モーサイダー!~Motorcycle Diary~ 外伝 恋する少年のクリスマス~

@mor_cy_darにて投稿している連作Twitter小説・モーサイダー!~Motorcycle Diary~外伝 恋する少年のクリスマス~のまとめです。テキスト版の一括ダウンロードはこちら(http://t.co/VfcQHoiOEw)からどうぞ
2
前へ 1 ・・ 4 5
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ね、姉さん……見てたの?」 「こんな時間に出ていくところを放っておけるわけありませんわ」 「そ、それはそうだけど……あ、吉脇まで……車でよく追いかけてこられたね……」 「どうせここに来るだろうと踏んでましたもの」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:13:57
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 振り返ればそこには見慣れたハイエースと、運転席から会釈する執事の姿があった。  もちろん、不満げに腕組みしている姉の姿も。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:14:16
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あはは……プレゼントは渡せたけど、これじゃあ50点くらいかな。ちょっと残念」 「まあ、そうですわね。  けれど、今日のところはこんなもので良いでしょう」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:14:31
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あんまり怒らないんだね、姉さん」 「我が弟としてはあまりに不出来ですけれど、二年後までに射止めればよしとします」 「……二年後?」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:14:39
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「正確には一年と十一ヶ月、ですけれどね」  空を見るような角度で、アパートの渡り廊下をみあげる亞璃須の視線。  その先にある影に、ティックは最後まで気づかなかった。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:14:47
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

~~~~~~Motorcycle Diary~~~~~~ #mor_cy_dar

2013-12-21 22:14:55
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 それから二日後。  二学期の終業式が行われた日の夕方。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:15:04
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「本当にちょっとだけだからな。  いいか、しっかり掴まって……足で俺の体を挟むようするんだ」 「うんっ、わかった」  志智の自宅近く。市道ですらない狭く荒れた生活道路の片隅で、今から発進しようとしているVT250スパーダの姿があった。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:15:09
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「よっ……と」 「わわっ。すご~い! 動いてる~!」 「そりゃバイクだからな」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:15:23
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 メインシートでハンドルを握るのは志智。このモーターサイクルの主。  そして、タンデムシートにまたがるのは彼の妹。上下には明らかに丈のあまっている志智のウェアを着せられて、ヘルメットだけがぴかぴかの新品だった。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:15:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ねえねえ、おにいちゃん。今、何キロ?」 「時速15km」 「そうなんだ。すごいね~。このまま一時間走ったら、15kmも遠くに行けちゃうんだね~」 「……まあ、そうだな」  ギアは1速。クラッチは半分ほどつないでいるだけ。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:17:54
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(しかし、何を頼まれるかとおもったら、少しでいいから後ろに乗せてほしいなんて……)  志智としては千歳をタンデムシートに乗せるのは、断固反対だったが、クリスマスプレゼントという名目をつけられては妥協するしかない。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:18:02
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「よ、と……」  子供がこぐ自転車にも抜かれてしまいそうな速度で、千歳を乗せた志智のスパーダは住宅街の隘路を抜けると、多磨川沿いの道路へ出た。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:18:10
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「わ~。ずっとまっすぐだね~」 「このまま走れば、南平あたりまではいけるな。  もっと先までいけば、羽田空港だ」 「そうなんだ。風が冷たいけど、なんだか気持ちいいね~」 「……そうだな」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:18:20
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 かじかむ手も、全開にしたシールドから吹き付ける寒風も。  少し油断するとエンストしそうなエンジンも、おぼつかないバランスも、今の志智にとっては気にならなかった。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:18:28
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(楽しそうだな……千歳のやつ)  背中から、耳元から、妹の明るい声がひっきりなしに聞こえてくる。  それだけで、彼には十分だった。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:18:35
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「よし、一回だけ時速40kmまで出してやる」 「ほんとっ? わっ……すご~い! はやい~!!」 「本当はもっと速いんだけどな」 「えっ、な~に? おにいちゃん、聞こえない~!!」  志智は言葉を繰り返すことはしなかった。  ただ、満ち足りた微笑みを浮かべた。#mor_cy_dar

2013-12-21 22:18:47
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「バイクって気持ちいいね~! 楽しいんだね~!  おにいちゃん、だ~いすき~!!」  ひどく慎ましいVツインのエキゾーストノートが、夕暮れの多磨川に消えていく。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:19:01
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 年は終わり、冬は深まり、けれど彼らの毎日は続いていく。  やがて来る春へ向けて、しばしの安息にモーターサイクルライダーたちはまどろんでいた。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:19:15
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

~~~~~~Motorcycle Diary~~~~~~ #mor_cy_dar

2013-12-21 22:19:36
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

【お知らせ】 本日の投稿はここまでです。この作品に興味をもった方、特にバイク乗りの方、@mor_cy_dar をフォローしてください。そして友人に広めてあげてください。物語の感想・こんな話が読みたいといったご要望も @IngaSakimori にてお待ちしております。

2013-12-21 22:19:49
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

【モーサイダー!・登場キャラクター名鑑】琴呂楓(ことろ かえで)。ティックと千歳のクラスメイトで、高校一年生。重度の腐女子で、彼女にとってティックは異性というより妄想の対象でしかない。バイクについては、うるさいマフラーのやつは滅べと思っている #mor_cy_dar

2013-12-21 22:23:08
前へ 1 ・・ 4 5