【第一部-弐】時雨と山城のクリスマス #見つめる時雨

時雨×山城 鈴谷×熊野
19
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「もう少し休んでいきましょうか」 「…うん」、僕は、そんな返事もままならなかった。マフラーに顔を埋め、只管こみ上げてくるものを我慢するしかなかった。駄目だ。僕は、こんなにも山城のことが好きだったんだ。……言いたいよ。山城に「好き」って言いたい。本当に、大好き。でも山城は……でも

2013-12-24 23:54:51
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「……山城」 「なにかしら?」 顔を上げられない。もう既に、僕の目からは気持ちが溢れていた。折角のマフラー、もう濡らしちゃったよ、ゴメン。 「僕ね、山城のこと……」 言ってしまえという僕と、言っちゃダメだという僕がせめぎ合う。でも、もう、僕は

2013-12-24 23:59:11
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「……そろそろ帰ろう、山城。みんな待ってるよ」 「…そうね。うん、行きましょうか」 山城は僕に自分にかかっていたマフラーを巻いてくれた。顔が埋もれるくらいに。まるで、何かを察してるみたいに…。そして、山城の手が、僕の頭を撫でた。 もう、もう…何で…なんで…ひどいよ…山城…

2013-12-25 00:07:41
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

山城は何も言わず、僕の手を握り、歩き出した。帰り道、僕はずっと嗚咽していたと思う。でも山城は黙って、手を握りしめたまま、僕のペースに合わせて歩いていた。 …今の僕、山城の負担になってる…こんなんじゃ、駄目なのに……

2013-12-25 00:13:31
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「山城、おかえりなさい。遅かったわね。心配したわ…」 扶桑の声が聞こえる。そうか、もう鎮守府に着いたんだ……。 「ごめんなさい、姉様。まだ続いてますか?」 「殆ど部屋に戻ってるわね。でも部屋でゆっくり飲みたい娘もいると思うから、配りに行きましょう」 「はい」

2013-12-25 00:17:39
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

山城がまた僕の頭に手を乗せる。 「ここからは扶桑姉様と2人で大丈夫だから、時雨はもうお風呂に入って寝なさい。…手伝ってくれて、ありがとう」 山城の手が離れる。山城と僕を繋ぎ止めていたものが、切れてしまったような、そんな感覚に陥った。 「時雨?」 僕は、山城の手を握っていた

2013-12-25 00:24:32
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「……」 どうしよう、何で僕はこんなことを。もう、どうしていいかわからない。わからないよ……。 「姉様。私、後から行きます。先に行ってて下さい」 「そう?…わかったわ。先に行くわね」 扶桑が中へ入っていった。また、山城と僕の、2人だけになる

2013-12-25 00:29:43
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

僕の肩に山城の手を触れた……と思ったら、体が宙に……浮いた……? 「……相変わらず、軽いわね、時雨って」 突然のことに状況が掴めないでいたけど、少しして、自分が…所謂お姫様抱っこをされていることに気がついた。 「そんなに驚いた目で見ないでよ。私だって戦艦なんだから、ね」

2013-12-25 00:36:17
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

山城の柔らかい部分が、僕の身体に密着する。優しい、山城の香りがする。 「このまま部屋まで送るわ。大丈夫、裏口から行くから」 僕は山城のそのまま運ばれた。僕はもう何かを考える余裕なんてなくて、ただ、この優しい温もりに包まれているだけしかできなかった

2013-12-25 00:42:31
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

ゆっくりと歩く山城の振動が、まるで揺り籠のように思えた。段々と、眠たくなってきた…… 「……いいよ、眠って」 山城の、優しい声がする。もう僕のまぶたは、開ける力を残していなかった。 「…おやすみ、時雨」 意識が落ちる間際、僕の額に、しっとりとした、柔らかな感触を感じた……

2013-12-25 00:49:59