元関脇竹乃節(@take_no_fushi )氏によるエースコンバット04考察
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大陸戦争勃発の原因は、AC04webにて仔細に説明されている。普通だったら、説明しなくてもいい。 「隕石が落ちたので戦争になりました」 これが、ファンタジーで済んでいた従来のゲームに於ける、戦争勃発の原因を説明するフレーズである。
2013-10-03 17:46:2904はそうはいかない。 隕石が落ちる前から、西の大国とそれ以外の国は冷戦(より半歩前に出ているか)状態にあり、それが隕石そのもの、ではなく、隕石落着によって生じた環境の変化によって、決定的にバランスを崩していく。
2013-10-03 17:50:29大国である、という理由を盾に、発生した難民を経済的な政争の道具として押し付けられた大国では、当然ながら世論に暴風が吹き荒れる。自分だって被災しているのに、彼らは自国の余力を削ぐために難民を押し付けているのだ。
2013-10-03 18:07:46かくして、大陸戦争は勃発する。ファンタジー的に言えば「ストーンヘンジの攻撃力を狙って侵攻してきた」という設定は、04には存在しない。戦争遂行のための有効な戦力として目を付けられた、というのが04的であり、現実的である。
2013-10-03 18:10:11冷静になってみれば、大陸戦争に於けるストーンヘンジの存在は、現実でいうならば「地の利」くらいのものであり、狙うというよりは活用するものである。 「地の利を狙って侵攻してきた」というのが、果たして物語として成立しうるのか。そうでないのが04的である。
2013-10-03 18:12:47大陸戦争勃発の原因は、ということで纏めると、 「従前から対立していた2つの勢力が、隕石落着をきっかけに発生した経済恐慌と難民問題という対立激化の口実を得て、ついに爆発した国民感情がストーンヘンジ占拠で国際世論を悪化させてでも戦争によって問題解決を図るという暴挙に出た」というところ
2013-10-03 18:17:15要約すると、戦争勃発の最大の原因は、ユリシーズでもストーンヘンジでもなく、 「経済恐慌と難民問題」 という、実に現実に転がっているに違いない生々しいものであったのだ。 経済恐慌と難民問題から始まるファンタジーがあってたまるか。これはもう、もうひとつの現実である。
2013-10-03 18:18:50もうひとつ、わたくしが04の演出の中で、最も生々しいと思っているものを上げる。 メガリス攻略戦のブリーフィングで、それは読み上げられる。 「必ず生き残れ。戦後には英雄が必要なのだ」 聞けば聞くほど、この言葉には身震いを禁じ得ない。
2013-10-03 18:21:07死んでほしくない、という感情からではない。戦後復興の国民感情のために、象徴的存在が必要だから、メビウス1は死ぬなと言われる。 ここではすでに、メビウス1を取り巻く世界はファンタジーではない。 ゲームが終わっても、彼らは戦後を耐えぬき、大陸復興に尽力して生きねばならないのだ。
2013-10-03 18:24:10ゲームの画面の向こうの人間が生きねばならないという事実を、我々は知って(想像して)しまう。 04とは、額縁に収められた絵画などではない。窓だ。 それを通して、画面の向こうに広がるもうひとつの現実に広がる事態を覗いてしまう、窓である。
2013-10-03 18:26:42生々しさの最後に挙げるべきは、慎重に選び抜かれたセリフ回しである。 わたくしはまるきり英語に不自由なのだが、どうも04の英語無線は、その声色やら台詞回しが「棒読み」らしいのだ。それは華々しさに欠けるという事でもある。 しかし思う。戦場の人間は、そんなに華々しく物を語るのだろうか?
