- treeofevil
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−−りぃん…… 大理石の白い床、毒々しいほど真赤な絨毯。幾何学模様の白い壁紙、シャンデリアを吊るした天井。 棚の上には無数の人形。姿勢を正して並んだそれの幾つかは、もげた首を転がして。 −−りぃん…… 鈴が鳴る。首は動いて元通り。座す少年は優しく目を細めて箱を見つめる。
2013-12-02 19:06:30ふふっ!ふふふふっ! さあもう直ぐ時間だよ! 演者は舞台に上がりなよ! 新しい公演まもなく開演! 死ぬ準備をしておいて!
2013-12-02 19:10:28《演者紹介:第十九公演》 【強欲】ヒュパンセ (@Yukimi_7ds) vs 【強欲】アバリスィア (@b7s_mt)
2013-12-02 20:53:46《まもなく……12月2日21:00より……第十七公演、第十八公演、第十九公演、第二十公演が同時開演致します…… ご観覧の皆様はお席にお着きくださいますようお願い致します……》
2013-12-02 20:54:19あははははっ! ほら、楽しい楽しい公演の時間だよ! 君らは演者!僕らはお客! 死んでいるなら生き返れ! 生きているなら死んでいけ! 君らは踊り狂えばそれで良い! ほら簡単!ほら単純! 馬鹿な君らにだってできるでしょ? 退屈させたら壊しちゃうんだから! あはははははははははは!
2013-12-02 21:00:17ちゃりちゃりという鎖の音と共に、目を瞬かせる。茫洋としていた視線が、意思を持って眼前の光景を見渡した。 広がっていたのは、一面の花畑。色とりどり、四季の花が思い思いに咲き乱れている。 呑まれたように目を丸くして、それから、満足そうに息をついて顔をほころばせた。
2013-12-02 21:23:04色がたくさん。よいことだ。 花畑へ踏み入れる。花を散らしてしまわないように、そうっと、そうっと。 歩くたび、鎖が鳴る。ときおり吹く風に揺れる花に目を細めて、ゆっくりと進む。
2013-12-02 21:25:40辿り着いたそこで、ふむ、と、一番に腕を組んで辺りを見渡した。見えたのは花畑。 「……なんか、思ったより平和だな」 もっと、らしい――例えば荒野だったり、例えば鬱蒼とした森であったりを想像していたのだが。ぐるりと一面に視線を向けても、どこに誰がいるでもない。数歩、足を踏み出して。
2013-12-03 16:50:17そのまま、思い直してその場に腰を下ろした。 もし誰かがいるなら、そちらが来れば対応すればいいことだし、来ないのなら他人のままでも構わないだろう。どっちにしたって結果は変わらないのだから。 少しばかり背の高い花々に囲まれながらそんな事を思う。穏やかに風が吹き抜けるのに、目を細めた。
2013-12-03 16:54:27ゆらゆらと、ふらついているようにも見えるような足取り、にこにこと満足げに笑みを浮かべて花畑を進む。 鼻歌でも歌いだしそうな機嫌の良さで、あたりを見回しながら。 白、橙、緋色、紫、黄色、緑。色に溢れている。空は晴れ渡って、蒼玉を透かしたよう。 一度立ち止まって、くるりと見渡す。
2013-12-03 18:50:16見渡して、おや、と目をしばたたかせた。鮮やかな有彩色の広がる中に、ひとつ、無彩色。 からすのはねのようだ、と思う。艶やかな、黒。 惹かれるようにして、鮮やかな黒の在るほうへと向かう。
2013-12-03 18:54:04ゆっくりと、こちらに向かって来る音が一つ。そう聞いて、一度僅かに振り返る。鎖を手にしながらも、敵意や殺意に全く遠いその姿をちらと視界に収めて、すぐに元のように景色の方へ向き直った。そのうち隣にでも何でも来るだろう。 風が暖かい。晴れ渡った空からの光のせいもあるだろう。
2013-12-04 17:31:19——昼寝には丁度の場所かもしれない。 そんな事を思いながら、揺れる髪が前へと垂れてくるのを手で後へと追いやる。平和だなと再度小さく零しながら、無防備に背を晒しながら。
