ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/10/12
「そろそろレンタル期間が終了しますが」と連絡があった。「出来れば延長か再レンタルをお願いしたいのですが」だってこんなに楽しいの初めてだし,と思っていたのだが「申し訳ありません、該当のモノが生理的に無理と申しておりまして」レンタル友人にも嫌われるなんて。 #twnovel
2010-10-12 00:04:06空き部屋に放置されたテレビの画面から黒髪がはらりと零れ落ちた。埃が舞う。長い爪がささくれた古畳を引っ掻き、細身の躰が吐き出されてくる。ただいま。おかえり。遅かったね。残業だったの。なにか食べる? そうね。ありがとう。女は一人芝居を続ける。月だけがそれを見ている。 #twnovel
2010-10-12 02:49:59何か重要な分岐点で、いつも信号機のイメージが浮かぶ。赤信号だったり、青だったり、黄色だったり。信号のイメージに従うと、なぜかうまく行く。だからその信号に従って来けど、こんだ中華料理屋で正面に相席の女性が座った時、生まれて初めて赤青黄の信号が一斉に点滅し始めた。 #twnovel
2010-10-12 11:08:39#twnovel 街を歩いていると、富豪が札束を配っていた。曰く、終末の時は近い。自らの罪を洗い流し天国に近づくため、財を分け与えているのだという。しかし受け取ろうとすると書面にサインを求められた。何でと聞くと富豪曰く、終末が来なかった時は年利は0.25%で返却してくれ。という。
2010-10-12 11:42:50#twnovel ギターの練習用に使っているアンプの調子が悪いので、とりあえず中を開けてみることにした。するとアンプの中には、しゃがんで喉をおさえているおっさんが一人。どうしたのかと問うと「最近季節の変わり目で、喉がいがらっぽくていけません」という。のど飴をあげてアンプを閉じた。
2010-10-12 11:53:33蓋を開けて中を見てまた蓋を閉じる作業を繰り返している。その日いくつ目かの箱を開けると箱の中で箱を開けては覗く小人がいる。おかしなこともあるものだと見ていると何やら妙な気配であるので慌てて蓋をする。何やら背後の天井から視線らしきものを感じた気がしなくもないのだが。 #twnovel
2010-10-12 12:03:58#twnovel 冷凍睡眠から目覚めた男は、人類が核戦争で滅んだ事を知った。全財産注ぎ込んでシェルター作ったのは正しかったな、と男は思った。数世紀が経過して、もう外に危険は無い。だが男は気付かなかった。溶解した南極の氷によって水位が上昇し、シェルターの出口が水深50mにある事を。
2010-10-12 12:22:22#twnovel 知能を持つアンドロイドと結婚できることになった。当然出生率低下が危惧される。しかしアンドロイドはヒトの本能として子どもを欲しがるようプログラムされていた。子どもアンドロイドもあるが成長の喜びがないと不評だ。結果、体外受精や代理出産が増え、出生率は向上した。
2010-10-12 12:43:34#twnovel リストラをした。会社が俺を含む役員のミスで傾いたからだ。だが心は痛まない。使える人間は残す。奴らの自己責任だ。退職金払うだけ感謝しろ。帰宅すると、部屋には銃を持った女。「神のミスでこの世が危機です。あなたをリストラします。退職手当はあの世で受けとれます。」
2010-10-12 13:42:19年老いた犬はいつもの様に裏山から下る運河を散歩していると子供達が亀を虐めているのに出会しました。「止めなさい、手も足も出ない亀を弄ぶのは。私が身代わりだ。」彼らは首を残して犬を埋めました。以来そこでは大きな土砂崩れが度々起こり多くの村人が生き埋めになったという。 #twnovel
2010-10-12 13:58:40「いらっしゃいませ」ドアベルの音に顔を上げて、入ってきた客の顔に驚いた。早朝のこの時間、彼は犬の散歩で外を通るのが常だったのに、一人で来店とはどうしたことか。僕の疑問は顔に出ていたのだろう、案内した座席に腰を下ろした彼は「入院してるんだ」と寂しそうに笑った。 #twnovel
2010-10-12 15:02:59近くの神社が急に集客に力を入れ始め、巫女のバイトまで雇うようになった。その結果、参拝客は増えたが、迷惑な事に巫女目当ての客が騒いだりゴミを捨てたりする。人は増えても品位が下がったら元も子もない。何より困るのは賽銭やおみくじのやり過ぎで私の財布がもたない事である。 #twnovel
2010-10-12 15:05:12自宅が怖い。帰りたくない。夢にまで見たマイホーム。モデルルームではあんなに素晴らしいと思ったのに…今夜もまた恐怖の時間がやって来る。妻「早くリビングにいらっしゃいよ」やめてくれ!早くカーテンを閉めろ!タワーマンションに住むまで高所恐怖症だなんて知らなかったんだ… #twnovel
2010-10-12 18:05:41「編集長、婚活女子のインタビュー記事です」「どれ」『そうですね。私ももう三十代ですから、十代、二十代の頃とはやはり好みも変わってきていて、今ではロースよりヒレのほうが好きですね。京都の某店ではソースにすり胡麻を混ぜるんですけど――』「おい。これトンカツ女子だろ」 #twnovel
2010-10-12 19:08:13#twnovel 目が不自由なひとを手助けする。犯罪者を捕まえる。留守宅の安全を守る。努めを果たし誇らしげなレトリバーやシェパードたち。寝そべって見ていた僕は、座りなおして訊ねた。「僕も何か、お役に立てませんか」。人びとは笑顔で答える。いいんですよ、猫さんは。そのまま、そのまま。
2010-10-12 19:51:46#twnovel 通販で購入した栽培セットが届いた。鉢と種と赤ん坊。種を撒き水をやる。芽が出る。幼女がにかっと笑った。緑の葉が広がる。少女がはしゃいで踊った。小さな蕾が花開く。美しい女性が艶やかに微笑んだ。そしていつしか花は萎れ葉は変色した。老婆はさいごに私の頭を撫でてくれた。
2010-10-12 20:16:40#twnovel N君が列車で席に座ると、横に座っている小柄なOLが、こちらにしきりと寄っかかって来る。悪い気もせずに、乗換駅までじっとしていた。乗換駅で少し心残りを感じながら列車を降りた。寄り掛かられていた部分に、べったりとコールタールのような粘つく黒い液がスーツに付いていた。
2010-10-12 23:01:40