モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Autumn VII~
- IngaSakimori
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「志・智」 「あ、亞璃須か」 今日は走るつもりがないのか、いつものゴシックロリータ姿の上から、ふかふかのロングコートを羽織った亞璃須が、ハイエースから降りてくる。 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:43:33「き、今日はいい天気……だな」 「ええ、そうですわね」 どこか落ち着かない視線を返す志智にたいして、亞璃須は得意満面。なにか決定的な大勝利をした直後のような笑顔をうかべていた。 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:43:48「ティックから聞きましたけど、登りで負けたとか」 「……さっき『おやっさん』のZRXにな。別にいいだろ。お互い本気じゃなかったし」 「まあ、志智らしくもないセリフですわね。 少しふわふわしすぎなのではなくて?」 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:44:15「……いったい誰のせいだよ。 気にしなくても大丈夫だぞ。出来の悪いサスみたいなもんだ。いい加減ぐらぐらもおさまってきたところさ」 「それならいいですけれど。 気を抜くだけなら構いませんが、転倒でもされたらわたくしも寝覚めが悪いですもの」 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:44:43「それじゃあ、ちょっとそこで立ちゴケでもしてくるか。スパーダは傷つけたくないから、お前のXR650Rで」 「まあ、乗りたいなら止めませんけど……大型免許、ありませんわよね?」 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:45:52「……あの頃のお前もそうだったろ」 「さて、何のことかしら」 平然と視線をそらしてみせる亞璃須を睨みつけながら、志智は道路交通法の時効はいつだろうかと、考えてしまう。 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:46:01そんなとき━━ 「……あ」 不意に耳へ届いた四気筒のエンジン音は、『大人区間』を周回するスーパースポーツのサウンドでも、定期的に川野駐車場へやってくる焼き芋売りのトラックでもない。 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:46:10わずかに色あせた、しかし未だ鮮やかなフルカウル。 サイレンサーは通常モーターサイクルとはことなり左側へ、チェーンと一緒にまとめられ、そのシートは時代を反映するかのように、比較的低い。 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:46:26「最後の……レーサーレプリカ……」 「ん……おお、君はあの時の」 三鳥栖志智の前に現れたのは、確かに奥原一征(おくはら いっせい)の乗るRVFであった。 #mor_cy_dar
2013-11-26 23:46:35