大罪戦闘企画

第十三公演《青に理なく》
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ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

悪い人は、要らない人だ。要らない人は、消さなきゃいけない。それが正しいこと。先生だって、そう言った。 そして。 「勝手に調べるのは悪いことですよ〜」 菫色も、悪い人だ。それから、あのスクリーンは、悪い物だ。 消さなきゃいけない。 大鎌を構え、地を蹴る。先に狙うは、スクリーンだ。

2013-11-28 23:49:20
【魔王】 @Tokimine_Seo

白衣が地を蹴って急速に近づいてくる。その手には、巨大な鎌。さすがにあれはスクリーンを相当数重ねても防ぎきれるかわからない。 展開する八枚のうち四枚を、正義の視界を奪うよう顔面に投げつけてその場から後退する。 「ああもう全く面倒な、僕は何もしたくないのに!」

2013-11-29 01:54:52
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

迫る四枚のスクリーン。女は笑う。跳ねるように後退。間合いを測り、ガンと強く地を打った。鎌を振るう。柄で薙ぎ、打ち、払い、穿ち。全てのスクリーンが割れるまで何度でも何度でも。その動きが止まることは一瞬たりとてなく。その目はギョロリと動き。 割れれば直ぐにでも、菫色へと駆けんと。

2013-11-29 08:03:32
【魔王】 @Tokimine_Seo

切り裂かれる。削落が壊される。身を切り裂く痛みに悶えながら、若草の瞳を歪ませ迫る白衣を睨みつける。 その意思に沿い自身の正面に突き立つ画面。駆けてくる正義を、面倒を運び来る者を、 「…ッ『削ぎ落とす』!」 裂帛の叫び。削ぎ落とす力は、正義もろとも憤怒までも削ぎ落とさんと一直線に。

2013-11-29 15:01:13
筋トレがんばりたい深海 @_dsea

「……、」 呻きを噛み殺す。半ばまで切れた左腕は腱も断たれたようで傷口から剥がれて、同時に握れなくなった手から杭が音を立て落ちた。 「…畜生が、」 悪態ともに睨みつける。視界には白衣と菫の女。 霞む目、傾ぎそうになる頭。足は覚束無い。一瞬倒れそうになって踏みとどまれば、

2013-11-29 22:03:41
筋トレがんばりたい深海 @_dsea

びちゃりと己の血だまりを踏んだ。 それでも。食いしばって、控えていた杭を出現。手元へ戻したものと揃えて、計七本。先行する四本を菫、遅れて続く三本を白衣へ。 狙いは、甘い。せめてと、霞む視界、必死に目を凝らす。

2013-11-29 22:08:12
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

菫色へと駆ける足は止まらず、止めず。進む身体が突如として強い衝撃に襲われる。咄嗟に背後に跳ぶも勢いは殺しきれず、吹き飛ばされて身体が宙に浮く。ふと空中で、金色と杭が視界に入り。

2013-11-29 22:28:56
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

瞬間的に鎌を投げた。ブーメランのように旋回し、刃は金色へ。空中で無理矢理体勢を立て直し、着地した背中に杭が二本突き刺さる。 菫色へと走り出す。杭を引き抜き、両手に。 スクリーンならば割る。菫色ならば−− −−『冥く』

2013-11-29 22:29:05
【魔王】 @Tokimine_Seo

削落の力に吹き飛ばされる正義。把握が足りずに削ぎ落とせなかった事に舌打ちを打ちつつ、改めて把握と削落を行おうと画面を構え直そうとしたその時。 正義と入れ替わるように、四本の、杭。 とっさに二本はスクリーンを砕いて叩き落としたものの、一本は右肩をかすめ、一本は左肩に。

2013-11-30 03:16:37
【魔王】 @Tokimine_Seo

ぎり、と奥歯を噛みしめ痛みと声を殺す。若草色は歪んだまま、睨みつけて。 二枚、四枚、六枚と、スクリーンは増える。増える。最終的に画面の数は14枚。そのすべてを中心に揃えて重ね、正義へと向けた。14枚の画面すべてが、捉える。 「『削ぎ落とす』ッ!」 14枚の力が、一度に放たれる。

2013-11-30 03:16:42
筋トレがんばりたい深海 @_dsea

がしゃんと、硬質な音を拾って判然としない視界との統合性を付ける。いくつかは当たったと見えて、にぃと口の端を吊り上げた。 ――己へと向かう、大鎌に気付かずに。 重いものが飛来する音、気付き飛び退って回避しようとしても遅い。それにまず、失血でふらつく己の体がそれを許さない。

2013-11-30 13:57:53
筋トレがんばりたい深海 @_dsea

もがくように崩れた体を、刃は容赦なく斬り裂いた。派手に斬れたはずが、噴出した血にさほど勢いはない。斬り裂かれた衝撃のまま、倒れ伏す。 …暗くなる視界、落ちる瞼に抗えず。 「……、…」 最期、声は掠れて、音になることなく絶えた。

