【平成25年司法試験刑事訴訟法】伝聞法則において,裁判員裁判であることを証拠能力の有無の判断枠組みの中で考慮できるか

法学セミナー9月号の平成25年司法試験刑事訴訟法の緑大輔先生(北海道大学大学院法学研究科准教授)の解説につき,私が疑問に思った点をご本人に質問させていただきました。 丁寧にご回答くださったので,まとめておきます。
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弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

緑先生が法学セミナーに書いている今年の刑訴伝聞の解説には疑問がある。裁判員裁判であることを理由に「犯行を目撃することが可能であったことのみを要証事実として証拠採用することは、裁判員の判断を混乱させる恐れもあり、妥当ではない」ことを挙げ、Wの指示説明と作成者Pの供述で十分に(続く)

2013-09-07 11:14:58
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

Wが犯行を目撃できたことの立証は可能であるところから、別紙2の必要性自体疑われる可能性→実質的な要証事実に犯行状況が含まれていると考えざるを得ないと述べられている。しかし、裁判員裁判としての考慮がなぜ要証事実の判断に影響するのかがわからない。

2013-09-07 11:16:33
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

裁判員裁判で実況見分調書を出すべきか否かは公判前整理手続の中で整理すべき事柄であって、証拠能力の判断に影響を与えるのはおかしい。そして、そもそもWの指示説明に基づくP供述の証拠能力が認められるという前提も疑問である。P供述の正確性は321条3項だけでは担保できないはずだ。

2013-09-07 11:19:40
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

平成25年刑訴のような事例が実際の裁判員裁判であれば、Wを呼んで証人尋問し、そして犯行状況は再現せずに犯行現場との距離と周囲の状況だけがわかるような写真を証拠として提出するようにするのではないか。

2013-09-07 11:29:14
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

「裁判員に悪影響を与えるかもしれないから実況見分調書の証拠能力を認めない」って、かなり乱暴な議論だと思うのだが…

2013-09-07 11:30:41
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid 法学セミナー9月号の解説において、裁判員裁判であることを理由に別紙2の写真の要証事実を犯行状況にし、証拠能力否定という処理をされておられますよね。裁判員に対する影響は証拠能力ではなく、公判前整理手続の中で処理すべきことで、なぜ証拠能力に影響を与えるのでしょうか?

2013-09-07 11:42:23
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid また、別紙2のP供述について321条3項で証拠能力が認められる前提であるように読めますが、PはWの指示通りに見てみたら見えたと述べていて、Pがそう述べた点はいいとしても「Wの指示通りに見た」の部分の正確性は、321条3項では担保できないのではないのでしょうか?

2013-09-07 11:47:13
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid 以上、法学セミナー9月号を拝読して少し気になった点を述べてみました。突然のリプライで失礼いたしました。

2013-09-07 11:49:00
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki ご質問、拝見しました。以下、時間の許す限りでお答えします(2点目のご質問については、法セミ9月号よりは、別冊法セミの解説の方が紙幅があるので、そちらも見ていただければ幸いです)。

2013-09-07 11:53:09
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki ご質問1点目について、「公判前整理手続の中で処理すべきこと」という趣旨がよく分からないのですが、裁判所から立証趣旨の絞り込みなどを促せば足りるので、証拠能力の問題という趣旨でしょうか?

2013-09-07 11:55:10
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

ただ、伝聞法則の意義が正確な事実認定のために正確性に問題のある証拠能力を否定することにあるところ、裁判員裁判の場合に犯行再現を証拠として出すと裁判員に影響を与えて正確な事実認定ができなくなるおそれがある、というのなら何とか正当化できるのかもしれない。厳しい気はするが。

2013-09-07 11:55:38
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid ありがとうございます!裁判員裁判で不適切な証拠については、たとえば公判前整理手続で却下すればよいのであって、証拠能力の問題で処理すべきではない、という趣旨です。

2013-09-07 11:57:10
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

別冊法学セミナー読みたかったけど、司法研修所図書室にはなかったんだよな…

2013-09-07 11:57:55
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki 公判前整理手続において、「不適切」として却下するための判断枠組みが問題ですね。そのときに、裁判所が証拠採否裁量で切るのか、証拠能力で切るのかが問題になります。少なくとも、司法試験では解釈論を問われている以上、後者の俎上にのる可能性を意識する方がいいと考えました。

2013-09-07 11:58:51
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki 井垣さんのご理解は、裁判員マターの考慮は証拠採否裁量の中で対応すべきだという理解でしょう。それはありうる理解です。

2013-09-07 12:00:15
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid その問題意識はよく理解できるのですが、そもそも裁判員裁判と裁判官の裁判で、同じ証拠で証拠能力が認められたり否定されたりするという点についてはたして正当化できるのかが疑問に思っております。

2013-09-07 12:01:05
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki もちろん、証拠能力の枠組の中で、裁判員に独自な事実誤認のおそれを考慮する必要があるのか、議論がありうるところです(下級審の裁判例ではそれを否定したものがありますが、最高裁はこの点について明示的な判示はしたことがありません)。

2013-09-07 12:03:02
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki しかし、裁判員とて裁判体の一部として裁判所を構成し、他方で伝聞法則(そしてその背景にある法律的関連性)が、裁判所の事実誤認を防ぐ趣旨の法則である以上、裁判員参加の側面も拾い上げうるという理解で解説を書きました。

2013-09-07 12:05:26
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid なるほど、その理解は先ほど私もツイートしたところです。しかし、伝聞法則の趣旨は知覚記憶叙述に誤りの入りうる供述証拠を用いると事実認定を誤るおそれがあるから排斥することにあるところ、誤りが入り得ない供述証拠を伝聞法則で排除するのは伝聞法則の射程外ではありませんか。

2013-09-07 12:09:04
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki 同じ証拠で証拠能力が認められたり、否定されたりすることへについて、裁判体の構成次第でありうることだと私は感じています。例えば、ポリグラフ検査の証拠能力に関する最高裁決定は、陪審制か否かも考慮して証拠能力を判断していますね。

2013-09-07 12:09:12
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki 「誤りが入り得ない供述証拠」といえるか否か自体、本事例では問題なのではないでしょうか。被告人が完全黙秘で犯行態様をも争点とすることになります。別紙2の再現写真は、この点で誤りが入りうると解する可能性を考慮すべきだと私は思います。

2013-09-07 12:11:23
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid あ、すみません。私は別紙2の写真の証拠能力は、要証事実を目撃可能性としても証拠能力は排除されると考えているのですが、仮に証拠能力を認められたとしても裁判員裁判であることを理由に要証事実を犯行状況として証拠能力を否定することが理論的に正当化できるかということです。

2013-09-07 12:13:59
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki 後段部分は、先ほどポリグラフ検査の最高裁決定を援用した通り、裁判体の構成を考慮しうるというのが、私の回答になります。

2013-09-07 12:15:24
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@midorid その根拠は、正確な事実認定という観点から、伝聞法則の趣旨にはそぐわなくとも証拠能力を否定することが理論的に正当化できるということでしょうか?

2013-09-07 12:17:10
MIDORI Daisuke @midoridisc

@igaki ご質問2点目は、本当に指示どおり見たかどうか、その真摯性が問題になりうるというご趣旨でしょうか。そうであれば、321条3項で対応しうるという理解はありうるでしょう。もちろん、321条3項で対応しきれないという理解もありうるので、別冊法セミ解説ではその旨に触れました。

2013-09-07 12:18:52