- treeofevil
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2人の会話を聞きながらガラス玉を見つめていると、不意に声が掛って。やっぱり何かされたのかと、そちらへと向き直る。 「ううん、大丈夫。ただ、ちょっとさびしかった」 言いながらガラス玉へ視線を落とす。きっときれいな空色をしているんだろうなと目を細めて、伸ばされる手を取り上に乗せた。
2013-12-07 22:14:21さびしかった、の一言に、ごめんなさいと、また小さく謝罪の言葉。 触れられた手に目を丸くしながら、乗せられた蒼をきゅ、と握りしめる。 途端、蒼の感覚が消えた。握った手を開けば、蒼が溶けて拡がって。
2013-12-07 22:22:37開かれる手の中で、蒼が溶けて。その色がふわりと空の色が戻る。やっぱり空は蒼がいい、きれいだなぁ。 上を見上げる橙色が細くしなった。視線は下へ、傘を見る。その傘の先から矢を放って、足元。緑の生い茂る地へ刺さる。 そこから白い波紋が広がって――蒼い、ウサギのぬいぐるみが出現する。
2013-12-07 23:31:09水色の生地に、目は同じ橙色の釦。そのウサギのぬいぐるみを、持ち上げて。 「ありがとう」 ルーヴェの前へと差し出す。蒼を返して『貰った』から、代わりに何かあげようと思っての行動だった。 『ぼくのゆめ』を、夢だけれど、彼は貰ってくれるかな。受け取ってくれるかは、解らないけれど。
2013-12-07 23:31:55傘から何かが撃ち出されて、地面が白く揺れたのに目を奪われる。揺れが止まって、現れたのは、澄んだ青と優しい橙のうさぎ。 「……いいの?」 ぱちぱちと瞬いて、問うた言葉は、二つの意味を込めて。 差し出されたそれを、おっかなびっくり受け取りながら。
2013-12-08 00:47:12驚いたのか何度も瞳を瞬く彼に、緩く笑んで。 「うん、あげる」 貰ってくれる方がうれしい。でも『蒼』のかわりにはならないかもしれない。 不安だったけれど、ぬいぐるみの重さが腕から消えて、受け取ってもらえたことに安堵する。
2013-12-08 01:12:56そういえば、と頭の上の輪に意識を持っていく。まだ貰ったものがある。 もう1本矢を撃ち、同じようにぬいぐるみを出して。それを手に取って、一拍。 大人だし、受け取ってもらえないかもしれないけれど。おずおずとぬいぐるみをもう一人、ヒュパンセへと差し出して。 「お花、うれしかったから」
2013-12-08 01:13:44差し出されたそれに思わず面食らう。そのままおもわず、力無く笑った。手を伸ばして、受け取って。 「ありがとな。貰うよ」 膝の上に抱える。ちょっとちくはぐだろうかと思いつつ、これも土産にもなるだろうかと思案する。腕に丁度の大きさの環を完成させて、ぬいぐるみのそこにはめておいた。
2013-12-08 01:19:39肯定の言葉に、泣きそうな顔で微笑んで。 「…ありが、とう」 受け取ったそれを、ゆると抱き寄せた。 そしてもうひとつ現れたうさぎが、ヒュパンセに渡ったのを見て、自分が何も渡せないことに気付いてうろたえる。
2013-12-08 01:27:57受け取ってもらえたのに安心する。彼の膝の上に座るウサギに冠がのせられたのに、喜びからまた笑う。本当にいい所、いい人たち。来てよかった。 自分用にぬいぐるみを出そうか考えていると、泣きそうな笑顔が一変。あたふたするルーヴェが目に入って。 「どうしたの」 首を捻りながら、簡潔に訊く。
2013-12-08 01:49:49聞かれて、一旦動きが止まる。短い問いに泣きそうな顔で答えた。 「…なにも、渡せない」 だって何も持っていないのだ。貰ったのに。花冠とうさぎと。自分は、返せるものを持っていない。 「…どうしよう、」 途方に暮れたような声で、小さく。
2013-12-08 01:57:24小さく零れた困惑の声。それは少し震えていたようにも感じる。 頭を撫でようと、灰色へと手を伸ばす。――だって泣きそうだから。 「ぼくね、なにもいらないよ」 泣きそうに歪んだ顔を前に、正反対の顔で見つめて。 「もうもらってるからね」 できるだけ優しく、柔らかく言う。
2013-12-08 02:19:24君が欲しかっただろうぼくの『蒼』を、返してもらったお礼。 遊んでくれたお礼。話してくれたお礼。 ――その『時間』を、既に貰ってるから。 言いながら、ルーヴェだけでなくヒュパンセにも視線を配った。 途中からきたぼくを、邪険にせずにいてくれたのが、本当にうれしくて。 「十分、だよ」
2013-12-08 02:20:29伸ばされた手には無抵抗、ゆっくりと撫でられる感触と、言葉とに、ますます泣きそうになりながら。 「でも、」 それでもと、縋るように、くしゃりと顔を歪ませて。
2013-12-08 12:19:55無抵抗、けれど更に泣きそうになる顔を見て、ううんと首を捻る。 どうしたら泣きやむかな。笑うのかな。 撫でながら、考えて、考えて、考えて。じゃあ、と口を開く。 「笑顔がいい」 泣きそうじゃないやつ、と付け加えて。ヒュパンセには貰ったけど、まだ君からは貰ってない。
2013-12-08 21:52:14たのしい時には笑うもの。やっぱり夢は、みんなが楽しくあってこそだと思うから。 この空間(ゆめ)が、たのしいというその証拠を。 「くれない、かな?」 撫でる手はそのままに、尋ねながら顔を覗きこむ。 そしてくすんだ色を、まっすぐ見つめて。
2013-12-08 21:52:21笑顔を望まれて、くしゃくしゃだった顔がぽかんとなった。でもすぐに、ん、と小さく頷きしごしと目元をこすって。 「ありがとう、ミリュー。ヒュパンセも、ありがとう」 二対の二色、四色に笑顔を向けた。
2013-12-08 22:36:18《以上をもちまして……第十九公演は終演致しました…… どなた様もお忘れ物のございませんよう……いま一度、お手回り品をお確かめ下さいませ…… 本日はご来場頂き……まことに有難うございました…》
2013-12-09 19:06:14あはは!最高の演劇だったよ! −−彼は恍惚として …なーんて言うと思った? −−新たなる箱を まあいいよ。 さあ次の箱を用意して! −−新たなる喜劇を まだまだ足りない!もっともっと繰り返そう! どうせその箱からは誰も出られないしね! −−求め続ける あはははっ!
2013-12-09 19:06:48