杉江松恋氏@from41tohomaniaの 広瀬和生著『談志の十八番 必聴!名演・名盤ガイド』評

書評家・杉江松恋さんの光文社新書『談志の十八番 必聴!名演・名盤ガイド』評。
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杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

仕事の合間に広瀬和生『談志の十八番 必聴! 名演・名盤ガイド 』(光文社新書)を読了。談志の10演目について、1)演者にとっての持ちネタの意味合い、2)演じ方の変遷を述べた上で、3)現存するソフトを列挙した上でお薦めを挙げる。(続く)

2013-11-18 17:54:53
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)また、付録として4)ライバルである志ん朝、圓楽、小三治についても同様にソフトがあれば挙げ、談志との比較の上でお薦めを記してある。さらに十八番とするために残りの8演目については4通りの選択を挙げ、それぞれについて同様の考察を述べている(4)にあたる付録はなし)。

2013-11-18 17:57:33
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)10演目の選択については10番目の「文七元結」以外はほぼ異論が出ないのではないか。私も目次を見たときは違和感を覚えたのだが、それについても選択の意味がきちんと述べられている。ないものねだりはしても仕方がなく、九割の談志ファンはこれに納得するはずだ。

2013-11-18 18:00:07
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)また、「伝統を現代に」「業の肯定」「非常識の肯定」「イリュージョン」「江戸の風」といった談志の落語論と伴走し、演目についての各論としても消化している点を評価したい。

2013-11-18 18:02:33
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)評論としてスリリングなのは、談志がなぜ人情噺を評価しなかったのか、という点に着目し、談志の落語観の本質は「優しさ」という結論を導き出すくだりである。また「伝統を現代に」から始まった談志落語が「江戸の風」の時点で「伝統を未来に」に決着したという指摘もおもしろい。

2013-11-18 18:04:18
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)序文では談志の評価は言動や著作ではなく落語でされなければならない、という真っ当な指摘が行われる。その談志研究のためのガイドとして適切な内容となるように意図された本であり、利用し甲斐がある。通ぶりたい独りよがりの本にはなっておらず、どなたにでもお薦めできる一冊だ。

2013-11-18 18:06:24
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)まさに「見巧者」の書くべきガイド本である。落語のように鑑賞の蓄積が必要となるジャンルでは、それについてのガイドを書ける人材もおのずと限られてくる。量が必要条件で、さらに鑑賞の質が十分条件として要求される。広瀬は自分が有資格者であることを証明しようと挑戦している。

2013-11-18 18:08:57
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)この本についての意見をぜひ聞きたいのは、やはり立川志らくだ。志らくは、生前の談志を聴いていないにも関わらず芸の質を批判した大橋巨泉や中野翠を舌鋒鋭く切り捨てた。自身が第一の談志ファンと自認しているはずの志らくに本書を読み、評論してもらいたい。

2013-11-18 18:10:45
杉江松恋@11/12秋季例大祭こ02b @from41tohomania

(承前)おしまい。私が落語家の本についての書評は手がけても絶対に落語「評論」は書かないのは、こういう労作が存在するからです。このクラスの評論を書ける力がなければ、「言いっぱなし」の無責任なものになってしまう。芸論の難しさを改めて思い知らされた。

2013-11-18 18:12:48