「アはアーケードのア」第8回『グロブダー』 written by 見城こうじ

このシリーズはかつてマイコンBASICマガジンのライターであった見城こうじ氏によるTwitterでの不定期連載?です。いつも興味深く拝読していたのですが、今回のは特に熱い記事でしたので、トゥギャらせていただきました。
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見城こうじ @KenjohKohji

#1 「アはアーケードのア」第8回『グロブダー』(1984年ナムコ)。近未来の戦闘競技バトリングを題材とした戦車戦ゲームです。『ゼビウス』『ドルアーガの塔』などで知られる遠藤雅伸さんがディレクションされた作品です。 ※内容に誤りがあったら、ご指摘いただければ幸いです。

2013-08-13 22:37:27
見城こうじ @KenjohKohji

#2 『グロブダー』は商業的にはあまり成功した作品ではないかもしれませんが、僕はこのゲームが大好きです。ゲームシステムがコンパクトに完結していて、作者のストイックでサディスティックとも言える独特のセンスが強く出ていて、そして他の何物にも似ていない。秀麗なゲームです。

2013-08-13 22:37:42
見城こうじ @KenjohKohji

#3 ステージ開始直後に速攻で敵を片づけていく瞬時の判断。残った敵との持久戦。敵を爆発に巻き込んで次々と誘爆させていく面白さと同時に自分自身も巻き込まれるリスク。『グロブダー』は頭から終わりまで常に緊張感を強いられる、実に地味で男臭いゲームでした。

2013-08-13 22:37:57
見城こうじ @KenjohKohji

#4 『グロブダー』は、機動力と攻撃力と防御力、その三つのバランスの取り方が独特でした。異様なまでの自機の機動性の低さと、飛び交うビームの目にも留まらぬ速さ、そしてその差をシールド機能や遮蔽物を上手く使う事でカバーするというところに個性的な面白さがありました。

2013-08-13 22:38:09
見城こうじ @KenjohKohji

#5 また、自機の移動と砲塔の操作はデジタルで、十字方向のキー入力および隣り合う2つの同時キー入力を使っての計8方向分の判定しかないのですが、砲頭操作に旋回の概念を持たせる事で16方向への射撃を実現しています。これが『グロブダー』最大の肝だと思います。

2013-08-13 22:38:20
見城こうじ @KenjohKohji

#6 昔のアクションシューティング系のゲームによくあったのですが、自機の移動と射撃方向の指定を同一の操作で兼ねる、かつ方向指定が45度刻みでしかできない、という仕組みの場合、射撃方向がどうしても定めにくくなりがちという欠点がありました。

2013-08-13 22:38:32
見城こうじ @KenjohKohji

#7 それが、『グロブダー』では22.5度刻みで細かく射撃方向が指定できるという事と、そもそも移動しながら攻撃するような攻略が前提になっていないという事から、移動と射撃方向の指定が同一操作である事の煩わしさをかなりの部分まで解消していたと言えます。

2013-08-13 22:38:43
見城こうじ @KenjohKohji

#8 これは当時としてはきわめて斬新だったと思います。ただ、これのおかげで非常に癖のある操作感になっていて、他の仕組み部分も含めて、相当とっつきの悪いゲームではありました。ですが、その企画意図が理解できていくとやり込みたくなるone and onlyの魅力もそこにはありました。

2013-08-13 22:38:56
見城こうじ @KenjohKohji

#9 『グロブダー』は当時のゲームセンターで100円3クレジットが標準の設定でした。3ゲーム分遊ぶ事ができるのです。そして、もう一つの特徴としてステージセレクト機能がありました。ステージ数は全99。そのどこからでも始める事ができたのも、このゲームの魅力の一つでした。

2013-08-13 22:39:07
見城こうじ @KenjohKohji

#10 スクロールの無い固定画面。敵は全6種類。1ステージ内の敵数は最大で9機。パワーアップアイテムの類は無し。障害物の属性は基本的には一種類。これだけで99ステージのバリエーションを作っていたのですから、実に淡々としたいぶし銀的構成でした。