2013-11-30 13:57:59
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

駆ける。駆ける。杭を手に、菫色を消さんと。 駆ける。駆ける。右側の腹部に衝撃。先刻のように吹き飛ぶものではない。どことなく軽くなった。 「うふ」 駆ける。駆ける。目の前に立ち塞がるスクリーンを割らんと両手を振り上げる。同時、耳に入った切り裂く音と倒れる音。手の中から杭が消える。

2013-11-30 16:38:14
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

−−ああ、綺麗になった。 「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」 −−次は、この色の番。

2013-11-30 16:40:53
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

振り上げた手を強く握る。振り下ろす。スクリーンを割らんとする。叩く。殴る。蹴る。蹴破る。人間の腕の限界を超えて、掻き毟ろうとするかのように腕を、足を動かす。 びゅん、と刃の音がする。鎌は意志でもあるかのように、未だ宙を旋回して。

2013-11-30 16:43:33
【魔王】 @Tokimine_Seo

次々に半青色の画面は割られていく。スクリーンが割れるたびに衝撃の奔る身体はついにくずおれて、片膝をついた。汗が滴る。息が荒くなる。それでも、削ぎ落とさねば。要らないものを。余計なものを。 「僕が、何も、しなくていいように……」 若草色の瞳は半ば虚ろに、それでも奥に微かな光を伴う。

2013-11-30 18:20:49
【魔王】 @Tokimine_Seo

もはや使えるスクリーンが何枚残っているかわからなかった。ただ、出せるだけのスクリーンを出して、向ける。視界が霞んでよく見えない。きちんと、見えていないと。瞬いて、できる限り視界をはっきりさせる。

2013-11-30 18:21:02
【魔王】 @Tokimine_Seo

「『削げ』」 虚ろな視界で、宙を飛ぶ大鎌も捉えられるかはわからない。 「『落とせ』」 できるだけ、やれるだけ。 「僕の前からいなくなれ、『消えろ』ッ!」 力の限り言い放つ。 「『消えてしまえ』ッ!」

2013-11-30 18:21:11
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

皮が剥け、肉に破片が突き刺さる。それでも止まることはない。スクリーンを叩き続ける。蹴り続ける。目の前の悪い物を壊し、消し去らんとする。どうしてか笑いが止まらない。叩く。叩く。叩く。叩く。消し去らないといけない。残りは三枚。そう眼球が認識した。 瞬間。

2013-11-30 20:04:26
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

自分の身体が、見えた。穴が、四つ。パックリ無くなった、腹部。白衣なんて見る影も無い、血だらけの、人間。 其処に、首が無くて。 「あ、」 ビックリして声を上げた。どういうことか分からない。でも、消さないと、と思ったら、身体は、まだ、動いていて。

2013-11-30 20:05:34
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

あれ?あれれ? −−『暗く』 私、どうして生きているんでしょう? −−『昏く』 ああでも。 −−『冥く』 そんなことはどうでも良いですよね。 −−『閉ざせ』 綺麗に、出来れば。 −−『瞑れ』 ね、先生。

2013-11-30 20:07:13
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

ぼろぼろと、崩れ始める。身体が、頭が、大鎌が。ぼろぼろ、ぼろぼろ、崩れていく。それが、眼球に映る。 身体を失った頭はそれでも考え続ける。首を失った身体はそれでも動き続ける。大鎌はそれでも風を切る。ビュンと音を立て、刃を菫色へと向けて。 最期、消える瞬間まで、止まることは無く−−

2013-11-30 20:08:23
【魔王】 @Tokimine_Seo

視界に、削落の力が正義にも止めを刺した姿が見えて、安堵した瞬間。背に衝撃が奔った。 止められなかった大鎌が、鮮やかに突き刺さって。 見開いた瞳は、驚きから、諦観に。もはや無理だとすぐにわかって。 「……は、ぁ」 命が零れて、残った三枚の画面はさらさらと消えていく。消えて、いく。

2013-12-01 03:08:54
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

《以上をもちまして……第十三公演は終演致しました…… どなた様もお忘れ物のございませんよう……いま一度、お手回り品をお確かめ下さいませ…… 本日はご来場頂き……まことに有難うございました…》

2013-12-01 06:06:04
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

あーあ。あーあ! 死ぬとか生きるとか! −−その箱は、 みんな大変だなぁ! −−時間も空間も、概念さえも凌駕する どうせ絶望と安楽は同じなのにさ! −−投げ捨てられた箱の中身は まあ今更気付いても手遅れだけどねぇ! あはははははは! −−何処へ消えていくのだろう

2013-12-01 16:23:07