大罪戦闘企画

第十八公演《邂逅白く歪みて》
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【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

−−りぃん…… 大理石の白い床、毒々しいほど真赤な絨毯。幾何学模様の白い壁紙、シャンデリアを吊るした天井。 棚の上には無数の人形。姿勢を正して並んだそれの幾つかは、もげた首を転がして。 −−りぃん…… 鈴が鳴る。首は動いて元通り。座す少年は優しく目を細めて箱を見つめる。

2013-12-02 19:06:30
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

ふふっ!ふふふふっ! さあもう直ぐ時間だよ! 演者は舞台に上がりなよ! 新しい公演まもなく開演! 死ぬ準備をしておいて!

2013-12-02 19:10:28
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

《演者紹介:第十八公演》 【強欲】アプレースティア (@ratan_ruten) vs 【怠惰】 (@s_akiyui)

2013-12-02 20:53:28
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

《まもなく……12月2日21:00より……第十七公演、第十八公演、第十九公演、第二十公演が同時開演致します…… ご観覧の皆様はお席にお着きくださいますようお願い致します……》

2013-12-02 20:54:19
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

あははははっ! ほら、楽しい楽しい公演の時間だよ! 君らは演者!僕らはお客! 死んでいるなら生き返れ! 生きているなら死んでいけ! 君らは踊り狂えばそれで良い! ほら簡単!ほら単純! 馬鹿な君らにだってできるでしょ? 退屈させたら壊しちゃうんだから! あはははははははははは!

2013-12-02 21:00:17
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

青々と草木生い茂る其処に、青空と、燦然と降り注ぐ太陽の光があった。ちらりほらりと、不調和で無骨な岩が何処か寂しげに立つのを、まるで慰めるかのように穏やかな風が通り抜けていく。 ——ああ、 其処の一際大きな木の陰に、一人の少年がいた。

2013-12-03 05:25:57
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

白い髪に、白い肌。白いシャツに隠された薄っぺらな体と、深青のズボンに包まれた細い足。膝の上には開かれたままの本と、白くて可愛いテディベア。大きなその木に体を預け、眠るように目を閉じ、口を閉じ。 その少年は、其処にいた。

2013-12-03 05:26:44
カーデ @ratan_ruten

闇を抜ける。同時に微笑むような太陽の光とざぁざぁと耳を撫でる草木の音に出迎えられる。 どこかの草原らしかった。 何処かの、草原。 「……どういうことだ」 思考のプールに脚をつけるまでもなく。 それに辿り着く。ちょっと前だか、もっと前だったか。 ”彼”と戦った場所。

2013-12-03 11:06:04
カーデ @ratan_ruten

照りつける太陽の光も、どこか優しげな草木も、浮くんじゃないかと身構えるような岩々もーー ーー記憶のモノと何一つ違わない。 「ぶっ壊れた筈じゃないのか」 アイツの攻撃で。 続く言葉を内に秘める。言ってしまえばまたこの世界が壊れそうで。 「……いるのか?」

2013-12-03 11:10:05
カーデ @ratan_ruten

確信もない。ただの勘。この風景だって勝手に似ていると思い込んでいるだけなのかもしれない。 それでも、何かの感情に突き動かされ ーー大木に寄り掛かかったそれを見つけた。 白い肌に白い髪。それに白いテディベア。 ”彼”だ。 ただしその身は、記憶にあるものよりも小さかった。

2013-12-03 11:15:27
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

ふっ、と。 さわさわと流れる風だとか、ざわざわと囁く木々だとか。それらに混じって、声がして。 ——だれ、か、 その声に、何かが、動いたような、気がして。 ——いる、の、です、か、 探そうと、して。

2013-12-03 11:41:49
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

少年の目は閉じられたまま、動かなかった。その口も、その手も、その足も、ピクリともしない。 けれど。 まるでその代わりであるかのように、細かな無数の黒が少年の肌を這いずった。何かを探すかのように、のたうちまわるかのように。 虫のような黒が、這いずり回る。

2013-12-03 11:43:45
カーデ @ratan_ruten

「あ?」 少年の白い肌に、ぞわぞわとした黒い”何か”が走る。 蟲のように、それは不快なまでに黒く。 「……おい起きろ」 黒なら慣れたもんだと、何にも気にせずぺしぺしと頬を叩く。 確かにそれらは不気味だが、少年の存在そのものの方が男には気に掛かる。

