第二大罪大戦《第五の狭間》【戦闘フェイズ1】

紅(ルージュ)は強欲、アヴァリス(@soujyu00_sin) 黒(ノワール)は色欲、フライシェスラスト(@meiji_sin2) 狭間に出で遭い、交叉する。
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リズ @soujyu00_sin

→ 三回目に会った時、白い花を貰った。 あたしが『ひと』だった時の名。偶然にも同じ。『プルメリア』 嬉しくて、そっとその花を枯れない様に『領域』で閉じ込めた。 その頃には、あの丘を登るのが楽しみで仕方が無かった。 居てくれるだろうかと。心待ちにしている自分が居た――焦がれていた

2013-08-05 17:26:14
イーシェ @meiji_sin2

黒猫の揺れる尾に合わせて、水牛の尾もゆらりゆらりと弧を描く。 本当に、変わらない口調に思い出がこみ上げて溢れ出す。 黒猫の鼻先に唇を寄せてから、伸ばされた手に返し温もりは消えるがふたりの距離も縮まる。 そよ、と流れる風に乗る潮の匂いがあの頃と変わらないもので、思わず目を閉じた。→

2013-08-05 21:43:14
イーシェ @meiji_sin2

はるか昔。 黒からナルシスとクァートが『削ぎ』落とされた後、二度目の喪失にもとより強くない心は崩壊への道を転がるように進んだ。 怠惰の屋敷にしがみつきながらも、辛くて逃げ出した先は故郷に似た、まるで似ていない海と空の見えるあの丘。 そこで、天使の姿を見つけて思わず声をかけた。→

2013-08-05 21:43:24
イーシェ @meiji_sin2

→ 酷く動揺していたのだろう、『大罪』であることを隠さないままに姿を見せた相手は喪った嘗ての天使ではなく『別の色の罪』だった。 それでも縋りつく腕は少女へと届き二人だけの呼び名が交わされた。 今この時だけは互いの罪を見て見ぬふりをするという禁忌を互いに重ね、初めて得る安らぎ。→

2013-08-05 21:43:33
イーシェ @meiji_sin2

→ 弱い自分が甘えてしまうとわかりきっていたから、会うのは『四度』までと決めた。 少女は『五度目』には願いを叶えるよう請うた。その時が来ないと良いと思いながら、頷いて秘密の契約は完了した。 三度目に会うとき、甘い匂いの花を一輪送った。図らずとも少女の名前とその花の名前は同じ。→

2013-08-05 21:43:43
イーシェ @meiji_sin2

→ 輝く太陽の下で美しく咲く少女そっくりだと思ったから、黒い髪に良く映えて笑みが溢れていた。 とっくにもう此処には愛があった。 喪った天使に、ナルシスに注いたものとは違う、手の届かない太陽に憧れるような淡くて脆い愛で満ち溢れていた。 それで、立ち直ったかのように振る舞えたから。

2013-08-05 21:43:51
リズ @soujyu00_sin

ちりん。 黒猫は己の手へと戻ってくる。在るべき場所へ還る様に。 「四度目に交わした『約束』を、覚えている?」 近づく距離に、見上げ笑う。そして、思い出す。 色を違えた彼に告げた、本来口にするべきでは無かった誰も知らない罪を。 ――自分が『大罪』として在れなくなる事を。 →

2013-08-05 22:24:51
リズ @soujyu00_sin

→ 自分が『強欲』の座で在る根源は『子供の純粋な欲求』 そして罪科は文字通り自由な『領域』を作り出す事 欲しい、我慢も手放すのも嫌。思うがまま―― けれど、大罪に座し長い時が過ぎていくうちに気づいてしまった。 自分は大罪と言えど成長している。心は『オトナ』へなっていくと。 →

2013-08-05 22:30:50
リズ @soujyu00_sin

→ 根源が揺らぎ罪科の意味を成さなくなれば 世界を担う『大罪』を背負える器では無くなる――即ち、座の喪失。 自分を受け入れてくれた大好きな人達。大事な兄。 一度手に入れた『居場所』を『大好きな人』を失う日が来る。 怖かった。紅の皆の強欲(アヴァリス)で、大罪で在りたかった。 →

2013-08-05 22:40:48
リズ @soujyu00_sin

→ そうなればこの事実を皆に、憤怒に知られてしまう。 ずっと自分を守ってくれた『オトナ』を憎み続ける罪の根源を持つ兄に。 拒絶されたくなかった、守りたかった。彼の守るべき『コドモ』で 『欲しがりの可愛い妹(アヴァリス)』のままで居たかった。 強欲だから何もかも、手放せなかった →

2013-08-05 23:07:21
リズ @soujyu00_sin

→ 色欲の名を覚えられたように、もう『オトナ』へ近づいている。 罪科を根源を失い、いつか自分は『大罪』で在れなくなる。 『アヴァリス』として皆の傍に居れなくなるならいっそ―― けれど自ら命を絶てば其れは座の放棄。 強欲な、そして大罪の責を担う自分がそんな事を赦せるわけ無かった。

2013-08-05 23:07:52
イーシェ @meiji_sin2

「『約束』当然覚えているさ」 正確には、思い出したである。少し低い位置にある顔を見下ろして視線を合わせるべく屈んだ。 子供扱いだとまた拗ねるだろうか、彼女がもう唯の子供でないと知っているから。 幼いだけでない魅力と、危うさを兼ね備えているからこその罪。→

