日本帝国海軍駆逐艦の主砲/対空スペックについてざっくりと
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kapitan_black
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日本の甲型駆逐艦の主砲の変遷・・・は普通にものの本に書いてあるし、ちょいと対空砲としての駆逐艦の主砲について書いて見ようと思う。 睦月型までの艦隊型駆逐艦(一等駆逐艦)の主砲はせいぜいが防楯装備の単装砲、3年式45口径12cm砲x4基だった。
2013-09-08 12:46:49
水雷戦隊としての備砲としては中々ではあるけれど、海外の同種艦の発展具合を見据えて水雷兵装の大幅強化と水雷戦隊同士が敵主力艦に肉薄する前に互いに妨害しあう事を勘案して魚雷以外の火力も一気に強化される事になる。
2013-09-08 12:47:05
これが吹雪を筆頭とする特型駆逐艦。水雷兵装が6射線から9射線と1.5倍に、備砲は単装4基が連装3基6門と1.5倍で、しかも大型口径、長砲身化されていた。ヴィヴァ!
2013-09-08 12:47:31
3年式50口径12.7cmは平射砲としての性能は上々で10/分の射撃速度、16~18kmの射程距離を持ち、しかも砲塔形式(全周3.2mmの鋼板で覆った)で波浪から乗員は保護されていると言う優れ物。
2013-09-08 12:47:42
凌波性が良く、外洋で運用する特型駆逐艦でこの点は重要。但し初期の最大仰角は40°で、前述の通り完全な対艦砲だった。それ故に弾薬も「弾頭」と「装薬」が分離した形式(分離薬莢)で満足されている。
2013-09-08 12:48:02
分離薬莢は調達・補給・生産上有利で、装填速度(速射性)の維持の点でも有利なので平射砲としては何等問題が無い。(過大な弾頭重量による射撃速度低下の問題から戦艦の副砲は15.2cmから14cmに改められた程(扶桑型→日向型))
2013-09-08 12:48:15
ところが、航空機の脅威が増大してくると世界は対空火器の強化を模索し始める。日本も英国の駆逐艦主砲の両用砲化(平射/対空両用)検討の動きに合わせるようにして検討を始める。(因みに英国は高角砲化するとシルエットが増大する等の不利益を嫌ってこの計画を放棄する)
2013-09-08 12:48:48
そこで、吹雪型に続く特型駆逐艦第二グループでは通称B型砲塔が採用された。これは最大仰角を75°に引き上げて対空性能を付与したものだった。だが、後知恵で言わせてもらえばこの砲は様々な問題を抱えていた。
2013-09-08 12:49:05
まず、自重がA型の25tから32tに増大した。これは船殻をギリギリまで軽量化する事で小さな排水量に抑えていた特型駆逐艦にとって「船体強度」と「復元性」の両方の点で大問題となる。皆さんご存じのアレ(友○とか○四○○とか)の要因の一つである。
2013-09-08 12:49:18
また、照準窓を広げた結果強度の面でも問題が出たし、対空照準装置(高速で移動する目標を追従する射撃管制装置)が装備されていない為にロクに当たらない。(参照:http://t.co/uJluT1OvBQ)そして射撃速度も大幅に低下していた。
2013-09-08 12:49:29
分離薬莢は、まず弾頭を装填し、それを押し込み(又はその後ろに)装薬を置いて、これらを薬室に送り込んで閉鎖し、射撃を行う。つまり、砲に仰角をかけた状態でそれをやろうとすると弾頭が滑り落ちて来るので装填出来ない。
2013-09-08 12:49:47
つまり、弾を込めるには砲身を水平(又は装填用に定められた角度、例えば仰角5°)に戻してから弾を込めて、それから仰角をかけて空中の目標を指向する事になる。この結果発射速度は4発/分にまで低下した。
2013-09-08 12:49:58
この頃の日本の主力艦載対空砲と言えば89式40口径12.7cm連装高角砲。これは前述の3年式45口径12cm砲を高角砲化した10年式45口径12cm高角砲では不足するとされた性能を改善する目的で新規に設計されたもの。
2013-09-08 12:50:18
軽量化を目的に左右一体の単砲鞍方式を採用して防楯なしで14t、防楯付きで21tの重量の連装砲で、最大仰角90°、全角度装填可能で一体式の薬莢を最大14発/分もの速度で射撃できた。これは装填架に載せた弾を機械装填する半自動装填方式に依る処が大きい。
2013-09-08 12:50:31
同じく軽量化を目的に単肉自緊砲身に至ったのもこの砲からだった。(初期は従来通りの三層焼嵌、次いで内筒自緊二層を経て最終的に単肉自緊砲身に改良が進んだ)
2013-09-08 12:50:45
更に、この高角砲の素晴らしい点は外部に歯車が刻まれたユニークな外観の91式時限信管歯輪付改一を使用すると、別途射撃盤で調整した起爆タイミングに装填中に調整されるもので、手動で弾頭の信管を調整する従来の方式に比べて速射性を大幅に改善していた。
2013-09-08 12:51:04
これは目標が水平に近ければ10発/分の射撃速度を発揮できるものの、高仰角では一気に射撃速度が半減する従来の高角砲と一線を画するものだと言えた。また、弾頭の大型化で有効容積(弾片破壊有効体積)を12cm砲の50m3から76m3に改良していた。
2013-09-08 12:51:24
こうした高性能(但し発射速度は実用上14/分までは言えず、8/分程度だったと言われてるけど)の89式に比べ余りに性能が低く、10年式にも劣る命中精度では低速の複葉機にすら命中は覚束なかった。そこに来ての強度・重心問題である。
2013-09-08 12:51:38
そこでご存じの通り、特型の主砲はC型と呼ばれる最大仰角55°の砲塔に準じ変更され、軽量化と強度の改善が施されていた。(同時に船殻側の強度改善やバルジ追加に依る浮力や復元能力の改善)が行われた。有耶無耶のうちに駆逐艦の対空砲は見送られる事になる。
2013-09-08 12:51:57
一等駆逐艦、転じて甲型駆逐艦と呼ばれた「吹雪型」「初春型」「白露型」「朝潮型」「陽炎型」の全てである。(型が実際には細分上異なる場合もありますが、事実上)
2013-09-08 13:02:49
このままWW2に突入した結果、艦隊の、そして駆逐艦の対空火力の不足が強く叫ばれる様になる。また悪い事に主力艦の一部や対空砲装備小型艦の過半は89式では無く10年式を多数装備していた。
2013-09-08 13:03:07
10年式45口径12cm連装高角砲は、戦前は性能の不足を指摘されて生産数も非常に少なかった・・・だけれども戦争突入と共に大量に生産されて、様々な艦に装備されている。(海防艦や初期の重巡洋艦、改装前の加賀や赤城は最後まで)
2013-09-08 13:03:15
その理由は工程数が89式の半分以下で済み工業化が進まない日本にとって量産しやすい砲だった事。そして軽い!あまりこの点は気にされる場合が少ないと思うけれど、防楯を除いてたったの7t強。
2013-09-08 13:03:27
これは軽量の艦や高角砲を舷側装備する艦・・・空母にとっては補強強度も含めての影響があり赤城が戦中、最後まで12.7cmに換装しなかった理由の一つだと考えられる。(最大の理由は予算と89式の生産数不足だけど)
2013-09-08 13:03:38