グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド #2

実況なし単体まとめ
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(親愛なる読者の皆さん:お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、現在、翻訳チームの一部がマンゴーをもぐなどの研修に入っており、更新頻度が一時的に少なめの進行をしております。マンゴーをもぐなどの研修が終了することにより,これらの不具合は解消されるでしょう。それはまだです)

2013-09-19 13:34:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(マンゴーをもぐなどの研修において、翻訳チームは何をしているのか?それはニンジャスレイヤーに関する行為であり、更新頻度に影響が出ている間もニンジャスレイヤーに関する行為である。彼らに安寧な類いのマンゴーもぎは決して許されはしないのだ。ご安心ください。以上です)

2013-09-19 13:40:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:ディテクティヴは鋭い推理によって、学園を私する校長のニンジャ、ファフニールを追い詰めるが、カラテに破れ殺害された。)

2013-09-19 14:09:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(寮を抜け出し、深夜の校内をそぞろ歩いた女生徒のキカ・ヤナエは、校長が棺を埋める不穏な光景を目の当たりにしてしまう。何かが暴かれようとしているのか……?)

2013-09-19 14:12:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】#2

2013-09-19 14:14:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スナリマヤ女学院高等部の掲げる理念は「知性により律する」であり、学園内のあちこちに、この文言のショドーをおさめた額縁と、創設者の肖像画を見る事ができる。校章のモチーフは古事記に由来する「一粒の梨」で、制服であるブレザーの胸にも神話的エンブレムが奥ゆかしくあしらわれている。 1

2013-09-19 14:34:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

神秘的でモデストな礼拝堂を中央に据えたこの全寮制の学園は、ネオサイタマのやや外れに位置しており、周囲には美しいバイオ松の森が広がり、小川のせせらぎや鳥たちのさえずりが爽やかな風に乗って届けられる。 2

2013-09-19 14:40:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

寮の朝は早い。起床は4時30分。「健康な暮らしが知性と美を育み、社会を教え導く担い手たらしめる。健康とは睡眠時間であり、これを疎かにすれば邪念や誘惑に屈する素地を生む」。校内の決まりごと一つ一つに、こうした説明文が常に添えられている。 3

2013-09-19 14:49:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

学園の清掃は生徒たちによって行われる。清掃業者のアウトソーシングは最小限だ。生徒にいらぬ労働をさせているという批判もあるが、学園側は「伝統に則った情操教育の一貫」と主張し、保護者の賛同を得ている。就学者の手で学び舎を掃除し、セイシンテキを高めるというのだ。 4

2013-09-19 15:03:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一斉に起床、海藻とコメを主体とする朝食を摂り、口々に文句を言いながらDIY清掃を行い、朝のショドーをしたのち、生徒たちは各々のカリキュラムに沿って組み立てられた授業の教室へバラバラに向かってゆく。各教科は成績ごとに10段階の序列がつけられ、試験のたびに再編成が行われる。 5

2013-09-19 15:09:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

かように苛酷な学園生活ではあるが、生徒たちは溌剌な若さと、気力体力、前途への期待を胸に、日々の暮らしに楽しみを見出し、お互いに笑いあい、憎み合う……。 6

2013-09-19 15:26:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いつにもましてボンヤリしていたけど、答えられるものだよね」ユマナは呆れ気味に言った。渡り廊下を二人は並んで歩く。二限目の音楽の授業に向かうのだ。「たまたまね」とキカは頷く。ユマナは苦笑した。「昨晩あんなで、風邪とか引いてないの?」「大丈夫」「ちゃんと覚えてる?」 7

2013-09-19 15:38:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キカの脳裏に深夜の無謀な探索行が蘇る。犬の息遣い、ライト、運ばれる棺、校長、傘……光る目。「多分ね」彼女は短く答えた。「何、多分て」「多分」渡り廊下の窓は大きい。雨や曇りばかりの日中の明かりを少しでも多く採ろうという努力だ。健康は美と知性に結実し……。「コンニチワ」前方で声。8

2013-09-19 15:53:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キカは立ち止まった。目の前に立ちはだかるように現れたのは、美しい黒髪と刺すような美貌の少女だった。「コンニチワ、キカ=サン。キカ・ヤナエ=サン。それから……そっちのあなたは……誰でもいいわ」「コンニチワ。ヤヨイ=サン」キカはヤヨイの攻撃的視線を見返す。ユマナは言葉に詰まった。 9

2013-09-19 16:05:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「元気そうでよかったわ、本当に」ヤヨイは言った。「……」「私の顔に何かついていて?」ヤヨイはキカの凝視を咎めた。「ヤヨイ=サン、どうしたんです?」「ヤヨイ=サン?」取り巻きめいた数人が加わった。ユマナは学年一のカチグミとされるヤヨイを前に、気圧されて困惑する他ない。 10

2013-09-19 16:18:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何でもないの」ヤヨイは取り巻き達に冷たく笑いかけた。そしてキカに近づき、囁いた。「顔色が悪いから心配になってしまって。どこか怪我でもしてるのかしら?って思ったの」言葉とは裏腹に、そのトーンには毒を注ぎ込むような悪意がこもっていた。「大丈夫?心配しているの。とても!」 11

2013-09-19 16:28:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大丈夫です」キカは答えた。「心配してくれてありがとう」「……」「困った事なんて、何もないです」二者はしばし見つめあった。「それはよかった」ヤヨイは笑い、取り巻きを連れて、キカ達とは反対の方向へ歩き去った。ユマナは困惑ぎみにその背中を見送った。「こんなに近くで見たのは初めて」12

2013-09-19 16:38:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「行こう」キカはユマナの手を引いた。ユマナは振り返り振り返り、興奮ぎみに言った。「キレイだけど、おっかないね!迫力がスゴイだったよ!」「そうだね」キカは抑揚の少ない声で同意し、足を早める。ユマナは食い下がった。「どこで知り合ったの?」「紹介してほしい?」 13

2013-09-19 16:49:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いいの?エート……」ユマナの表情は曇った。「私の名前、訊かれなかったし。やめておくよ」キカは足を止め、ユマナを見た。ユマナはぶつかりそうになった。キカは静かに言った。「そのほうがいいよ」 14

2013-09-19 16:56:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その後の授業においても、キカは専ら、昨晩の出来事に思いを巡らせていた。闇に蠢く姿、棺を埋める者たちの光景を、彼女はニューロンに繰り返し再生した。この学園には色々な秘密が隠れている。大きな秘密、小さな秘密。保護者は安心しきっている。規則が厳しければ厳しいほど、安心できる……。15

2013-09-19 17:20:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤナエ夫妻は彼女の為を思って、由緒正しいこの学園に彼女を送り出した。年老いた、人のよい夫妻だ。こうして学園に入ってみれば、様々な問題や欺瞞が見えてくる。だが、夫妻が自分を理由に悩んだり悲しむ事があれば、残念だ。ゆえにキカは、そうした秘密には極力関わりたくないと考えていた。16

2013-09-19 17:55:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

では、昨晩の胸騒ぎは何だろう?キカは自問した。すぐに指先に震えが来た。彼女は昨晩の自分の心の動きを、わけもなく衝き動かされたそのわけを、深く考える事はよそうと思った。江戸政府の税制の話が遠くで聞こえる。講義は第四限。放課後は……どうする。 17

2013-09-19 18:32:58