孫泰蔵さん、「21世紀の国富論」を読んで考えたことのまとめ
情報通信技術分野でベンチャー企業の育成と経営に携わり、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストのひとりである原丈人氏は、これからの日本が新たな時代の潮流を生み出すリーダーシップをもてるようになるための最良の方法は、世界から優秀な人材を日本に集めることだと語る。
2010-10-05 08:30:13原丈人氏「世界経済の牽引役となる新しい基幹産業を育成していくための課題は、いかに優秀な人材を確保するかにあります。そのためには、国籍にこだわることなく、世界各地で新たな技術を発掘し、その担い手や、技術の根幹を理解する人物をわが国に招致し、また育成できなければなりません。」
2010-10-05 08:30:19原丈人氏「アメリカのシリコンバレーがもっている強みは、まさにこのような優秀な人材をつぎつぎと世界から引き寄せていることにあります。日本でも、そのような世界の技術者や起業家、そしてベンチャー企業にとって魅力的な環境を作っていく必要があるでしょう。」
2010-10-05 08:30:26そして原丈人氏は日本に優れた人材を集めていくための方策としていろいろなアイデアを提示しているが、本の最後で次のような提案をしている。それは税制の改革だ。
2010-10-05 08:30:34原丈人氏「2020年頃を目途に、日本が世界の『先進国』のなかでもっとも税率の低い国になるという目標、いわば国の政策です。法人税、個人所得税、住民税のどれかではなく、そのすべてがもっとも低い国を実現するのです。」
2010-10-05 08:30:39原丈人氏「税率を下げるということは税収を下げるということではありません。新しい産業が次々と生み出される状況を作ることで広く浅く税収を増やしていくのです。優れた技術をしっかり育てていくことができれば、歳出の削減と産業の育成という二つの目的を同時に実現していくことにつながります。」
2010-10-05 08:30:46税制は国のあり方、国民の行動に大きな影響を与えるもっとも重要な制度である、と聞いたことがある。たしかに、ある特定の活動に対して税金が安くなるもしくは無税になれば、その活動は大いに促進されるし、増税になれば抑制されるわけで、そこに国の価値観が大いに反映されているといえる。
2010-10-05 08:30:53なるほどー、やっぱり税制かー、などと考えていたとき、そういえば税制の大胆な改革、小さい政府、新しい産業の創発、という点で大前研一氏もほぼ同様のことを言っていることを思い出した。たまたま昨日と今日読んだ本で同じことを言っていたので、ふたつが僕の中でつながったのだ。
2010-10-05 08:30:59大前研一氏もユニクロの柳井正氏との共著「この国を出よ」(小学館)で、大胆な税制改革を提唱している。それは、①所得税・法人税の「全廃」、②そのかわり消費税20%(欧州のVAT(付加価値税)型)、③眠っている資産に課税する「資産課税」1%、というものだ。
2010-10-05 08:31:08案としては大前氏の論のほうがさらにドラスティックでおもしろいのだが、いずれにせよ、所得税や法人税を劇的に下げるという両氏の改革案の方向性は理にかなってると思う。税制を大胆にいじるというアイデアは普段政治に携わっていない私たちにはなかなかその発想がないが、非常におもしろい着目点だ。
2010-10-05 08:31:15企業の経営でも、限られた経営資源は収益力を増やすために最大限使用し、ランニングコストを徹底的に絞って利益を出し、新しい収益機会の創造に再投資ができるようにする、というのが基本中の基本だ。そうしていかないと縮小均衡に陥って成長がなくなり、他社に負け最終的にはつぶれてしまう。
2010-10-05 08:31:23国の経営もそういう意味ではまったく同様だ。収益力を増やし(企業を元気にするための減税)、ランニングコストを絞り(公共投資や政府支出の徹底的な削減)、新しい収益機会の創造への再投資(世界中の企業や人材の誘致、ベンチャー企業の育成)を行うのだ。税制改革はその大きな鍵となるだろう。
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