双天戦旗フェーズ0 戦況報告
出撃前、スカイウォードにて
@soutensenki その日は朝から城内が騒々しかった。 誰も彼も浮き足立ち、苛々する者、歓喜に顔色を染める者、焦りに足早になる者、その反応も様々だ。 濃い青色のマントを翻し、ハルトは目の先にある背中を追いかけていた。 「陛下」 「ん?」 二色の瞳がこちらを振り返る。
2013-08-28 22:03:03@soutensenki 二色の瞳がこちらを振り返る。 「隊の配置案が上がりましたので報告に」 「ああ、有難う」 彼に書類一式を手渡すと、歩きながら目を通し始めた。無理もない。今は移動時間ですら惜しいくらいだ。
2013-08-28 22:03:10@soutensenki 神託が下ったのは今朝の事だった。 長い長い戦争…彼と出会わなければ興味すら涌かなかった、歴史の一端についに終止符がうたれるのだ。 戦争の終結…つまり「聖杯の顕現」である。
2013-08-28 22:03:22@soutensenki 「…いよいよこれでお前の夢も叶うのかね?」 足もとに注意しつつ「友人」の声をかける。 「ああ…いや、まだまだ、先は長いさ」 彼の声に、目に、否が応にも気合いが入る。 当然だった。彼の目標は壮大であり、遠大であり、馬鹿馬鹿しいとまで感じるような物だったから
2013-08-28 22:03:45@soutensenki 「あとなんだっけ、お前の友達」 「…明鷹?」 「そうそう!アイツにも会えるかもしれないよな」 「お前なあ…」 「いいじゃないか。 もしも戦がこれで最後だっていうなら、再会だって一つの楽しみ方さ」
2013-08-28 22:03:57@soutensenki 彼と会うまで、何一つ面白い事などなかった。 世界の色を変え、音を聞かせ、匂いを与えたのは彼なのだ。 その彼の馬鹿馬鹿しいまでの願いの傍に沿う自分を、今はただ誇りに思えた。
2013-08-28 22:04:09@soutensenki 「御身に栄光あらん事を。」 呟き、そっとその背に剣を掲げる。 「そして、勝利を。」 はためく蒼と紅の旗のもと、円卓の平原に鬨の声が上がった。 その目にまだ見えぬ行く末にすら、心を躍らせて。
2013-08-28 22:04:19@soutensenki ついに聖杯の顕現が予知された。その知らせを聞いてそっと息を吐く。これで終わるのか。目を閉じた表情はいつも周囲に見せている微笑みを消して苦しそうに眉を下げている。おままごとのようにルールを守って続けられる戦争にも血は流れる。
2013-09-01 21:36:35@soutensenki 聖杯にさして興味などなかった。世界を塗り替えるなどと言われても困る。望むなら争いをなくして欲しいけれど、争いを無くす為に争うのも変な話。身支度を整えて、真っすぐに前を向くヒューバートの背中を見つめる。
2013-09-01 21:36:58@soutensenki もう何度この姿を目にしただろうか。その肩が今よりも細く薄い時からそばにいた。不思議と幼い頃でさえ彼を頼りないと思ったことはなかったけれど、それでも不安は募るから、信頼をおきながら何度も止めた。
2013-09-01 21:37:25@soutensenki 幼い頃は父の仕事場で、成長してからは癒し手として、争いによって傷ついたものを見てきた。その血の色がひどく恐ろしかった。
2013-09-01 21:37:40@soutensenki 深い空色のマントを手に取って歩み寄る。振り返らない肩にその青を優しく広げた。「今回ばかりは止めることもできませんね。……今までも、止められたことなんてありませんでしたけれど」独り言のように呟いて眉を下げる。「私も行きます」顔を上げて薄く笑みを浮かべた。
2013-09-01 21:37:56@soutensenki 「山岳地帯は戦闘だけでなく移動でも体力を消耗しやすい、少数で行くことになりますしあまり無謀なことはなさらないようにしてください。……もちろん、私も全力を尽くしますが」ヒューバートへとかけていた言葉を一度切り深く息を吸う。
2013-09-01 21:39:28@soutensenki ゆっくりと振り返り部下たちに微笑みかけた。「……貴方たちの、未来の為に全力を尽くしてください。そしてこの戦の後に、もう一度その手を握らせて欲しい……そう願います」この戦争に意味はあるの――幼い自分の声が頭に響く。その答えがこの先に待っている。
2013-09-01 21:40:05夜明け前のこと
@soutensenki @d_piko まだ夜も明けぬ頃。 トライアクスは訪れるであろう”最後の戦場”を、 陣を張りながら今か今かと待ち望んでいた。 士気は抜群。この手に聖杯を。奇跡の力を。 そして与えられるであろう名誉を。 彼らはそれを得られると確信していたのだ。 #双天戦旗
2013-08-29 19:47:54@soutensenki @d_piko そんな中、隊長であるヴォルクは陣の中人払いをし、 外の景色を見ながら自身の従兄弟である先帝―――"テオフィルス・F・ベルクヴァイン"に通信を飛ばしていた。 「よう、お前の方はどうだ?こっちは夜が明けたら開戦だ」 #双天戦旗
2013-08-29 19:49:16@soutensenki @d_piko 何時もとはまるで違う穏やかな口調で話しかけていた。 「これで全部終わりか、と思うとつまんねェがな」 と日常会話のように軽く告げる。 「なあテオ、お前もしも聖杯をその手にしたら何がしたい?」 #双天戦旗
2013-08-29 19:49:43@d_piko @soutensenki 彼の言葉にじっと聞き入る。 声量がある訳ではないが、不思議と聞き入ってしまう声だ。 生まれついてのものなのだろう。ヴォルクは彼のそんな所を尊敬していた。 #双旗戦旗
2013-08-30 20:43:03