2013-10-03 18:29:54戦場に放り込まれた人間たちが、そんな持って回った言い回しや、華々しいフレーズを振り回すとは到底思えない。 不思議なことに、英語がまるきりわからないわたくしにも、この喋り方がどんな趣なのか、ある程度伝わってしまうのだ。 そして残念なことに、5は04よりも確実に華々しく喋っている。
2013-10-03 18:32:26わたくしが5より04が好きな理由のひとつにそれがある。台詞回しに、切実さを感じるのだ。 このことは、サイドストーリーにおいてより徹底されている。 片渕須直氏の連載、「β運動の岸辺で」を見れば、その辺で氏がいかに苦戦したかが綴られている。
2013-10-03 18:34:12戦争において抑圧された記憶を、いくら手紙で伝えるとはいえ、そんなに華美な言語で伝えるとは到底思えない。 アゴタ・クリストフの「白い文体」を規範に組み上げられた彼の手紙は、戦争を語るのに最もふさわしい書き方で綴られているのである。抑圧された人間のうめき声にすら感じる。
2013-10-03 18:36:46「劇中の事態が現実に発生したら、こういう過程を得るに違いないだろう」という道筋を理路整然と辿っているあたりに、04の生々しさは集約されている。これは、「人の意識が存在する世界」をより強固に確立させているに違いない。
2013-10-03 18:39:15ここまで書いた所で、04には冷静に考えたとき、あまりにも嘘くさい部分が存在する。 登場人物(ここでは名前が出る人間だけに特定しない、窓の向こう側にいる人間すべてに関して記述する)のあきらめが、あまりにも悪すぎるのだ。大陸の端から端にいる人間、ほとんどすべてが。
2013-10-03 18:42:37だが冷静に考えると、ここまで書いた「あきらめの悪さ」以外の要素だけで04を再構築すると、「不運なきっかけで対立を加速させた2つの国家群が凄惨な争いを繰り広げました」という話になってしまう。 そんなの夢も希望もない。わたくしだって、そんなゲームはやりたくない。
2013-10-03 18:45:33「メビウス1の英雄譚」という部分があるじゃないか、と言う人もいるが、極論してしまうと、メビウス1は誰も幸せにしていない。メビウス1の軌跡は、ファンタジーとしては雄大だが、現実の舞台としては単なる軍の1戦果である。それだけでは不十分なのである。
2013-10-03 18:48:01でも、04の物語は不遇ではあるだろうが、不幸ではない。それは、不遇ななかで、登場人物が誰もあきらめていないからである。 彼らは無線の中で、「もうダメだ」などとは言わない。「もうダメだ」と言い出すのは、機体に火がついて操縦不能になってからだ。
2013-10-03 18:52:36サイドストーリーの少年もあきらめてはいない。(あきらめない、というとこは、片渕須直氏がいう「非業」の対岸にある「自己実現」とは少し違うことに注意する必要がある) 彼は身投げなどしない。家族の仇に銃を向け、突きつけるべき言葉を突きつける準備を進めていた。
2013-10-03 18:55:14それがいつの間にか、黄色中隊に家族の居心地を見いだしても、そのことで自分を無価値な裏切り者だとは断じない。 (ただし、少年の「あきらめの悪さ」は、「僕らの町を出て行け 侵略者め!」と言う言葉が最悪のタイミングで黄色の13へと投げかけられる不幸となって現れることに注意が必要である)
2013-10-03 18:59:36ついに少年は、酒場の娘と共に、一度は家族の居心地を見いだした黄色の13を追いかけ、彼の望外の望みであった「対等の敵との戦い」を見届けるに至る。 死という、一般的にとらえれば不幸そのものである13の結末の中に、僅かばかりの輝きを彼は見いだすのである。
2013-10-03 19:01:49普通に考えれば、ISAFに残された支配地域がノースポイント一国になった時点で、普通は降伏勧告を受諾するだろう。 エルジアはエルジアで、最終防衛線を破られ、首都決戦などをやらかす前に降伏するのが筋のはずだ。 それが、メガリスを発動させるという暴挙に出てまで、あきらめない。
2013-10-03 19:05:2404を「あきらめの悪さ」に着目してもう一度表現すると、 「人の叡智と欲望が衝突して、その結果叡智は押しつぶされるかもしれないけど、それでも叡智が存在することを信じて息抜き、戦い抜く人間たちの物語」 ということになる。 これ以上なくすばらしい人間讃歌が、ここに存在する。
2013-10-03 19:08:12