[公開読書] コミュニティを問いなおす—つながり・都市・日本社会の未来—【第4章〜第5章】

コミュニティを問いなおす—つながり・都市・日本社会の未来— http://www.amazon.co.jp/dp/4480065016 2009年8月5日初版 ちくま新書 続きを読む
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白川陽一 @shirasan41

[公開読書] コミュニティを問いなおす—つながり・都市・日本社会の未来—, 2009, 広井良典, ちくま新書 http://t.co/AGWNBYDE6w

2013-11-21 23:55:30

第二部 社会システム(P115〜P201)

第4章 都市計画と福祉国家—土地/公共性とコミュニティ(P116〜P144)

【1】福祉国家と都市計画の国際比較

白川陽一 @shirasan41

第二部 社会システム 第4章 都市計画と福祉国家—土地/公共性とコミュニティ 【1】福祉国家と都市計画の国際比較 (1)北欧〜「公」(政府)中心のシステム 普遍主義(社会民主主義)モデルである。これは「社会的権利の1つとして全国民に社会福祉サービスを提供するという考え方」である。

2013-11-21 23:55:57
白川陽一 @shirasan41

ちなみに「普遍主義」に対する概念は「選別主義」。こちらは個人的ニーズと資産調査に応じて社会福祉サービスを提供しようとする考え方普遍主義モデルの北欧は高福祉・高税金負担である。 ・土地→公有地が多い ・住宅政策→公的な住宅(社会住宅)が多い 総じて都市計画は公的な規制が多い。

2013-11-21 23:56:29
白川陽一 @shirasan41

土地の公有の補足。北欧はそもそも土地は王権から都市に寄贈されたという認識。しばらくの間、都民は地代を払って土地を利用していたが、19世紀以降、土地の多くが市民に売られるようになった。その後、20世紀始めから再び公的部門が土地を買い取りだした(1960年代がピーク)。

2013-11-21 23:56:39
白川陽一 @shirasan41

1980年代になると、公的部門と民間はパートナーシップを組み、都市開発は公共主導から民間主導が主流になっていく。背景には、コミューン(日本でいう市町村)開発の財政負担の軽減や計画手続きの短縮という「効率性」重視がある。詳しくは松本(2004)を参考のこと。

2013-11-21 23:56:58
白川陽一 @shirasan41

(2)大陸ヨーロッパ(特にドイツ)〜「共」(コミュニティ)的基盤と「公」 社会保険モデル。北欧ほど社会保障の規模や公有地の割合は多くない。ただし、19世紀後半に土地の公有化政策がとられた時期がある(これは北欧にも影響を与えている)ので、公有地の割合は中程度だといえる。

2013-11-21 23:57:26
白川陽一 @shirasan41

住宅は住宅協同組合や公益住宅企業などの民間非営利による社会住宅が多い(「共」中心)。一方、都市計画は公共的規制が強い。市全域に渡って将来の土地利用の基本的な方針を示すFプランと、地区ごとの詳細な開発計画や建築計画を示すBプランの2段構えで都市計画を行ってる(日本も参考にしている)

2013-11-21 23:57:38
白川陽一 @shirasan41

FプランもBプランも自治体主導だが、策定には住民参加も求められる。この様に、ドイツの都市計画は「公」主導で市民・住民自治が行われており「共」的な性格を有しているともいえる。つまり「共(相互扶助)」基盤で、市民の公共性実現のひとつの装置に「政府(公)」があるという考え方である。

2013-11-21 23:57:46
白川陽一 @shirasan41

大陸ヨーロッパの中でもオランダは異例。干拓や海抜下の土地の多さという事情も手伝って「公」主導の要素が多い。すなわち、公有地も多く、社会住宅も多い。オランダでは、ドイツのように「共」を基盤としつつも、北欧のような「公」の要素も強いといえるだろう。

2013-11-21 23:57:55
白川陽一 @shirasan41

(3)アメリカ及びイギリスー「私」(市場)中心のシステム 「市場型モデル」の代表例はアメリカ。社会保障における民間保険の割合は先進諸国の中で最も高い。公有地も社会住宅の割合も低い。都市計画も民間事業者の割合が高く、「ゾーニング(地域の用途を区分して規制するもの)」を行っている。

