『風立ちぬ』の感想 「倫理」と「狂気」

個人的な『風立ちぬ』の感想です。 倫理観で批判する人はいるし、その見方は「正しい」とは思うのだけれど、それでもなお、「狂気の沙汰ほどもののあはれ」ってことが言いたかった。 後半は腐。
6
スパルタ @sparta_cc

『風立ちぬ』のレビューで参考になったのはやはりこの2つ。倫理的な面と、夢や美の面の両方を意識するために。 『風立ちぬ』を見て驚いたこと http://t.co/ocDigWZj79 その涙を疑う理由はない―『風立ちぬ』 http://t.co/DOheQMOqmd

2013-08-19 20:13:02
スパルタ @sparta_cc

映画「風立ちぬ」を批判する http://t.co/AC3OrDCYEW 紙屋高雪さんが倫理的な面から『風立ちぬ』を激烈に批判していて、その「読み」をする人も確実にいるだろうとは思ったけれど、正直僕はこれに納得しない。これはあまりに「政治と文学」に於いて政治を取り過ぎている。

2013-08-19 20:15:56
スパルタ @sparta_cc

その作品に求めるものが違う、というのはある。もし「反戦映画」として『風立ちぬ』を観るとすれば、確かに倫理的な批判は免れない。けれど、あの映画はそうではないと僕は思う。ジブリだからか、冒頭から二郎が良い人そうに見えるからか、純朴な「期待」を寄せてしまうのだけど、そうではないのだと。

2013-08-19 20:18:35
スパルタ @sparta_cc

『風立ちぬ』の二郎は、露骨に言えば「美しい」「飛行機」という「狂気」にとりつかれた「マッドサイエンティスト」なのであって、そいつに倫理的な期待を寄せる方が無理のある話だと思うのだ。それは「一機も戻ってきませんでした」という台詞に端的に表れている。「一人も」ではない、そのエゴこそ。

2013-08-19 20:20:40
スパルタ @sparta_cc

二郎の捉え方は様々あるけれど、僕は二郎とアイヒマンを重ねる見方を推したい。自分の目的について実に有能ではあるけれど、自分の仕事の最終的な結果を倫理的に省みることはない、状況に受け身なサラリーマンとして。それは、平静でありながら、そうであるが故に狂気でもある。そこの抉り出しを。

2013-08-19 20:25:16
スパルタ @sparta_cc

現実的に、ホロコーストに関与したアイヒマンも、原爆を作ったオッペンハイマーも、零戦を作った堀越二郎も、「反省」し、「断罪」されなければならない、その倫理観はとてもよく理解できる。そこを疑うつもりはないけれど、しかし『風立ちぬ』という作品を観て、その読みを適用するのはどうなのか。

2013-08-19 20:30:19
スパルタ @sparta_cc

いじめられる子供を助けたり、脚の折れた女性を助けたり、貧しい子供に食べ物を買い与えようとしたり、特高に追われたりする『風立ちぬ』の二郎は、先入観的に「立派な人」かもしれない。けれど、それでも「反省が足りない」と受け止められる、その描き方はむしろわかりやすいくらい意図的だと思う。

2013-08-19 20:33:58
スパルタ @sparta_cc

妹との約束を常に破り、取り付け騒ぎも横目で見る程度で、愛していることになっている結核の妻の横で煙草を吸う、その突っ込みどころ満載の倫理的に問題のある姿が「意図的に」描かれている、そのことを捉えたいと思うのだ。間違っても「美談」ではないことは、それらの描写からわかるはずなのだから。

2013-08-19 20:37:00
スパルタ @sparta_cc

倫理的に「正しくない」、異様なほどの二郎の「エゴ」そのもの、それを「美しい」と率直に繋げるつもりもない。けれども、その間違いが明らかである信念にすがりつく姿の、いわば「もののあはれ」を、『封神演義』の聞仲や『ひぐらしのなく頃に』の詩音と同様に、僕は『風立ちぬ』の二郎に感じるのだ。