2013-08-13 22:39:18
見城こうじ @KenjohKohji

#11 敵の中でも、プレイヤーのビームを察知して避ける、フロッサーというキャラクターの動きは秀逸でした。個人的にこの動きがとても好きで、自分が『ゼビウスアレンジメント』というゲームの開発を担当した際、同じ遠藤作品へのリスペクトでそのままの敵を登場させていただきました。

2013-08-13 22:39:30
見城こうじ @KenjohKohji

#12 『グロブダー』のプログラムは松浦公政という方が担当されています。松浦公政さんはこのゲームの他にも『クエスター』や『ギャラクシアン3』などにも参加し、時期的には僕の入社(1990年)とほぼ入れ替わりでナムコを退社されています。

2013-08-13 22:39:41
見城こうじ @KenjohKohji

#13 『グロブダー』プレイヤーの間で松浦公政さんの名はよく知られています。特定のステージで粘ってると“programmed by 松浦公政”と隠しメッセージが出現するためです。以前この話をご本人に聞いたら“入れたのは若気の至りだった”と仰ってました(そんな事ないと思いますが)。

2013-08-13 22:39:51
見城こうじ @KenjohKohji

#14 『グロブダー』をステージ1(BATTLING1)からプレイしていき、1クレジットで全99面をクリアするのは至難の業で、発売当初はとても不可能じゃないかと言われていました。それに挑戦してみようという人自体、最初はほとんどいなかった気がします。

2013-08-13 22:40:03
見城こうじ @KenjohKohji

#15 でも、最終的に数人のプレイヤーが何年もかかって『グロブダー』全面クリアを達成したと聞いて、ホントに大したものだと思いました。僕の知り合いでも「めぞん一刻」という、当時人気だった漫画のタイトルをスコアネームにした男が達成しています。

2013-08-13 22:40:14
見城こうじ @KenjohKohji

#16 当時、雑誌のハイスコアコーナーの集計を担当してた僕は彼に“全面クリアできるものか挑戦してみてよ”と焚きつけた事があったのですが、本当に達成した時はえらいビックリしました。その後、彼は若くして亡くなってしまったのですが、生きていれば今もゲームを続けていただろうと思います。

2013-08-13 22:40:31
見城こうじ @KenjohKohji

#17 テレビゲームというメディアの最大の特徴はインタラクティビティにあって、どんなによくできた作品でも受け手が関与しないと見る事すらできず、触ってもらわないと作品として完成しない。操作する人がいないゲームは、メインループで入力待ちしているだけのプログラムでしかありません。

2013-08-13 22:40:41
見城こうじ @KenjohKohji

#18 今回、この文章を書く前に『グロブダー』全面クリアのプレイを一通り見たのですが、そこには開発者の意思だけでなくプレイヤーの意思も生きています。当然ながら、そこに操作している熱量の高い人間がいて、『グロブダー』という優れたゲームの美しいプレイが成り立っています。

2013-08-13 22:40:53
見城こうじ @KenjohKohji

#19 このレベルまでプレイを極める人は全ユーザーのごくごく一部でしかありません。好事家と言っても良いと思います。そこまで興味を持つ人も少ないでしょう。まして、このゲームに限らず、そこまで大きなヒット作ではないゲームの究極プレイと言われても、いよいよ知る人ぞ知る、の世界です。

2013-08-13 22:41:05
見城こうじ @KenjohKohji

#20 でも、よく作者が死んでも作品が残ると言われますが、制作に関わった人間の意思とそれを享受する人間の意思が常に1セットで生き続けるテレビゲームというのは、とても稀有で面白いメディアだと思うのです。

2013-08-13 22:41:15
見城こうじ @KenjohKohji

#21 書物や映画等にしても受け手がいて成り立つ物ですが、それとも少し違う気がします。もしあえて近い例を思い浮かべるとしたら、野球や将棋や囲碁のルールを考えた人達は凄いが、その競技で常人を超える世界を見せてくれる人達もまた凄い、みたいな話が少しだけ似ているでしょうか。 終

2013-08-13 22:41:33