2013-12-03 12:50:32
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

頬に、誰かの手が触れた。叩いているのだろうか。何処か遠く、別の誰かの出来事のように思えて分からない。動けない。 ——ああ、 無数の黒が這い回る。それは少年の頬に触れた誰かの手へと移り。 肌を這いずり喰おうとする。奪おうとする。その力を、その魂を——その、心を。

2013-12-03 13:09:24
カーデ @ratan_ruten

「あ?んだこれ?」 少年の柔い頬から”黒”がずわりと動き、男の手へと移る。 とても、嫌な感触。 慌てて少年から手を離せば、それらはまるで元からそこに無かったかのようにすぐにかっ消えた。 「……おい」 這われなかった方の手でもう一度頬を叩く。今度は慎重に。

2013-12-03 15:28:25
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

誰かの手が離された。黒は引き、けれども少年の肌を這うそれが消えることはない。それどころか先刻より数を増し、再び触れてきた手にまた群がった。 一瞬だろうが、数瞬だろうが、それは確実に誰かの何かを喰らい、何かを奪っていく。そして、僅かながらも少年へと与えられる、それが。

2013-12-03 16:07:14
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

形の無い意識を、形の無い己を。 ——ああ、 此処に、繋ぎ止める。 ——『ぼく』、だ、 ゆっくりと少年の瞼が持ち上がる。赤色の目が、眼前の誰かを映し出した。

2013-12-03 16:07:30
カーデ @ratan_ruten

「あ……あ?」 先ほどよりも速くそして強く黒がまた触れた所から侵食してくる。 それにあわせ、ゆっくりと少年の目が開かれる。 徐々に覗かせる赤い目。 はて、自分の記憶の中の彼の目は赤だったのかと。 そう考えたところで、少年の目は男を映し出した。 「……よう」 手を離す。

2013-12-03 20:22:18
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

虚ろな目、光の無い目で、少年は前をぼうっと見つめている。言葉は無く、体を動かすことも無く。人形のような無表情で、それでも、その目に誰かを映す。 ——ああ、 短い金の髪、鍛えられた身体、僅か戸惑いの滲む顔。 ——しって、る、 縦横無尽に這うだけの無意味な黒が、意思を持った。

2013-12-03 20:48:17
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

行列を成し、ぞろりぞろりと肌を下り。 開かれた本、白紙のページへと、その身を踊らせる。 バラバラと蠢き、のたうち、さざめきながらもそれは徐々に形を見せて。 《こんにちは》 果てには意思を覗かせる。 《『くろ』の『ごうよく』》 その無数の黒は、無数の文字であった。

2013-12-03 20:48:25
カーデ @ratan_ruten

目を覚ました少年に、正気を受け取れない。 言葉を交わすことが出来るのかという不安が脳裏に過った瞬間、目の前で”黒”が大移動を始めた。 固唾を飲みギュッとタンクトップの裾を握って待っていると段々とそれらは文字を形成していった。 読み取れる文字は、かつての名前。

2013-12-03 21:56:43
カーデ @ratan_ruten

やっぱりあいつなんだ、とどこか確信を持って。 「こんにちわ」 仏頂面で返す。 今のアプレースティアにはこれが限界だ。平和な挨拶をするような人間じゃない。 「あーーー……名前知らねえや」 相手がそうしたように名前をぶつけようと思ったが、一回も聞いてない。彼の名前。

2013-12-03 21:59:52
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

仏頂面を目に映して、少年は鈍い思考をゆっくり回す。それに合わせて文字は蠢き、紙面に文字を踊らせる。 《だれの、なまえ?》 そうして一つ、少年は問うて。 《ぼくは、ない》 無感動に、無感情に、そう述べる。

2013-12-03 22:40:42
カーデ @ratan_ruten

「そうか……」 紙面に踊る黒を、その意味を脳に投げ込み瞳を閉じる。 そして、閉じた瞼裏に覗き込む少年の姿。果たして彼は名前があったのだろうかと考えて。 「……あの時のことは、覚えてるのか」 目を閉じたままぽつり。核心としては大玉なそれを、吐き出す。

2013-12-03 23:42:46
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

新たな問いに、文字はまた動き出す。 《ぼくの、したこと、じゃ、ない、から》 くるり、くるり。 《おぼえてる、ちがう》 鈍い思考の歯車を回す。 《しってる》 記憶を辿って、掬って。 《『ごうよく』、ころした。ゆりかご、あなたたちが、こわす、から》 望まれるがままに、答えを。

2013-12-04 04:53:46
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