諸国珍談奇談　第一集

松崎貴之 @gelcyz

【諸国珍談奇談】西洋絵画の伝来。毎日新聞（横浜）明治20年9月1日付。長野県のある片田舎に「古来荒神を祭れるものなり」と伝わる祠があった。扉を開けると祟りがいうが文明開化のこの御時世、なんぞ僻事が起きようかと開けたらビックリ、「耶蘇磔殺の油絵」が出てきた。隠れキリシタンのものか。

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【諸国珍談奇談】「西郷南洲翁の肖像」毎日新聞（横浜）明治20年9月14日付。「油絵の技に精しき床次正精氏」に依頼し半身の肖像を作成。実弟西郷従道、黒田清隆が「眞影に寸分の相違なきを認むる旨を保証」する出来栄えで石版刷にしたという。残ってたりするのかしらん(・∀・)

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【諸国珍談奇談】ロシアの博物館にシベリアで発見された「大象の遺骨」が陳列されるという海外報を伝える明治21年11月9日付東京絵入新聞。なぜ極寒地に象が？という疑問に「温帯地に生息せし象が彼の有名な大洪水に遇うて此地に漂流し陸上に登り其寒に堪えずして死絶」したのではとの奇説を紹介。

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【諸国珍談奇談】明治23年5月8日『日本』「カタニーと云へる男あり　容貌魁偉身の丈け七尺［約2.1m］にして欧州中にも巨大なりとの聞えありしが此程以太利に於て死去したり　然るに同人は存命中早く已に羅馬なる生理博物館と特約し二千五百金にて其骸骨を売却したりと云ふ　安からぬ骸骨なり」

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【諸国珍談奇談】明治32年10月19日東京朝日新聞「河童の手」。「奥田子爵何地にて捕獲しけん河童の手首なりとて捕獲地村民連署の始末書を添へ坪井博士に寄す」。持込先は帝国大学の坪井正五郎博士か。

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【諸国珍談奇談】明治32年、「河童の手」の鑑定を依頼された坪井正五郎博士の返答を発見（11月27日読売）。残念ながら「兎の前脚」ですとしながらも、「開けゆく世ハおもしろや河童等のばけの皮をバ究理（きゅうり）にてむく」と書き添える。洒落のわかる御仁。

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【諸国珍談奇談】　明治32年10月19日　東京朝日新聞「犬神」。「千葉県御宿村浜辺に祀りし犬神あり台風波のため流出したるため村民五六十名隊伍を組んで犬の死体を捜索中」。

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【諸国珍談奇談】明治32年10月19日　東京朝日新聞　「怪獣」。「島根県青原村樺合谷の森林中に夜々牝牛の如き咆声を聞く一度咆哮せば犬猫牛馬怖れて声を発せず村人其足跡を認めたるのみ未だ何者たるを知るものなし」。

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【諸国珍談奇談】「犬姦事件（狐のお豊召喚せられん）」明治36年10月20日付『都新聞』。神戸在留のスウェーデン人「アルベルトホーマン」が「狐のお豊」という女性を「飼犬に与え之を姦せしめたり」と報じた三新聞をホーマン氏が訴えたという裁判が開廷。いやはや。

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【諸国珍談奇談】　「戦捷紀念珍菓」（明治38年8月18日　東京朝日新聞）。日露戦争の戦勝を記念して変わったお菓子が登場。「日本橋区通一丁目の塩瀬より売出せし沖の浪風一名凱菓の友は魚形機械の二種にして熱湯に投ずれば爆発して一種の風味を保ち夏季飲用に適すといふ」。熱湯に投ずれば爆発？

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【諸国珍談奇談】明治38年に日露戦勝記念に発売された「鹽瀬」の珍菓『浪風』。「熱湯に投ずれば爆発して一種の風味を保ち夏季飲用に適す」（東京朝日新聞）というのがどういうものか、解き明かす手がかりを発見（続）。

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【諸国珍談奇談】当時の雑誌に載った鹽瀬の広告に「戦捷紀念の珍菓」として『快報（一名海中汁粉）』なるものが登場。「バルチック艦隊を日本海へ追ひ込だ様にお湯呑の中へ打ち込み、砲門にあらぬ鉄瓶の口を向け熱湯郷艦隊を以て攻立攻立散々に掻き廻せば露艦は忽ち沈没して砲烟の如き餡に（続）」

