[公開読書] コミュニティを問いなおす—つながり・都市・日本社会の未来—【第4章〜第5章】

コミュニティを問いなおす—つながり・都市・日本社会の未来— http://www.amazon.co.jp/dp/4480065016 2009年8月5日初版 ちくま新書 続きを読む
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白川陽一 @shirasan41

●日本における展開(1)—「土地の公共性」をめぐって 1873(明治5)年の地租改正で、江戸期までの共同体的土地所有を個人に転換する試みが行われた。これは、土地を個人のものとし、地租を収めさせることで、政府の税収を安定させる事が目的だった。

2013-11-22 00:01:25
白川陽一 @shirasan41

しかし金納できない地主は土地を売り、小作農(土地を借りて農業をする人)になった。その結果、農地を所有しながら自らは耕作しない地主と、土地を借りる代わりに農作物の大半を地主に納める小作農との格差がひらく土地も出てきた。この格差是正は戦後の農地改革(1946年)で行われることになる。

2013-11-22 00:01:41
白川陽一 @shirasan41

土地の問題は「地籍」調査(土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査)にもある。地籍整備は現在までに完了していない。原因は、土地の権利関係が錯綜していて精査が困難だったり、地権者の利益に絡むということが挙げられる。

2013-11-22 00:01:51
白川陽一 @shirasan41

このように、日本では、地租改正で一定の明確な土地所有意識が生まれ、やがて地主−小作の分化が進み、農地改革私的所有の絶対性が高まったという歴史がある。しかし、地籍の未整備で、日本では土地所有をめぐる関係が、私的あるいはインフォーマルで放置されている。これは致命的である。

2013-11-22 00:01:59
白川陽一 @shirasan41

なぜなら土地所有が明確でない場所は「公共性」による規制が働かず、私的利益の追求が野放しにされるからだ(しかし、これは奇妙にその後の産業化に結びつくのだが)。今後は①本来の都市的なものの確立=公共性と、②「共」的なもの(コモンズなど)の再評価・再構築が必要であろう(次章で検討する)

2013-11-22 00:02:06
白川陽一 @shirasan41

(2)第二期(産業化前期):急速な都市化と「近代的都市計画」&社会保険…19世紀後半〜20世紀前半 産業化・都市化が進み、都市労働者の生活保障の為の社会保険や社会保障システムが整備され、また都市の環境整備や市街化の抑制、地価の安定等を目的に、一定の土地公有化と共に都市計画が進んだ

2013-11-22 00:02:19
白川陽一 @shirasan41

(3)第三期(産業化後期):ケインズ政策・福祉国家の時代とその変容…20世紀後半 「ケインズ主義的福祉国家」といわれる所得再分配や公共事業を通じた需要拡大の時代(例:ニューディール政策)。都市計画、土地の公有化等も積極化し、公的な介入が強化された。第三期は更に3つに分けられる。

2013-11-22 00:02:30
白川陽一 @shirasan41

①戦後復興期…福祉国家のスタート 福祉国家政策が次々と展開→医療国営化(英)、児童手当の本格化(欧州)、社会住宅の大規模建設など。 都市計画枠組みの強化→都市農村計画法(英)、連邦建築法(ドイツ; FプランとBプラン)、建築法(スウェーデン)

2013-11-22 00:02:46
白川陽一 @shirasan41

②1960〜1970年代…「社会化」の強化の時代 経済成長と並行して国家の介入がますます強化された。 ・都市農村計画法(英)→SプランとLプランの2段構えに発展・強化 ・土地公有化(欧州)の強化。イギリスやフランスなど(P139)

2013-11-22 00:03:19
白川陽一 @shirasan41

③1980年代以降…福祉国家の見直し 民営化や規制緩和の時代。イギリスのサッチャー政権は象徴的。北欧でも、公共主導から民間主導(公的部門とのパートナーシップ含める)の都市開発に比重がうつる。

