「スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー」#4 ――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説

サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』(@NJSLYR )の二次創作小説、連載第四回です。 ・第一回(http://togetter.com/li/590041 ) ・第二回(http://togetter.com/li/593721 ) ・第三回(http://togetter.com/li/600028 ) ・第四回(このまとめ ) 続きを読む
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うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ドーモ、ストーンコールドです」オバケめいた存在はアデプトに向き直り、アイサツした。「私のアカチャン、どこ」ところどころ焼け焦げたニンジャ装束、その全面が左右に切り裂かれ、あらわになった裸の胸が赤い血に濡れて……「ワッザ!?」ローグを驚嘆せしめたものを……彼女も見た! 42

2013-12-19 19:05:26
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

翌日。ザイバツ・シャドーギルドの戦闘ニンジャ、フェイタルが、同じくザイバツのニンジャ上司アンバサダー……そして、今やもう一人の住居となった、ネオサイタマ某所の屋敷を訪れた。曇天の下、ひっそりと息を潜める高級住宅街から屋敷の玄関に足を踏み入れると、一転、喧しい声が彼女を包む。 44

2013-12-19 19:08:38
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ホギャー!ホギャー!」「いちいち泣き喚くなッつッてンだろ!」「ホギャー!ホギャー!」「アンバサダー=サン!はやくしろよ!」「待て!今……」「ホギャー!」「ファック!こいつウンコまで漏らしやがった!」「開けるぞイグナイト=サ……」「……テメッ!」「ホギャー!」 45

2013-12-19 19:10:09
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高級スシレストランで提供されるタマゴ・クレープ・スシめく金髪に縁取られた、フェイタルの美しい顔に苦笑が浮かぶ。純白のボディスーツめいたニンジャ装束の下半身、豊満なヒップを揺らして廊下を歩むフェイタルが、ドージョーに向かう三叉路に達した時、彼女の前にずぶ濡れの若い男が現れた。 46

2013-12-19 19:12:27
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「ドーモ、アンバサダー=サン」フェイタルはニヤニヤと笑いながらアイサツ。「ドーモ、フェイタル=サン」廊下に尻餅をついた若き上司はフェイタルを見上げ、バツが悪そうにアイサツを返す。フェイタルはたまらず噴き出した。「手を焼いているようだな」「……」アンバサダーが立ち上がる。 47

2013-12-19 19:14:09
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「報告がある。ドージョーで待たれよ」フェイタルの言葉に、アンバサダーが自室へと向かう。その背後に点々と残る濡れた足跡を見送って、振り返ったフェイタルは、半ば開け放たれたフスマの奥へと足を踏み入れる……シンピテキな植物由来芳香に混じる、不快な甘い臭いがニンジャ嗅覚を刺激する。 48

2013-12-19 19:16:15
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

そこは脱衣所だ。シンピテキ芳香を放つ高級建築材ヒノキで作られた高級仕様。「ホギャー!ホギャー!」「シット!シット!ブッダシット!」左手の防弾スモークガラスの向こうから声がする。「開けるぞ」そう告げてフェイタルはフスマを開ける。シンピテキと臭気の湯気が彼女を包む。49

2013-12-19 19:18:11
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中はタタミ十枚はあろうかという広大なバスルーム。やはり全てが高級建築材ヒノキで作られており、その最奥に設えられたタタミ三枚ほどの巨大大理石バスタブを背に、若い女が立っていた。「ホギャー!」その腕の中で赤子が鳴いた。「ごきげんよう、イグナイト=サン」 50

2013-12-19 19:20:26
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フェイタルのアイサツに「チッ」若い女が歯をむき出した。「ドーモ、フェイタル=サン。イグナイトです。……なにしに来やがッた」「調査結果の報告だ。しかし……ククク、なかなかサマになっているではないか」「ンだよ、報告ッてのはイヤミか」「クク……」 51

2013-12-19 19:22:13
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フェイタルのニヤニヤ笑いに、イグナイトは眉の代わりのバラめかせたタトゥーを釣り上げた。怒りに燃える双眸がフェイタルを射る。しかし今の彼女に平生の炎のごときアトモスフィアは皆無。原初の闇を征くタイガーの舌めく真紅の頭髪は濡れて頭に張り付き、痩せた裸体が不格好なロウソクじみて。 52

2013-12-19 19:24:43
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「……手伝えよ」イグナイトの言葉に、フェイタルは目を剥いた。手伝えとは、この無軌道ヤンクじみたパンク娘の口から、ついぞ聞いたことのない言葉だ。「何を手伝えばよい?」忍び笑いを漏らしながら聞き返せば、「こいつの尻を洗うンだよ」イグナイトは憮然とした表情で答えた。 53

2013-12-19 19:26:10
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「ホギャー!」「寄越せ」泣き喚く赤子にフェイタルは手を差し伸べる。「違ェよ」イグナイトは言い捨て、立ち込める湯気を裂いて、壁のシャワー設備に近寄る。その足元に甘い臭気を放つゲル状のものが残る。「アンタはシャワー係」フェイタルは無言で後に続き、シャワーのノズルを掴んだ。 54