2013-11-21 23:58:06
白川陽一 @shirasan41

ゾーニングは日本も行っているが、アメリカは日本より詳細である。 一方イギリスの位置づけは難しい。社会保障は以前は「北欧・イギリス型」といわれ、北欧型で税中心で政府の関与が強かった。だが、サッチャー政権の「小さな政府」政策以降は、アメリカ的な市場型になり、社会保障の規模は縮小した。

2013-11-21 23:58:17
白川陽一 @shirasan41

イギリスの公有地や社会住宅は、昔からの名残で「公」中心である。社会住宅の割合はオランダに次いで高く、スウェーデンとほぼ同じである。しかし、社会保障は北欧と違い市場型なので、所得格差が大きくなってしまい、公営住宅の対象者が低所得層に集中してしまっている(詳細は小玉他, 1999)。

2013-11-21 23:58:25
白川陽一 @shirasan41

イギリスの都市計画は「計画許可制」で、「公」による規制が厳しい。さらに1968年からはS プラン(県レベル)とLプラン(市町村レベル)の2段構えがとられるようになり、より「公」重視となった。

2013-11-21 23:58:33
白川陽一 @shirasan41

また、1947年に制定された「都市・田園計画法」で、全ての土地は公私を問わず詳細な計画で公正に定める(開発権の国有化)としていることからも、イギリスはアメリカのように市場中心のシステムでありつつも、アメリカよりも公的部門の力が強いことが窺える。

2013-11-21 23:58:40
白川陽一 @shirasan41

(4)日本—折衷型システムと「公共性/都市」をめぐる課題 広井(1999)も参考。複合的な側面をもっている。その理由は2つ。「日本は後発の産業国家であり、急激な開発化・都市化で開発を重視した政策をとったから」「産業化に伴う西欧化で文化が変化し、伝統との齟齬や矛盾を生み出したから」

2013-11-21 23:58:59
白川陽一 @shirasan41

社会保障はドイツを基調とした「社会保険モデル」だが、ドイツと違い、社会保障の規模はアメリカと同水準(市場型)になっている。市場型の傾向は、「小泉改革」「インフォーマルな社会保障(カイシャや家族相互の保障)」で強くなった。 公有地や社会住宅の割合は低〜中程度である。

2013-11-22 00:00:00
白川陽一 @shirasan41

都市計画は「産業・開発優先」で、都市人口は急激に増え、様々な建造物が無秩序に建てられ、景観や居住環境が劣悪になり、矛盾が現れている。 総じて、近年は「私(市場)」中心のシステムが強まっている一方、インフォーマルに支えていた「共」的基盤は弱まり、それに代わるものが未確立である。

2013-11-22 00:00:11
白川陽一 @shirasan41

したがって、日本では新たな「共」的基盤を確立するため「都市的コミュニティ(独立した個人と個人のつながり)」の関係性を、社会保障の側面を含めて模索しているというのが現状ということができるだろう。 以上(1)〜(4)のまとめを表に記す。 http://t.co/MsMkJ4p1a9

2013-11-22 00:00:35
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【2】歴史的展開における福祉国家と都市計画

白川陽一 @shirasan41

【2】歴史的展開における福祉国家と都市計画 (1)第一期:近代化・市場経済の浸透と私的所有権…18〜19世紀 欧州での私的(絶対的)所有権の確立期。きっかけは英、仏等の市民革命。フランスでは「土地」の所有の議論は様々に変遷したが、最終的にはそれは広範な自由が保障されるべきとされた

2013-11-22 00:01:06
白川陽一 @shirasan41

土地所有を私的なものにした背景は、土地の支配権が貴族・大地主にあった当時、それを個人(私的)に転換する事で、市民が土地絡みで搾取されてた資産を再分配するということだった。しかし、土地は本来共同体のもの(共同体そのもの)だから、個人が土地を所有したとしても、市場化には馴染まなかった

2013-11-22 00:01:14

●日本における展開(1)—「土地の公共性」をめぐって

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