2013-08-06 00:42:42
イーシェ @meiji_sin2

→ 『四度目』の逢瀬は緊張した。 最後だとわかっているからこそ一瞬一瞬をこの体に刻み込もうとするかのように、少女の隣に合った。 膝に乗せ腕の中にすっぽりと収まる体は小さく、しかし温度は確かにそこにある。 いつもよりも別れの時間は遅く、五日目の朝日が昇る頃まで深く話し合った。→

2013-08-06 00:42:48
イーシェ @meiji_sin2

→ 「夜が明ける」 夜空から明けてゆく空を眺めながら、ぽつりと落とす。 これが別れの合図になった。 戻る道には通り雨のカーテン、潜るともう全てを『覚えていなかった』から、《黒の色欲》の顔に戻る。 そうしてたった四回の逢瀬は終了した。罪を重ねてより身動きを取れなくしながら。

2013-08-06 00:59:02
リズ @soujyu00_sin

あたしはどこまでも『強欲』だった。 識っていた。 最初から終わりは決められた出会いだった。 ――それでも、焦がれてしまった。 識っていた。 いずれ座を喪い唯の大罪になれない強欲な何かになる事も。 大好きな紅の皆と共に在りたかった。 ――『アヴァリス』でいたかった。 →

2013-08-06 01:24:34
リズ @soujyu00_sin

→ どちらも手放す事も、諦める事も出来ず、どちらをも欲した。 時は無情に片方の終わりを告げる。 だから何処までも残酷な事を告げた。『あたし』の願いを叶えるために。 四回目、最後の日。朝日が昇る頃。別れを惜しむよう言葉を交わした後。 『これで、会うのは最後ね!でも、もし――』 →

2013-08-06 01:25:15
リズ @soujyu00_sin

→ 記憶と同じ。いつものように無邪気な笑顔で。 「もし『大罪』として会う事があったなら――五回目があったなら」 「あたしを『殺して』」 ちりん。 『約束』の言葉を発すると同時、黒猫は淡い光になって消える。 四度目のあの日封じた『オトナ』としての自分が、緩やかに還ってくる。

2013-08-06 01:29:28
イーシェ @meiji_sin2

黒に戻ってから色欲らしく努めた訳ではないが、失ったものを埋めるようにより一層強く繋がりを求めるようになった。 それはナルシスとクァートの喪失に隠れて怠惰や他の大罪には気づかれなかったようだが、確かに歪な罅は広がって全てを蝕み始める。→

2013-08-06 02:58:03
イーシェ @meiji_sin2

→ 最後まで、明るい声と口調のまま少女は望みを言葉にした。 記憶と重なる今の声もまた、あの時の音と同じもの。 『あたしを殺して』 だから、会いたくなかった。 だから、会いたくてしかたなかった。 紅から開放させるにはこの方法しかない、決して黒には染まらない。→

2013-08-06 02:58:12
イーシェ @meiji_sin2

→ それでも欲しいと望んでしまったから、五回目は遠くない未来に来るのだと信じて忘れられた。 黒猫が消えて、幼い見た目の中に『オトナ』の強欲が還るのを見る。 『約束』を叶えるために立ち上がると両腕を広げて少女を迎えた。 ただ連れされたらいいのに、それは一番許されないから。→

2013-08-06 02:58:20
イーシェ @meiji_sin2

→ 「俺の手でリズを『殺す』よ」 だからもうそんなに自分を追い詰めないで欲しい、苦しまないで欲しい、そんな太陽みたいに輝く笑顔で望まないで欲しい。 強欲すぎる全てが眩しすぎて、直視できなくて、目を細めて誓う。 だって、『五回目』が本当に叶ってしまったのだからもう迷うこともない。→

2013-08-06 02:58:28
イーシェ @meiji_sin2

→ びしりと鈍い音を立てて罅はさらに傷口を広げ内に収めた醜い欲望が溢れ出す。 それをそのまま体現したような、とろりと揺れる粘度の高い水分が足元から現れて球を描く。 拳大から頭部くらいのサイズの水の玉がいくつか無重力に浮かぶように漂って。 触れればはじけて肌に絡みつく罠となる。

2013-08-06 02:58:34
リズ @soujyu00_sin

「イーシェっ」 約束を交わした時と違わぬ、返事。 腕へと迷いなく小さな手を伸ばして飛び込む。 ずっと、焦がれて、焦がれて、会いたくて。 『五回目』があれば、自分があの時約束を告げずともこの人は泣きながら自分を殺めただろう。 わかっていた。分かった上で自分から残酷な事を告げた。 →

2013-08-06 22:04:33
リズ @soujyu00_sin

→ 同じ座を持つ罪達と戦えるなら、そしてそこで死ねるなら。 あたしは『罪』として仲間を思ったまま終えられる。 そして殺されるなら、この人がいいと。 利用しようとした。嘘じゃない。 けれどあたしは諦めて死を望んだ訳じゃない。 それ以上の思いがあるのを知ってるのは、お互いだけ。 →

2013-08-06 22:05:06
リズ @soujyu00_sin

→ 『「あたし」はこの会話もきっと覚えていないわ。だからあなたも『忘れて』 けれどもし、会えたなら――思い出す事を『忘れないで』」 だからあたしは『オトナ』へと変わりゆく心を領域に閉じ込め切り離した。 黒猫を形どったそれは常に傍にいたけれど、あたしは彼も約束も、全て忘れた。 →

2013-08-06 22:05:25
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