がっていない。全くの健康体である。「ここはブディズムの聖地、ボンズ様ならどなたも大歓迎!どうぞ心ゆくまで!」32

2013-08-08 20:38:00
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その言葉に偽りは無さそうだ。時折視界に入る何かオレンジ色の物体は…ボンズ、ボンズ、どれもこれもボンズなのだ。人物ではない。物体である。なぜならそれらは牛糞か何かのように地べたに寝転がり、眠りこけるなり空を見上げるなりの悠々自適たるアティチュードを取っているのである! 33

2013-08-08 20:42:47
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見よ!小川のほとりでは皮膚の弛んだ白人中年ボンズが子供たちを集め何やら偉そうに説法をしている!「オーボンには実家に帰らないといけんよー」…説法!?これが説法なら日本人は皆コーボー大師である!だが子供たちは目を輝かせウンウンと頷きながらこれを聞いているのだ!明らかに異常! 34

2013-08-08 20:47:49
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しかしその程度であればまだマシだ。木陰に腰を下ろすのは気弱そうなアジア人青年ボンズ、そして彼にしなだれかかるのは褐色肌のデバダシ(オイラン)風インド美人!赤い顔でうつむきモゴモゴと口ごもるボンズを濃く縁取られた目で覗き込んでいる!「アノ…ソノ…」「カワイイー!」ナムサン! 35

2013-08-08 20:55:28
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「ガンダーラには世界中から徳の高いボンズ様がいらっしゃいます。我々村人は喜捨によってカルマを落とし、ボンズ様方はシュッギョを積みながらありがたい説法をして下さいます。これぞブディズムのウィン・ウィン関係!」村長の口ぶりはまるでテーマパークの案内人である。ジェスチュアが大袈裟!36

2013-08-08 21:01:27
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聖地にあるまじきテンションにアコライトは圧倒されていた。この村長の言を鵜呑みにするならばここは確かにボンズ天国である。「ささ、テンプルへ!まずは長旅の垢をお清めになられて、その後はお食事に致しましょうか?それとも女をお呼びしましょうか!マツリ?オマツリに致しましょうか!」 37

2013-08-08 21:08:25
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「オイオイオイ爺さん、そんなにカンツァイ=サンばかり構うなよ。俺達はどうなるんだ?」「カンツァイ様とおっしゃるのですか!なんたるありがたいお名前!もはやこの村に末永く腰を落ち着けていただき…」「オイ!爺さん!」「…ア?」「エッ」「ペッ」「エエッ」38

2013-08-08 21:22:45
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そうだ…歓待されているのはあくまでアコライトただ一人なのである。従者たる三人にはその万分の一の敬意すら払われていない。ゴミのような扱いである。ラマが強引に引かれてゆく。アコライトが視線に気付き振り返る。三人の眼は無感情であった。「ア…アノ…」「チェッ」 39

2013-08-08 21:35:33
欺瞞動画の会社 @naclaqns

ダイミョ行列めいたパレードを、残された三人はただ立ち尽くして見送った。「…何だッてんだ、あの重点具合はさ」「知らぬ。だが好都合だ。動くぞ」「風呂は?メシは?ボンズ様だけかよ!一週間歩き詰めなんだぜ!」「ボンズになりゃあいいじゃねえか。オカッパ剃ってよ」 40

2013-08-08 21:36:16
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「嫌だよ!怒られちまう!」「見たことあるぜ、昔はもっとキテレツな髪型だったじゃねえか」「知らねェよ!俺のせいじゃねえ!」二人の言い合いを尻目に、ニンジャスレイヤーは右の拳を握り、開いた。筋肉の反応にラグがある。カラテはもう乏しい。時間は無い。実際無い。 41

2013-08-08 21:44:36
欺瞞動画の会社 @naclaqns

「時間が無いのだ」懸念は口に出せば事実となる。それはガンドーとエーリアスのアトモスフィアを一変させるに足る、重い言葉だった。「始めるぞ。為すべきを為す」 42

2013-08-08 21:51:48
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断崖の巨大石仏が夕日の後光を降ろす頃、アコライトはその足元…ワルイ・マハル寺院で説法を垂れていた。巨大なモスクにはほぼ全ての村人と客分ボンズが集まっている。つい昨年まで一介の修行僧に過ぎなかったアコライトにとっては思うべくもないステージであり、彼は未だ困惑の中にあった。 43

2013-08-08 21:57:45
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「…すなわち、ブッダが説いたのは自分を自分でコントロールしろということであり、状況に流されるのは…」うわ言めいて口から漏れる言葉はいちいち自分に突き刺さる。「状況に流されるのは、ブディストの風上にも置けぬ…」強烈な自己嫌悪に現実感が揺らぐ。窮地である。 44

2013-08-08 22:02:29
欺瞞動画の会社 @naclaqns

空虚な言葉だが、それでも人々が深く頷き頭を垂れる。逃げ出してしまえればどんなに楽か。アコライトは説法を得意とするボンズでは決して無い。彼が選んだのは己の肉体を通してホトケへと至る道なのだ。これがブッダの課した試練だとしたら、彼がゲイのサディストに他ならぬ動かぬ証拠である! 45

2013-08-08 22:04:45
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「だから、アノ、皆さんも日々自分を顧みて、恥じる所がないか…」ナムアミダブツシドロモドロ!そもそもここがブッダ入滅の地で、そこに住む民が敬虔なブディストであるなら…この程度の内容は陳腐を通り越してブッダに説教なのだ。「ボンズ様、お教えください!」追い詰めるように声が上がる!46

2013-08-08 22:10:57