ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/10/08

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い短い物語です。 過去のまとめ http://togetter.com/id/laybacks
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瀬口 @an2a_09

#twnovel あなたの鍵で私を開いてからひとりの夜は寒くて仕方がない。あなたも同じ温度を感じているだろうか。それとも空っぽな私を放って今頃は他の誰かを温もりで満たしているのだろうか。窓を開いて月明かりを浴びて、幽かに見える星を数えながら眠る。あの月はきっとあなたも照らしてる。

2010-10-08 01:31:52
瀬口 @an2a_09

#twnovel 彼からのいつものメール。互いのメールアドレスは違う名前で登録してある。夫は今夜も出掛けようとする私に声をかけない。この関係を何と呼ぶのか。少なくとも昔夢見た理想の夫婦ではなかった。降り注ぐ雨から逃げるように路地裏に入り込み、私は自分が女であることを再確認する。

2010-10-08 01:40:41
ほちゃ @hocha32

【不条理な話:味】料理好きの妻は、美食の為なら何でもする。様々な教室に通い、食材を探す労を厭わない。妻を愛する私が、そんな妻の料理を残せる筈がない。今夜も膨大な量の料理を必死に腹に詰め込んだ。…夜中に彼女は呟く。「そろそろ美味しいフォアグラになったかしら」と。 #twnovel

2010-10-08 01:59:22
夢名 七志 @mumei7c

生物多様性の会議が開催されていた。多様性の保全と持続可能な利用、そして遺伝資源の公平な配分。特定生物への依存では、種の将来を絶つ事になる。危機的状況を容認する事は出来ない。と、神経系に擬態した寄生生物は人間からの脱却を決議した。知的根拠を失う人類には知らせずに。 #twnovel

2010-10-08 02:19:56
村山慶@12/3コミティアV56b、6/13セントールの悩み24巻 @hitonome

#twnovel 胸を寄せて出来る谷間、そこに満たされた塩水に浮かんでいるのが我々の住む世界だと、ある学者が発表した。地震の揺れと乳揺れの波動が同じなのだそうだ。誰も信じなかった。私も信じていない。朝に上げられ夕に伏せる天空の少女の顔は、どうみてもまだ第二次性徴前だったから。

2010-10-08 02:44:42
糖類の上 @tinouye

#twnovel 近隣国との領土問題に政府は頭を悩ませていた。問題は国境付近の島や岩礁が無人で放置されているために違いない。しかしどこも人が簡単に住める場所ではない。政府は同じく国際的に問題になっていた死刑を廃止し、遠島を復活させることにした。交代要員はいくらでもいるのだ。

2010-10-08 02:47:33
ぼろいねこ讃 @nekoboro

わたしの体は一つしかないけれど進む道はいくらでもある。しかし、わたしの体がひとつしかないせいで複数ある可能性の一つしか歩けない。この体では中心から放射状に広がっていくことはできそうもない。こんな入れ物は不自由だし不便で不毛で……ああ、でも、きみとおんなじだ。 #twnovel

2010-10-08 05:51:38
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 4時間並んで端末に座れた。国境警備員がくすんだ砂時計をモニターの正面に置く。私はそれを横にずらし、キーボードを全力で叩く。漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、キリル、知る限りの文字で呼びかける。父の名、母の名、友の名……時間切れだ。再び、列の最後尾につく。

2010-10-08 06:54:47
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 戦車や翼竜や首のない兵士がヒトの言葉を解するのか戸惑ったが、話しかけてみると普通に会話できた。地上には何の御用で行くのですか、と訊くまでもないことを訊くと、彼らは答えるまでもないことを答えた。「食糧調達」そしてギギギと笑った。昇降機の階数表示が地表に近づく。

2010-10-08 07:08:25
土曜日 @doyoubi

#twnovel 旦那は実直真面目なバス運転士。無口でサービス精神のかけらもないんだなあ。ちょっと落ち込んでいたときに見合い話が来たので乗ってしまい、はずみで結婚、失敗だったかなあ。百姓上がりで土地、不動産をたっぷり持っていたのも正直、魅力だった。でも、生活は楽しーくない。

2010-10-08 07:34:24
小夜啼き鳥 @sa4nakidori

真夜中寝言で怒っていたよと言われた。心がザラザラしたまま立つ台所。抜けない怠さは風邪のせいにして。言葉を発すると全てが棘を持ちそうだから、もう一度夢の中に戻ってやり直し。横たわると眩暈が抱きついてきた。左頬の口内炎。わかったよ、ちゃんと休むよ。と自分に言訳の朝。 #twnovel

2010-10-08 07:53:10
土岐 @t_ineka

ただの #twnovel なんだけどね、と嘯きながら今日もたくさんの「私」が呼びかける。「君は」「君の」「君と」「君へ」――どこにもいない架空の私から、どこにもいない架空の君へ、言葉は細波のように世界を満たし続けて消えてゆく。ああ、聞こえているよ、私。私がここで聞いている。

2010-10-08 08:47:25
Takao Rival @takao_rival

#twnovel 僕の彼女は可愛いけど少し変わっている。待ち合わせに現れた彼女の首元を見て僕は絶句した。「あ、このマフラー?可愛いでしょ。通りすがりのバイク屋さんで衝動買いしちゃった。てへっ」首にかけた金属の排気マフラーを嬉しげに撫でる彼女。ううむ。ま、可愛いからアリだな。うん。