2013-12-04 17:31:20鮮やかな黒が、風ではなく揺れた気がして僅かに首を傾けたけれど、まあいいかと、ちらと動いた以外は佇んだままなのを良いことに近寄っていく。 近付くにつれ、見覚えのあるかたちだと思って、ようやく黒色がひとなのだと気が付いた。少し立ち止まって、考え込んだのは一瞬。
2013-12-04 18:36:47立ち止まったことなんて気のせいみたいに、先ほどと変わらぬ調子でゆっくり歩いて、少し距離を置いて歩みを止めた。ためらいぎみに、はくはくと口を数度開閉させて。 ええと、こういうとき、なんて言えばよかったっけ。ああ、そうだ、 「…こんにちは。……こんにちは?」
2013-12-04 18:38:31あれ、これで合ってたかな。繰り返しの二回目、終わりの調子を上げるとともに首をほんの少し傾げながら、濡れ羽色の黒髪の背中に声をかけた。 ひとに逢ったなら、まずはあいさつから、が、礼儀のはずだ。
2013-12-04 18:42:53少し、ぎこちないように近づいて来たそれが、やはり害意の一つも見せずに後から声を掛けて来て。それで、僅かに首を傾けるようにして振り返る。 「はじめまして。座るか?」 返答、次いで自分の腰掛けた横を指で指し示す。承けても断られても気にしないと、それだけ言って視線は元に戻してしまう。
2013-12-04 19:35:20あまり、騒がしいのが好きなわけでもない。賑やかなのは好きなのだが、基本的には平和主義なのだ。ここが何の為の場所かは理解しているつもりだがそれなだけ、それに従う必要も無い。 それに、相手にもその色は見えないから、尚の事その意義も感じなかった。
2013-12-04 19:35:22声をかけたものの、返事が返ってくるとは思ってなくて面食らった。でもたしかに、話しかけられたら返事をするというのは、当然だ。 やや間を開けてしまったことに申し訳なくなりながら、黒色の提案に頷く。 かすかにこちらを向いた眼は、ほれぼれしてしまうくらい綺麗な紅色だった。
2013-12-04 20:35:12また、こちらを向いてくれないかな、どうだろうか。 でも自分よりも、こちらを見ている方が楽しいだろうし。 鎖を下ろして示された側に座りながら、紅色が向いているのと同じ方向を向き、目を細めた。 きれいだね、と小さく呟く。聞こえていても、聞こえていなくても構わないくらいの、囁きに似た。
2013-12-04 20:36:39代わり映えしない花畑の風景を眺めているうちに、右隣に淡いそれが腰を下ろす。音の少ない仕草の中で、鎖の音だけが重い。 隣に座ったそれは無彩色。ゆっくりした動きもあってか、歪なような、それでいて纏まっているような。 小さい声。こちらに届ける意志も風のような、空気に紛れてしまいそうな。
2013-12-04 21:17:35ああ、と返す。風が吹き抜ける。不意に、置いて来た一人が、これを教えたらまた羨ましがるだろうなと、そんな事を思いながら。 「……名前」 口を開く。横のそれに、眼は向けないまま声を向けた。 「ヒュパンセ。そっちは?」 意味の有る無しではなく。ただ、気になって。
2013-12-04 21:17:39僅かな声に返事があって、ふへ、と相好を崩した。通り抜けた風が髪を揺らす。風、草の揺れる音。ゆると伏せ気味の目で眺めていれば、唐突な問い掛けがあって目を丸くした。 「……なまえ、」 ヒュパンセと名乗った黒と紅のひとを見遣って、小さく反芻。なまえ。 折角聞かれたのだから、答えないと。
2013-12-04 21:46:42でも、与えられていた名前は取り上げられてしまったし。でもここはあの場所ではないし、なら自分で自分に名前を付けてもいいんじゃないだろうか。む、とへの字に曲げた口、さんざん考え込んで、出てきたのは二つ。 「ウィェルヴェか、アバリスィア」 好きな方で呼んでくれて構わないと、付け足して。
2013-12-04 21:46:47声を掛ければ、緩やかだったそれが僅かに揺れる。繰り返す小さい声、考え込むような沈黙。 強い風がその間に吹いて、柔らかなざあざあという厚さのある音が、暖かく周囲に満ちて。 ゆったりと返されて来たのは二つの名。そのどちらも、自分には馴染みのないもので。 急がなくてはという気は、せず。
2013-12-04 22:14:59