2013-08-19 20:41:47
スパルタ @sparta_cc

そのような二郎の「狂気」の描写のために、菜穂子の人生を「利用した」描き方への批判は、正当だとは思う。そこは確かに受け止めつつも、しかしそれでもなお、僕はやはり『風立ちぬ』を評価したい、その思いもまた捨て切れないのです。

2013-08-19 20:44:37
スパルタ @sparta_cc

作品に倫理観は必要ない、などというつもりもない。そこもまた評価の対象となる。それは確かではあるけれど、政治的な目的を中心としていないとするならば(そして『風立ちぬ』は政治性を適当かつ適度に切り離していると思う)、政治性だけを批判することは、上手いやり方ではないのではないか、と。

2013-08-19 20:47:35
スパルタ @sparta_cc

『風立ちぬ』の二郎の仕事や人生を無批判に「肯定する」わけではもちろんない。「『風立ちぬ』を見て感動しました!」とか素朴に言う人には、その内実を批判的に聞きたくはある。お前あいつ明らかにおかしい人だろうと。しかし、しかしながら、まさに「狂気の沙汰ほど面白い」、その見方もしたいなと。

2013-08-19 20:52:01
スパルタ @sparta_cc

『風立ちぬ』については、フォローしている方々と別意見の部分も少なからずあると思う。ただ、僕は、歪んだ意味ではあるけれど、マッドサイエンティストとして、鬼畜眼鏡として、そして無関心な部分には無関心な糞サラリーマンとしての二郎の物語を、やはり評価したいなと思う方なのです。

2013-08-19 20:55:11
スパルタ @sparta_cc

しかし紙屋高雪さんが二郎と菜穂子の恋愛描写を評価しているのには驚いた。 http://t.co/l4ovqaSfmf 逆に僕は、軽井沢での傘が飛ぶシーンから紙飛行機を飛ばすシーンあたりは最も退屈だった。何を「普通の映画」みたいなことをしているんだと。もっと本庄と出張行って寝ろと。

2013-08-19 20:58:52
スパルタ @sparta_cc

『風立ちぬ』で本庄が「頭が煮えちまいそうだ」とか吐き捨てて二郎を散歩に誘うけど、あれって「二郎と繋がったままこんなドイツの街中歩くなんて、頭がフットーしそうだよおっっ」ってことですよね実によくわかります。

2013-08-19 21:03:42
スパルタ @sparta_cc

本庄「頭がフットーしそうだよおっっ」

2013-08-19 21:05:37
スパルタ @sparta_cc

『風立ちぬ』の本庄さんの台詞まとめ。 「東京壊滅だ(これで俺と二人っきりだ)」 「たまには(俺の)肉豆腐でも食ったらどうだ」 「俺たちは(性の解放が)20年は遅れてるんだ」 「(異国の地で二郎と同室で)頭が煮えちまいそうだ」 「(二郎の鬼畜眼鏡ぶりが)アバンギャルドだ」

2013-08-19 21:14:50
スパルタ @sparta_cc

肉豆腐(隠語)。コーヒー(隠語)。アヒル(隠語)。お前少しは寝ろ(誘惑)。

2013-08-19 21:19:00
スパルタ @sparta_cc

というか本当に『風立ちぬ』は「語らされる」なぁ…。なんだかんだ気になってしまうアイツ、みたいな作品ですよ。僕にとっては、だけれど。何か言わないと気が済まない。

2013-08-19 21:21:45
スパルタ @sparta_cc

わりと真面目に「政治」よりも「狂気」を取った『風立ちぬ』について僕からの評価したい思いを書き連ねたのに、一番RTされてるのが本庄さんの誘い台詞集なのはどういうことなんだぜ…? https://t.co/ulfGB2bOtb

2013-08-19 21:31:30
スパルタ @sparta_cc

「これが国産エンジンだーッ!」と叫ぶ黒川さんの下ネタを思いついたけどさすがに僕はそんなこと言いません。#言ってない

2013-08-19 21:41:18