2010-10-08 09:00:19
豆腐洗い猫@間瀬純子 @masejunko_fic

豆腐洗い猫とは 妖怪、零落神。born to 豆腐を洗う。豆腐洗い猫は山寺で修行に励んだ。お堂の畳には、秋の午後の陽が斜めに差していた。庭の柿の木の柿の実たちも陽に当たっている。カメラ付き位牌を持った檀家が集まり、修行する猫を撮影し、全世界全霊界に中継した。 #twnovel

2010-10-08 10:51:22
りょうま @notteco_ryouma

高校生だった時、ささいなことで彼女とけんかしてしまった。一日お互いに連絡なしだったが、2日目には気になって、自分のほうから電話した。「もしもし、○○ちゃん、やっぱ俺が悪かったよ。ゴメン」彼女は無言だった。やはりもうだめかなと思った瞬間「あの~娘は今入浴中ですが」 #twnovel

2010-10-08 11:58:05
雨之森散策 @t_amamori

「善人悪人を見分けるセンサーを発明した!」「やりましたね博士!」「善人はピコピコと鳴り悪人はブーブーと鳴る。君で試そう」「僕は善人です」『ブーブーブー』「…」「…博士で試して見て下さい」「うむ…」『ブーブーブー』「…たしか善人がブーブーだったな」「勘違いですね」 #twnovel

2010-10-08 12:02:24
雨之森散策 @t_amamori

「悪人だけをブタに変化させる薬を発明したぞ!」「やっちゃいましたか博士」「実験だ。飲んでみろ」「え?」「君は善人なんだろ?そう言ってたな」「でも…」「では君は悪人なのかね」「まず薬の安全性を確かめないと。博士のその姿も気になりますし」「いいからさっさと飲むブー」 #twnovel

2010-10-08 14:39:24
altana @altana

女は長々と僕に喚きたてた。喋るたびに果物の腐ったような臭いがして、時折唾が飛んできた。頬に流れる涙は涎のように粘性を持っているかのようだった。男が僕の肩を掴んで歩き出した。「放っておけ。この女は誰彼構わずこんな話ばかりをするんだ。」背中からまだ喚き声が聞こえる。 #twnovel

2010-10-08 15:50:45
ふぅん @huxun_m

#twnovel 針で僕を刺す彼女のことが好きだ。針は鋭く的確に痛みを造る。肉に刺さり骨を突く痛みは何物にも形容することができない。「刺されて突かれて感じるなんてドMなんじゃないの?」と彼女は言うが、彼女は自分の力加減に愛情が含まれていることに気付かない。

2010-10-08 16:41:10
@tsujiyosuke

持ってないはずの切符がなぜかポケットから出てきた。見たこともない駅から見たこともない駅への切符だった。誰かが滑り込ませたのか、それとも自分で買ったのを忘れているのか。しかしいつの日かその切符を使う日が来るのかも知れないと思って、私は再び切符をポケットにしまった。 #twnovel

2010-10-08 19:36:23
҉A҉ a.k.a ҉A҉ @4x1h170fh41vlvl

すーっと刷毛を横に動かせば、そこに青い川が流れ始める。幾つもの川の流れを描いていると、それらはしだいにくっつきどんどん太く大きくなる。まだ日光に熱さが残るこの時期に屋根を塗り替えてしまおうと思った。青一色に塗られた屋根の上は大海原。ほんの少し夏に戻った気がした。 #twnovel

2010-10-08 21:02:52
カリハンドル @karihandle

逃げることには自信がある。子供の頃 鬼ごっこで負けたことはない。制限さ れた時間の中で鬼の心理をよみ切る。簡単だ。しかしここでは勝手が違う。鬼はどこから来るのか?いつまで逃 げればいいのか?わからない。奴に舌を抜かれた後、鬼ごっこは始まった。俺以外皆鬼。 #twnovel

2010-10-08 21:05:43
でらしね140 @_deracinee140_

#twnovel 玲ちゃん結婚するんですって、と母が云った。隣人の玲は幼なじみ。窓ごしに糸電話をするほど仲がよかったが、クラスメイトにからかわれて話さなくなった。僕は古ぼけた糸電話を窓にぶら下げ、紙コップにつぶやいた。「おめでとう」向こう側の紙コップから、幼い恋がはらりと散った。

2010-10-08 21:21:02
すわぞ @suwazo

#twnovel 一人また一人と女が森に消えてゆく。誰も帰ってこない。森の奥深くでは一軒家ほどもあるひとつの巨大な卵が眠っている。女達は小さな体でそれぞれ卵に寄り添い、懸命に温めている。孵りたい、という声が女達には聞こえる。何が孵るのか知らぬまま、愛してる、と女達は囁く。

2010-10-08 21:37:46
@K_Ichida

#twnovel 目のない娘がお金を落とし、手のない子供が拾おうとして転んだ。耳のない男がそれを見て笑い、口のない女が三人を車で轢いた。通りかかったただの私が、その場を片付け、黙祷した。「それが遅刻した理由?」

2010-10-08 21:39:48