貿易から得るもの

市場を開くことは良いことか? http://d.hatena.ne.jp/tkshhysh/20131008/1381242545 上のエントリーの下の方にリンクが張られたPDF(Chambers and Hayashi(2013))に関する質疑応答。
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Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

ところで林先生の貿易自由化の論文は不可能性定理の例に漏れず選好のドメインDが超広い場合の社会厚生と自由化との関係についての議論ですよね。定理一はD=全ての選好のパターン、定理二はDが"richness"を見たす場合。が、実際には一つの選好プロファイルが実現してるわけですよね。

2013-11-14 14:24:11
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

例えば「現に実現してる選好プロファイルを点識別して貿易自由化の反実仮想下の利得/損失の分布を見てどうするか決めよう」としている政策意思決定者がいたとしてこの論文の結果はその人にどのようなメッセージを与えるんでしょうか?

2013-11-14 14:24:37
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

一つあるとすれば「厚生の計算に必要な選好プロファイルの点識別は実際にはかなり難しい。全ての選好プロファイルについて貿易自由化が利得をもたらすわけではないことが示された以上注意すべき」でしょうか。ただこれは相当な不確実性に直面した意思決定者を想定してますね。

2013-11-14 14:25:51
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

実態としてはその中間、選好プロファイルが集合識別できて特定のDには収まるだろうと考えている意思決定者がいる、という感じでしょうか。その場合、彼を助けうる知見があるとすれば「選好の空間のうち全員にとって得な貿易自由化がありえる部分空間の特徴付けである」といっていいでしょうか?

2013-11-14 14:27:58
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

ただ、最後の場合についても現に測定して手元にもってきた特定のD内の各選好プロファイルに対して反実仮想分析を施し、利得/損失のバウンドをとる、というのではだめなのでしょうか?

2013-11-14 14:28:29
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

昨今のエコノメもそういう「推定すべきパラメータが選好の分布みたいな複雑な対象でしかも集合識別しかできない不確実な状況下でどうやって政策に順序を割り振ればいいいだろうか?」というようなことを考え始めたところかと思います。例えばハーバードのhttp://t.co/VPs5ZnlVlR

2013-11-14 14:47:25
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

↓みたいな論文といわゆる社会選択理論的な話との最大の違いは「現に実現している世界についての情報がデータとして手に入る」というところから話がスタートするところと言ってよいのかな。そのために「ありうる全ての選好ドメイン上に適用されるルール」とは異なる方向に議論が進んでいく。

2013-11-14 14:56:37
Takashi Hayashi @tkshhysh

@mixingale 結語にもありますが,「選好プロファイルを所与として」そのもとで誰も損をしないような貿易自由化の経路が存在することは十分許容できます.本論文では明示的に扱えませんでしたが,やはりmanipulabilityに関わってくることだと理解しています.

2013-11-14 15:16:37
Takashi Hayashi @tkshhysh

@mixingale 明示的に扱えた範囲内で言うと,独立性公理はまだ貿易対象になっていない財についての虚偽の選好の申告によって操作されないこととを意味します.これが「分権的」な貿易自由化プロセスにおいて欠くべからざるものですが,むしろ不可能性の根源はこちらにあります.

2013-11-14 15:26:25
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

@tkshhysh 不可能性の根源はこちらにあります<ぼくは「選好を識別すればいい」と書きましたが真の選好を知るためにはmanipulationに耐性あるSCFが必要で、その要請の下ではDをかなり絞っても不可能性が成立するだろう、という理解でよいのでしょうか。

2013-11-14 15:38:12
Takashi Hayashi @tkshhysh

@mixingale ただし個人的には,これは頑健性の要請としてはそれでも弱い方だと思っています.というのも貿易対象の財についての選好は既知扱いですので.というわけで,不可能性で出てくる「独裁者」も全選好プロファイルにおいて同じである必要がない,ということになります.

2013-11-14 15:38:14
Takashi Hayashi @tkshhysh

@mixingale そうです.ここはもっと説明すべきでしたが,実際に証明で使ったdomain constructionはかなり狭いものと自分では思ってます.まあこれはempiricalな問題なのでなんとも言えませんが.

2013-11-14 15:40:16
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

@tkshhysh なるほど、読者がちゃんと証明読めという話ではありますが、独立性公理が「不可能性の根源である」理由の直感的説明と、それと絡めてDを相当絞っても不可能性は成立するだろうという憶測に関するできればフォーマルな議論があれば意義がもっと理解しやすくなるかと思いました。

2013-11-14 15:46:40

検討は続く

Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

蒸し返すと実証家としてはやっぱりhttps://t.co/wMfikSv4rEを容易にする特徴付けがあるとありあがたいんですよね。例えばDは集合として識別できててH0「∀d∈DでHが成立している」を検定したいとして1) 各点dでHが成立しているか否かの確認の計算が容易な数学的表現

2013-11-17 04:50:57
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

2)∀d∈DでHを確認せずに済む方法:例えば「B(d)⊂DでHを棄却するならdでもHを棄却する」とかいう性質があればdで棄却しなければB(d)内のどの点でも棄却しないのでdだけチェックすればいいという話になって検定が容易になる。まあこの辺りは実証家の方が自前で頑張るべきかな。

2013-11-17 04:55:21
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

ここでHというのは例えば「(現状がTだとして)φ_i(d,T')>_iφ_i(d,T), ∀iとなるT'が少なくとも一つ存在する」とかそういう条件。

2013-11-17 05:05:51
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

理論の公理化という作業がなんのためにあるのかについて理論家と実証家で意見はわかれるだろうけど、僕は貿易論文の共著者のChambersがhttp://t.co/d1QeTgHeJpで書いてるように理論の経験的含意を抽出してデータと付きあわせて頑健なテストをするためだと考えてしまう。

2013-11-17 05:11:06
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

↓の論文AER近刊になってた。RT @AEAjournals: AER Preview: The Axiomatic Structure of Empirical Content... http://t.co/TGf1n3MtfU

2013-11-17 05:14:12
Kohei Kawaguchi=Sunada @mixingale

↓では「理論の公理化」「理論の...テスト」と書いちゃったけど前者は「SCFの公理化」「Hの...テスト」なのでちょっと咬み合わない文章になってしまっている。SCFの性質をテストしてるわけではないので。

2013-11-17 07:38:16