2013-11-22 00:03:35
白川陽一 @shirasan41

(4)第四期:経済の成熟化・定常化と福祉政策・都市政策 1990年代以降。高齢化、少子化、格差や現代の貧困、若年者等の失業、社会的排除の問題が重層的に現れ、それらと中心市街地の荒廃・空洞化や一部地域のスラム化、空間格差等が関連した「都市・土地・住宅政策」がとられる時代である。

2013-11-22 00:03:48
白川陽一 @shirasan41

この時期では「シュリンキング・ポリシー(創造的縮合政策)」が社会保障政策や都市政策に共通して現れるようになる。「シュリンキング・ポリシー」とは、人口減少による縮小を前提として、ゆとりある持続可能な都市づくりを進める政策で、ドイツの フランクフルト市などで進められている。

2013-11-22 00:03:57
白川陽一 @shirasan41

また「環境(サスティナビリティ)」にも注目が集まり始め、福祉政策・都市政策にもこの概念が取り入れられ始める。興味深いのは、「都市の持続可能性」の議論で、福祉政策の中核概念である「格差是正」「公平性」と似たような議論(空間的・地理的な課題の補償など)がこちらでも現れ始めたことである

2013-11-22 00:04:04

●日本における展開(2)

白川陽一 @shirasan41

●日本における展開(2) ヨーロッパでは第三期を中心に土地・住宅・都市の「社会化」が強化されていったが、日本では農地改革(1945〜46年)や急激な都市化を背景として、「公共性」をもたないまま、かえって土地所有の私的性格が強まったといえる。

2013-11-22 00:04:15
白川陽一 @shirasan41

農地改革がもたらしたことは、ポジティブ/ネガティブどちらの側面もある。ポジティブなことは、「土地の再分配」で土地所有の平等化が図られたということ。ネガティブなことは「土地は個人のもの(あるいは土地は投機の対象となるもの)」という意識を強めたことである。

2013-11-22 00:04:24
白川陽一 @shirasan41

しかし、これまでみてきたように「所有権の絶対性」の議論は、ヨーロッパはずっと前からしてきており、日本はまだまだ遅れているのである。今後の日本は、「公」や「共」の強化を中心とした社会保障・都市政策の議論をしていく必要があるだろう。

2013-11-22 00:04:31

第5章 ストックをめぐる社会保障—資本主義/社会主義とコミュニティ(P145〜P201)

●「ストックをめぐる社会保障」とは

白川陽一 @shirasan41

第5章 ストックをめぐる社会保障—資本主義/社会主義とコミュニティ ●「ストックをめぐる社会保障」とは 従来の「フロー(所得)」の格差議論より「ストック(資産)」の格差議論の方が重要。実際、格差の度合いを示すジニ係数は所得より土地等の資産格差が大きいということを示している。

2013-11-22 00:04:44
白川陽一 @shirasan41

資産面の格差は親から受け継ぐものだから本人にはどうしようもない。ストックの格差是正とは「機会の平等」という観点で重要。日本はこれまで「農地改革」「学制改革」で「機会の平等」政策をとってきており、これが経済発展の基盤となった。ストックをめぐる社会保障も同様の観点で行われるべき。

2013-11-22 00:04:53

(1)これからの社会保障政策〜福祉国家の方向性

●事後から事前へ—福祉国家の意味

白川陽一 @shirasan41

(1)これからの社会保障政策〜福祉国家の方向性 ●事後から事前へ—福祉国家の意味 そもそも「福祉国家」とは資本主義と社会主義の間の第三の道(ミドル・ウェイ)として20世紀に構想された概念。「個人の自由競争」という市場原理を前提とし、そこで生じる格差を事後的に是正するという考え方。

2013-11-22 00:05:08
白川陽一 @shirasan41

だが「福祉国家」は2つの問題がある。1つは、福祉国家が拡大すれば社会保障の規模も拡大するが、財源は個人や企業の所得からなので、経済活動がモチベーティブでなくなるという事。もう1つは、資産格差が広がると「機会の平等」が損なわれ、福祉国家の前提「自由な競争」が揺らいでしまうという事。

2013-11-22 00:05:18
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