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【諸国珍談奇談】「中より日章旗が現はれ露国の旗は海底に沈む大仕掛の快報、敵艦全滅して航海餡全何方も御餡心お汁粉に御座候ふ」。「熱湯郷艦隊」の活躍で『快報』は海の藻屑、「海中（懐中）汁粉」になり「航海餡全」「御餡心」という訳だ。『浪風』もこの手の菓子だった可能性がありそうだ。

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【諸国珍談奇談】明治41年5月11日・大阪毎日。名古屋の下前津動物苑（ﾏﾏ）の「猿猴館」。苑主曰くドイツでは獅子と虎の合の子を拵えるぐらいだから異種雑居ぐらいなんでもない。猿の群れに犬猫を入れ、兎を入れ、熊の子を入れてみた。あら不思議。意外にうまくやってる。珍景に大評判。

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【諸国珍談奇談】明治時代、東京美術学校にモデルを斡旋していたという「モデル婆さん」こと宮崎菊。明治41年8月14日都新聞の記事「春画屋の大検挙」にも登場。いわゆる春画ではなく男女二人のエロ写真（「新取組」「新二人」と称したそうだw）について、モデルを菊の手を経て借り入れたとある。

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【諸国珍談奇談】明治42年7月7月付の『九州日日新聞』に熊本の長洲町で起きた「人骨『壽楽丸』事件」なる事件が紹介されている。長崎で中国人に三十人分の人骨を売り込もうとし未遂に終わったという事件らしい。「壽楽丸」という薬らしき名前から察するに、人骨黒焼事件的なものだったのだろうか。

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【諸国珍談奇談】市区改正で深川から移転することになり、1909（明治42）年8月に墓地の発掘を始めた海福寺。8月に2体、9月に1体と次々に屍蝋を掘り当てる。最初の2体は当時にして約70年前、江戸時代の人物。9月に出たのは200年以上前の殿様。よほど屍蝋向きの土壌だったのか。

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【諸国珍談奇談】明治42年アフリカ探検中のセオドア・ルーズベルトに関する報道が面白い（ちなみに少年インディ・ジョーンズはこのときにセオドアに会ったとの設定だそう）。8月12日の九州日日には「ル氏珍獣を生捕る」（オカピか？）。11月7日の東京朝日には「象の爲に打殺されたりとの説」w

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【諸国珍談奇談】明治42年8月13日付の『九州日日新聞』の記事にオーストラリアには「陸にも住み能はぬが去ればとて水に入れば忽ち死ぬ」、陸にも水にも棲めない「奇妙寄体の珍獣」デインガリンガリンガンという獣がいるとあるのだが、これは一体何…？

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【諸国珍談奇談】明治43年2月11日『東京朝日新聞』。前年伊藤博文を暗殺した安重根。彼は公判で暗殺理由を閔妃殺害の首謀者である、韓国に対する逆賊である等と縷々述べ、続けて「日本皇帝に対しても大逆賊なり彼は先帝孝明天皇…」と口にするや裁判長が陳述中止を命じたという。孝明天皇暗殺説。

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【諸国珍談奇談】明治45年7月2日大阪時事新報。兵庫丹波の古市に「徴兵除（よけ）」のご利益があるとして大繁盛した稲荷がある。参詣者が引きも切らず、神主はおろか古市の村全体が潤った。とはいえ兵庫県庁がこうした気運を見逃すわけにもいかず、神主を追放、近頃は村も火が消えたようになった。

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【諸国珍談奇談】「生膽（いきぎも）を捧げたし／聖徳を慕ふの餘り」明治45年7月25日付『扶桑新聞』。明治天皇の様態悪化が報じられる中、平癒を祈り思い詰めた老人が余り勢い余って名古屋の警察に「生肝を捧げたい」と出頭。「今や隠居の身の上、この命は惜しくない」と涙を流され、警察も困る。

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【諸国珍談奇談】明治45年7月頃、岐阜のあたりでは大損こいた者が続出したため、投機的な養蜂業ブームがようやく下火に。そして大損こいた者たちが損を取り返そうと今度は養兎業に走ったらしい。

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【諸国珍談奇談】愛知で発行されていた『扶桑新聞』、明治45年7月当時の紙面に連載されていた読者からのお悩み相談室の名前は「煩悶引受所」。軽い内容の相談なんて持ちこんだら怒られそうだ。

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【諸国珍談奇談】大正2年6月16日大阪毎日新聞。ロンドンで開かれた日英博覧会を機にパリを訪れた日本の力士ご一行。髷が原因か、パリではなぜか女と間違われる。風呂に行けば「ここは男湯だ」と断られ、酒場にいけば口説かれる。仕方ないので日本人留学生に「男性証明書」を書いてもらい携行した。