約束〜沖田総司〜

🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

約束～沖田総司～ 　　　綺羅

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本当に君は泣き虫だ。 どうしてそんなに泣けるのかな。 どこにそんな涙がたまってるの？

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自分のためには、絶対に泣かないくせに。 他人のため、 ＿＿＿＿ううん、僕のために何度も泣かせたね。

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今、隣にいる君は、穏やかな顔をしていて、 毎日、笑顔。

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僕たちをつなぐ浅葱色の想いは、 あの時からずっと続いていて、 いくつかの光を失って、そのたびに絶望した。

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でもそこから立ち直らせてくれたのは、 僕らしくいさせてくれたのは、 それはいつも、君だった。

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千鶴。

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僕の命を君にあげる。 辛い涙も、 嬉しい涙も、 どうか、忘れないで。

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必要のなくなった刀を、時々ちょっと持ってみて、僕は自分のことを知る。 刀すら重いと感じるなんて、 僕は背中に死神をおんぶしているみたいだ。

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いつからか、背後にくっついていたことは知っているけど、 守りたいものがたくさんあって、 守らなければいけないものに気付いて、 一生懸命だったから、少し忘れかけていた。

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僕から力を吸い取って、どんどん太ってるんだろ。 一時は今の僕より痩せてたくせに、 時間が経つと立場が逆転だ。

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「おとーさん」 「おとーさん」 僕の背中に抱きつく小さな体と、 僕の横にちょこんと座って、お茶をふうふう冷ましてくれている子と。

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びっくりするほど千鶴と同じ顔をした二人に囲まれて、 僕のこころはあたたかくて、 しあわせだなあなんて感じる。

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ここが布団の上なんかじゃなくて、縁側とか、庭だったりしたら、もっと良かったんだけど。

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「二人とも、邪魔をしてはいけません」 お膳を運んで来た千鶴が、あっと驚いて、怒ってみせる。 なんていうか、お母さんの顔をしてるのが、おかしい。

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「じゃましてないもん。おくすりあげるんだよ」 女の子のほうが口をとがらせてる。

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「おとーさん、ぼくがたべさせてあげるー」 背中にくっついていた男の子が、お膳の前を陣取る。

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「あ、だめだめ。これはお母さんがするの」 「……」 千鶴が三人いるみたい。 うちの食事はいつも賑やか。

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子供を寝付かせてからは、 千鶴はお母さんじゃなくて、僕のお嫁さんに戻る。

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ごはんが全然喉を通らなくて、子供たちに心配させてしまった。 千鶴はおなかにたまるようにと、葛湯を持って来てくれていた。 でも僕の体は、それも受け付けてくれなかった。

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「千鶴、もう大丈夫だよね？」

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え、と僕を見た千鶴の顔色が変わる。 ぎゅうっと僕の手を握り、胸の前で祈るように組む。

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「男の子のほうは、きっと僕に似てくる。 だから僕の顔も忘れないよね。

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女の子は君と薫とおんなじ顔してる。 子供の頃の君と薫を見てるみたいだった。

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お父さんがいなくても、子供は立派に育つものだよ。 それに千鶴がお母さんなんだから、いい子になるに決まってる。