悪い男に騙される山城【解】『HAruna's waRD』序章一日目・二日目
むぅ。失敗だったわ。 日の暮れた敷地内を歩きながら、唸る。 3人に監視を頼んだまでは良かったものの、待ち合わせの時間も場所も決めていなかった。 提督寮にいなかったので、当ても無く捜すしかない。 ん。 艦載機の整備庫のガラスの向こうに、山城さんの姿を見付けた。立ち止まる。
2013-10-27 01:32:04少し考えてから、爪先をそっちに向ける。 自分のするべき事を1つずつ済ましていこう。 軽く深呼吸してから、大きな鉄の扉を横に引く。 中で布にオイルを染み込ませていた山城さんが顔を上げ、私と目が合う。一瞬のきょとんとした顔の後に、すぐに笑顔を浮かべてみせた。
2013-10-27 01:35:02こんばんわ山城さん。戦闘の後始末かしら? ああ、私はちょっと人探しをしてたの。 ううん、もういいんです。 うん、ありがとう。 はぁ、ここって結構冷えるんですね。 私だったらここで作業してたらすぐ風邪引いてしまいそうです。
2013-10-27 01:38:08…ねぇ、タメ語でお話しない? くすっ、もう知り合って結構な時間経つんだしさ。 私はもっと山城さんと仲良くなりたいかな。ダメ? うん、よろしくね山城。 これからも戦艦同士頑張ろうね!
2013-10-27 01:41:20山城さ…山城と別れの挨拶を交わし、手を振りながら整備庫を後にする。 うん、仲良くなれた。気分もいいわ。 特に変わった様子は見られなかったし、安心する。
2013-10-27 01:44:52は、はいっ! 道…ですか。 急に声を掛けられ、驚いて声のした方向に顔を向ける。外灯の明かりの下から、背筋の整った男性が帽子の唾に手を掛けつつ現れる。 厳粛そうな眼差しと口元から目が離せずに、ついこっちも姿勢を正してしまう。
2013-10-27 01:48:07@harunas_ward いやぁ、恥ずかしいながら外地にずっといたものだから内地の鎮守府の道筋を忘れてしまってね・・・我ながら情けない・・・(苦笑
2013-10-27 01:52:57@h_nanashi こ、これは失礼しました! 情けなくなんてありません、お勤めお疲れ様です! 私、高速戦艦の榛名と申します! ご案内致しますので、行き先を教えて頂けますでしょうか!
2013-10-27 01:55:55@harunas_ward はっはっは・・・すまないねぇ・・・とりあえず鎮守府司令のところ・・・いや、君の提督のところに先に行くとしようか。案内していただけるか??
2013-10-27 01:57:44@harunas_ward ああ、すまない・・・それと、別にかしこまらなくていい、私はそういうのは嫌いなんだ・・・(歩き始め
2013-10-27 02:02:56少し肩の力を抜く。大きな山の如く厳かでありながら、静かな湖畔のように優しさも持った声が、夜風と同じく耳に心地良い。 建物から離れる直前に横目でガラスの中を覗き見る。山城が日向と楽しそうに笑い合っていた。
2013-10-27 02:09:19@harunas_ward ・・・君が、覚えているとは思えんがね・・・君の提督ならば知っているのではないかな?
2013-10-27 02:16:51@h_nanashi 覚えは…無いですね。申し訳ありません。 提督が、ですか。お言葉ですが、我が艦隊の提督はここに着任してからそんなに長くはありません。他の提督と他の艦娘と間違っていたりはしていないでしょうか。
2013-10-27 02:19:58暗い道を並んで歩く。規則正しい足音を立てる隣の男性を見上げる。 遠い昔。そう言った。 小さい頃に会った事があるのだろうか。 でもどうして、悲しそうな瞳を見せたのだろう。
2013-10-27 02:29:20沈黙が続く。私の返答が気分を害したのだろうか。 ちらちらと横顔を覗くが、まっすぐ前を見据える瞳からは何も伺えない。 遠くで犬の遠吠えが聴こえる。 月が雲の隙間から顔を出す。
2013-10-27 02:34:32やがて、無言のまま提督寮に着く。部屋の番号を伝えると、手短に礼だけを言われ、ここまででいいと私の背を大きな手で押す。 エレベーターが閉じるまで目は合ったままだったけども、最後まで言葉の真意を読み取る事はできなかった。 いつか聞かせてくれるのだろうか。踵を返し、提督寮に背を向ける。
2013-10-27 02:53:54