高レベル放射性廃棄物の地層処分には、実際のところどれだけリスクがあるのか

仮に今すぐ脱原発するとしても、避けては通れない放射性廃棄物の最終処分。その手段として世界中で採用されている「地層処分」について、今更ながら昔のツイートを掘り返してきてまとめてみました。
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別のまとめのコメント欄より。

プレート中央付近の安定した地盤とプレート境界付近の変動帯では安全性が違うというのは直感には訴えやすいのですが、地層処分のリスク評価としてどの程度インパクトのあるファクターなのでしょうか。アメリカは敢えて変動帯に位置するユッカマウンテンを選定しています。

同じくコメント欄より。

地下水についてですが、日本に限らず大深度地下では必ず間隙水は存在します。問題はあくまでも地下水がどれだけ移動するかという点です。日本でも、試験ボーリングで試験地の滞留水が化石海水と呼ばれる、数百万年以上移動することなく滞留している水であることが確認されているはずです。

同じく

いずれにせよ、日本でも海外でも将来にわたって漏洩した廃棄物が人間環境に達するリスクをゼロにすることは絶対にできませんし、ゼロリスクを目指すことは無意味です。地下には元々人間や地表の生命にとって有害な物質が大量に存在し、火山活動や地熱開発でそれらが地表に出てくるリスクは存在します。そうしたリスクとの比較をすることなく、意味のある議論ができるとは思えません。

翌日のセッションで消滅処理についての話を聞いたので、再処理技術と絡めて概要をご紹介。

Flying Zebra @f_zebra

原子力学会の核燃料サイクルのセッションもなかなか興味深かった。現場の第一線で働いている人たちの話を直接聞けるというのはやはり貴重な経験。一般公開セッションも色々あるんだから、メディアも取材してしっかり勉強すればいいのに。

2012-09-21 22:58:38
Flying Zebra @f_zebra

高レベル放射性廃棄物をどこまで管理すべきかという問題に対して、参照レベルを天然ウランと同程度の放射能になるまでとした場合、現在の技術のガラス固化体だと1万年程度管理しなければならないことになる。では、使用済み燃料をそのまま処分する直接処分ではどの程度になるのか。

2012-09-21 23:40:18
Flying Zebra @f_zebra

(続き)←使ってみた。 私も知らなかったのだが、同じ参照レベルだと管理期間は数十倍、数十万年の管理が必要となる。そしてフランスが志向し、日本も研究している次世代の再処理、つまり消滅処理(核種変換)を実用化できればこの管理期間は300年程度と、ずっと現実的になる。

2012-09-21 23:41:27
Flying Zebra @f_zebra

(続き)日本の再処理技術は60年以上の苦労に満ちた研究、数々の失敗を含む運転経験の積み重ねで、非核兵器保有国では唯一、現在もしっかりとしたキーテクノロジーを保有している。ひとたび手放してしまえば、再び同じラインに立つには数十年の時間がかかるだろう。

2012-09-21 23:42:38
Flying Zebra @f_zebra

(続き)再処理技術を放棄し、安直に使用済み燃料の発電所サイト内保管でごまかそうという意見も散見する。だが、問題を先送りして重大な決定を将来世代に丸投げし、しかも再処理のオプションは技術の放棄という愚策によって取り上げてしまうのが、はたして責任ある態度と言えるだろうか。

2012-09-21 23:44:21
Flying Zebra @f_zebra

(続き)技術はある程度は海外から導入することも可能だが、経験の積み重ねは買ってくる事はできない。一旦途切れてしまえば、またゼロからやり直しだ。そうしたことも理解せず、直接処分のデメリットについて真剣に検討することもなく、拙速に放棄を決めることのどこに正当性があるというのか。

2012-09-21 23:45:01
Flying Zebra @f_zebra

日本という国の主権者である我々国民は、時として将来の世代に大きな影響を与える決断を迫られる。結果的に誤った決断をしてしまったとしてても、その時点で得られる情報を精査し、熟慮した結果であれば仕方ないだろう。我々は今、十分に識り、熟慮を重ねたと言えるだろうか。

2012-09-21 23:57:35

まとめを公開した後、たまたまスウェーデンでの話題を見つけたのでご紹介。

Flying Zebra @f_zebra

放射性廃棄物の最終処分に関して、北欧の話題を少し紹介。スウェーデンでは処分場の候補地が決まっているが、政府の態度が煮え切らず、地元自治体や処分場関係者を心配させている。彼らが望むのは、お隣のフィンランドのような意思決定だ。

2013-10-15 12:44:23
Flying Zebra @f_zebra

フィンランド政府は2000年に処分場を建設する原則決定を下している。この決定を覆すのは法的にかなり困難であり、今後どのような政府が政権の座についてもこの決定は尊重される。国益を考慮した長期プロジェクトを進めるには、こうした一貫性を保証する仕組みが必要ということだ。

2013-10-15 12:46:55
Flying Zebra @f_zebra

スウェーデンの処分場建設予定地であるエストハンマル市の市長は会議で、国政での日々の政治的意思決定が地方を混乱させるべきではなく、一貫性が必要、と語っている。市長は政府に、処分場の建設許可と運転認可に対して「確実で迅速で、満足のいく意思決定」を求めている。

2013-10-15 12:50:53
Flying Zebra @f_zebra

スウェーデン核燃料廃棄物管理会社(SKB社)もこれに同調し、「長期的解決策はある。あとは政治的決定の問題であり、短期的な政治的考慮によって長期的な解決策を無駄にすべきではない」と述べている。

2013-10-15 12:54:19
Flying Zebra @f_zebra

うまくいっていない例として米国のユッカマウンテン、ドイツのゴアレーベンを挙げ、「利用可能な最良の技術があっても、それを政治的、社会的決定と組み合わせなければ何もできない」と指摘している。

2013-10-15 12:55:15
Flying Zebra @f_zebra

中央政府だけでなく、地元自治体もせっかく様々な検討を重ねて受入を決めても、あまり長く待たされると決定の経緯を知る人が少なくなり、一度は決着した議論が蒸し返されたりする。長期プロジェクトの方針が揺らぐのは、誰のためにもならない。

2013-10-15 12:55:48
Flying Zebra @f_zebra

地層処分については欧州でも技術的な課題が話題になることは少なく、政治的なプロセス、仕組みをどのようにするかで各国がそれぞれに苦労している。日本では残念ながら、技術についての理解がほとんど進んでいない。

2013-10-15 12:58:05
Flying Zebra @f_zebra

まずは、自分たちが解決すべき問題であることを自覚し、面倒な意思決定を安易に将来の世代に押しつけようとする態度を改めるべきだろう。暫定保管などというのは、問題の先送りに他ならない。そしてちゃんと考えるためには、しっかりと勉強して理解する努力も必要だろう。

2013-10-15 12:59:21