- hosidukuyo
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数多の砂粒を伴った冬の風を思わせる掠れた雑音めいた声に僕は目を瞑ったまま精神を揺蕩(たゆた)わせていた。 「聞いているの?」 「聞いている、と思う」 「なぜ―――私があなたに改めて声を掛けたか分かっている?この誰も来ない放課後に」 3
2013-10-20 00:42:55「いや、ぜんぜん」 「うそつき」 「そんなことはない、僕はてっきり―――」 「てっきり、何だと言うの?」 問われてその先を言うべきか迷った。 4
2013-10-20 00:45:48「―――てっきり、これ見よがしにその手の先を見せて人を驚かすことを楽しみにしている変わり者だと思っていたのさ」 が、言ってみることにした。 もしかしたら彼女を傷付けたり、怒らせたりしてしまうかもしれないが、僕も驚かされたのだから、何か言ってやりたい気分になっていたのだ。 5
2013-10-20 00:47:57「失礼ね」 初めてここでKの表情が人間らしい、オンナノコらしい変化を見せた。 「ごめんよ、そうじゃなかったら何なんだい?」 Kはピン、と人差し指を立てて見せた。 「あなたの考えと全く逆」 「それはつまり………?」 6
2013-10-20 00:48:46「私は、私のこの指先―――まあ『先』はないけど―――に興味、もっと気取って格好付けて勿体ぶってあたかも重々しく言うとなれば【カンキョウをソソル】と言うべきかしら?そう言う気持ちになってくれる人を待っていたのよ」 「それじゃあまるで僕が―――」 7
2013-10-20 00:50:42僕はその言葉を音として表現したつもりはなかった、が――― 「そうよ、そう言っているの」 ―――その指に、先の欠損た薬指に指差されているようだ。 ―――その唇は、僕の心を見透かしたように綻んでいた。 ―――その瞳は、何も読み取れないほどに澱んでいた。 9
2013-10-20 00:53:23「分かった」 僕は肯いて見せた。 「それで、結局、僕に何の用なんだい?」 「ええ、まずは私と言う人間を―――」 そう言いながら――― 「―――もっと知って欲しいと思ったの」 11
2013-10-20 00:55:30徐(おもむろ)に、左腰の辺りに両手を掛けるとスカートの留め金を外して、手を離した。 微かな衣擦れの音を道連れにしてKの足を囲う形でそれまで腰に纏わりついていたモノが落ちた。 12
2013-10-20 00:57:00その動きと、教室の床、女性徒の足元にスカートが落ちていると言う異状に目を取られて足元を暫く凝視した後、その結果を確かめるように僕は視線をゆっくりと上に移動させると。 13
2013-10-20 00:59:03セーラー服の裾からは白いキャミソールが広がっていて下着までは見えなかったが、それまで長めのスカートに隠されていた、その太ももが露わに――― 「それは………」 声が、擦れて、途絶えた。 まるで彼女のそれが感染(うつ)ってしまったかのように。 15
2013-10-20 01:01:52―――Kの脚、膝から上にはその大小新古を問わず無数の切り傷があった。 「―――もっと見たい?」 【第三話 完】 16
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