2013-12-19 19:28:34
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コックを捻ると、熱い湯が迸る。フェイタルはまず自分の手で温度を測り、温めに調節してから、勢いをゆるめた。「出せ」「ちょっと待て」イグナイトが不快にむずがる赤子を抱え直した。フェイタルが湯をかけると、「フニュ」赤子の鳴き声が止んだ。 55

2013-12-19 19:30:15
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

シャワーの音だけがバスルームに響く。「……こいつがよ」イグナイトが呟いた。「シッコしやがるんだ」「毎回か」「わかンね……アンバサダー=サンはなンも言わなかッたんだぜ」「お前、この子と風呂に入るのは初めてか」「当ッたり前だろ!付き合ッてるわけじゃねェんだ!」「そういうことか」 56

2013-12-19 19:32:11
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「……アタシには任せられないとか言いやがって」ぶつぶつと呟くイグナイトへ、フェイタルは「後ろを向け」と言った。「次はお前だ」「……ン」痩せた裸身がくるりと回転する。フェイタルはその場に屈み込み、この若い女の下半身を丹念に洗い流した。「これでいいか」そう尋ねた時!「ダア!」 57

2013-12-19 19:34:17
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「うおッ!テメッ!」イグナイトが奇声を挙げる!フェイタルは見た!赤子がイグナイトの肩に手をかけ、ヘソを蹴り、胸を這い上がり、垂れた前髪に手を伸ばすのを!「ダア!ダア!」「やめろッ!」イグナイトは首を振って回避しようとしたが、却って揺れた前髪を掴まれることとなった!「ダア!」 58

2013-12-19 19:36:10
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「イテッ!イテテッ!」くねくねと身悶えるイグナイト!「ダア!ダア!」モンキーめいた顔をほころばせる赤子!「ククク……」フェイタルは思わず忍び笑いを漏らす。「いつもこうなのか」「笑ッてねェで引ッ剥がせ!」「いいのか、先程はお前」「早くしろ!」「……クク」 59

2013-12-19 19:38:19
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……一時間後。身づくろいを済ませたイグナイトがドージョーに戻ると、フェイタルは来訪の要件をあらかた終えたところだった。「……というわけだ」「ご苦労」アンバサダーのねぎらいの言葉はどこかぎこちない。その目がイグナイトに向けられ、即座に逸らされた。イグナイトは唇を尖らせた。 60

2013-12-19 19:40:16
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「わかッたのかよ」バイオバンブーゆりかごの側に尻からアグラしたイグナイトに、フェイタルは調査の過程を再度説明した。ターゲット……ストーンコールドの執着から、他にも同様の事件を起こしていると推測、ここ一年の一般家庭襲撃事件や赤子の失踪事件の発生地域から活動範囲を絞り込む。 61

2013-12-19 19:42:22
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そして出来上がった戦略地図上にそれと思しい潜伏先をピックアップし、金で雇ったサンシタを送り込んだ。結果、昨夜そのうちの一隊、ハック&スラッシュパーティがターゲットと遭遇。生き残りの女の報告を受け少なからず驚嘆したフェイタルは、その隙を好機と襲いかかった女を返り討ちにした。 62

2013-12-19 19:44:27
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「その女の得物がこれ。そしてこれが」フェイタルは自身とアンバサダーの間に広げられたフロシキの中身をイグナイトに示した。「……ストーンコールドなる野良ニンジャの腕よ」そこには「テンダイス」のルーンカタカナが刻まれたカタナブレードツルギと、肘から先が異常延長された青白い腕。 63

2013-12-19 19:46:36
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「こいつは……」イグナイトがつぶやく。「そうだ。ヤツの腕は肘から先しか伸びんようだ」「アイツはどこにいる」「ここだ」フェイタルは地図の一角、アナマズマ総合病院を指で示す。「やつは攫った子供をここで殺すようだ。そういう習性なのだろう。獣と同じさ」「よォし!」 64

2013-12-19 19:48:17
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「待て」立ち上がるイグナイトをアンバサダーが制す。「これからの予定はどうするのだ」「チッ……」再び座り込むイグナイト。「予定?」フェイタルが訊ねる「そうだ……この赤子の預け先を訪問する」「預け先が見つかったのか」「マンナカ・テンプル孤児院。ここならば大丈夫だ」 65

2013-12-19 19:50:20
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「チィ……」イグナイトはバイオバンブーゆりかごを見下ろす。スヤスヤと眠る赤子の顔を見ながら、イライラと膝を揺する。それを見たフェイタルが微笑み、「それならば……」「行ってくれるか」アンバサダーが言い、イグナイトがフェイタルを見上げる。「ああ。いいな、イグナイト=サン」 66

2013-12-19 19:52:26