汚染水の流出を恐れるあまりリスクが高まる悪循環

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Flying Zebra @f_zebra

今朝の読売新聞の社説のタイトルは「原発汚染水 原子力規制委は一層の関与を」である。規制委が関与を強めて具体的にどういう効果が期待できるのか。規制委がこれまでどのように「関与」してきたのか。社説の内容はともかく、このタイトルを付けた読売新聞の見識を疑う。

2013-08-23 18:35:00
Flying Zebra @f_zebra

事故を起こした原子炉を冷温停止に持ち込むことに成功してから2年後にして汚染水の環境漏えいという醜態、これが他国で起こっていれば「何と馬鹿な事を」と軽蔑するところ。つまり、日本は軽蔑されても仕方ない。さして難しくもない問題をここまで大きくした原因は何か。

2013-08-23 18:36:44
Flying Zebra @f_zebra

大量の液体を漏らさず管理するのは難しい。だから、有害な排液などは濃縮減容、その上で可能なら固化して管理するのが基本だ。とにかく管理する「量」を減らすことが大切だ。技術的には難しい事ではなく、蒸留などで分離して管理基準を下回る水を捨てればその分管理する量は減る。

2013-08-23 18:38:53
Flying Zebra @f_zebra

高価な装置で汚染水を浄化しても、浄化後の水を管理下に置いていれば管理すべき量は減らず、根本的な解決にはならない。地下水が流入して汚染水の量が増えるのであれば、流入を防ぐ措置も必要だ。汲み上げるのが最も効率が高いが、汲み上げた(汚染されていない)水は速やかに捨てなければ意味がない。

2013-08-23 18:40:39
Flying Zebra @f_zebra

誰が考えても明らかなシンプルな理屈だが、実際にはひたすらタンクを増設して汚染水を溜め込み続けることしかできず、案の定破綻したわけだ。事業者が望んでこんな馬鹿げた茶番を演じているわけではない。この事態に対し、規制委員会はこれまで何ら有効な行動をしていない。

2013-08-23 18:42:03
Flying Zebra @f_zebra

あまつさえ、トリチウム以外のほとんどの核種を除去できるALPSの稼働にすら色々難癖を付けて邪魔をする始末。本気で事態を改善する気があるとは思えない。さらに言えば、能力もない。その規制委が関与を強めたところで、何ができるというのか。

2013-08-23 18:43:43
Flying Zebra @f_zebra

トリチウムについては何度か書いている。当然管理は必要だが、セシウムやストロンチウムと言った金属元素核種と同様に扱うべきではない。トリチウム水は軽水と挙動が全く同じであり、つまり生物濃縮は起こり得ない。また、生体への影響も限定的だ。

2013-08-23 18:46:05
Flying Zebra @f_zebra

実効線量係数が経口摂取で4.2*10^-8 mSv/Bqと小さく、排水中の濃度限度に定められた60,000Bq/Lであれば、この濃度の水を毎日2L、1年間摂取したとして実効線量は1.8mSvだ。もちろん実際には海水を毎日2L飲んだり、海産物を毎日2kg食べたりする人はいない。

2013-08-23 18:47:15
Flying Zebra @f_zebra

なお、海洋での拡散・希釈については均等ではなく、水平方向に比べ鉛直方向には拡散しにくい。表層混合層が形成されることもあり、鉛直方向は数桁程度拡散係数が小さくなる。JAEAのモデルでは水平が1.3*10^4 m2/s、鉛直が3*10^-5 m2/sとなっている。

2013-08-23 18:50:32
Flying Zebra @f_zebra

海流が拡散に卓越する場所では比較的高濃度の水塊が遠方まで運ばれるが、それでも確実に拡散・希釈は進む。JAEAのLAMERコードによる太平洋におけるセシウム137の拡散シミュレーションは、実測ともよく合っている。濃度限度未満に希釈したトリチウムの放出をためらうべきではないと思う。

2013-08-23 18:52:28
Flying Zebra @f_zebra

そもそも、現在も汚染水が増え続けているのは冷却のためではない。冷却水については循環再利用している。それとは無関係に、流入する地下水を全て汚染水にしてしまっているのだ。その挙げ句、管理が行き届かずに本当の汚染水が漏えいしている。それだけを見れば、馬鹿の極みだ。

2013-08-23 18:54:44
Flying Zebra @f_zebra

ただの地下水のパイパス放出に地元の了解が必要なのかと思うが、東電の立場からすればもちろん無断で放出などできるはずがない。一方地元にしても、お伺いを立てられた以上はおいそれと了解するわけにはいかない。了解すれば、その瞬間に「加害者」として糾弾される立場になるからだ。

2013-08-23 18:56:40
Flying Zebra @f_zebra

誰も責任を取れないまま、誰が考えても不合理な「何もせず汚染水が増えるに任せる」という愚行がまかり通る。そこでリスクを総合的に判断し、より高いリスクを避けるために地下水や処理水の放出を「命令」することこそが、規制当局に求められる役割ではないのか。

2013-08-23 18:57:33
Flying Zebra @f_zebra

被規制者に対する合理的な指導もできず、結果的に地元にはより高いリスクをもたらしておきながら、自らの無策と無能を反省することもなく他人事のように事故評価のレベルを議論することしかできない。そんな規制当局に、何の存在意義があるというのだろうか。

2013-08-23 18:59:10